11.対峙
ライムは戦闘後、治療のためリヴィウスの元へ向かった。
「いいかい、ラティエル。君の能力が強い理由。それは何かわかるかい?」
「……魔力か?」
「うん、確かに君の膨大な魔力も、一つだろうね。」
「ただ…。」
「ただ?」
「何よりも、『イメージ』なんだよ。」
「なるほど?」
ラティエルが首を傾げる。
「幼い頃から多くの物語に触れてきた君にしかない、その想像力。」
「ーーそれを活かすんだ。」
「ーーああ。」
「さぁ、行っておいで。君ならできるとも。」
「ーーなんてったって、君はあいつらの子供なんだからさ。」
「ーー?」
ラティエルは戦場を駆けた。
ライムの言葉を思い出す。
「ーー君が掴みかけていた、その感覚。」
「幻想を幻想に終わらせない。」
「幻想を現実に引き摺り込む。」
「ーー世界を変えうる力だ。そして…。」
「まあ、今はいいかな。」
「ーー差し詰め…、『空気顕現』と言ったところかな?」
魔物の群れが、ラティエルの前に立ち塞がる。
猪の群れが、鼻息を荒くする。ラティエルを見て、足を踏み込む。
「……あれがヘビィボアか…。初めて見るな。」
「それじゃあ、行くぞ?」
「ーー『空気顕現』『聖空槍ロンギヌス』ッ!」
ーーラティエルの手元に、槍が象られていく。
「ーー貫け。」
支配者の詠唱が響いた。
いつの間にかラティエルは、ヘビィボアの群れを通り過ぎていた。
ボンッ!
音が遅れて聞こえ、ヘビィボアの腹には穴が空いていた。
「ーー音より速く、万物を貫く槍。」
「いいな。」
ザッ。
足音が聞こえた。
「ーー?眷属が死んでいる…。」
低い声が聞こえる。
「貴様がやったのか…?」
「ーーッ!何故貴様はそれを持っている!?」
疑問を口にし、ラティエルが持つ槍を目にした途端、男は血相を変えた。
「ーー?」
「あんたは誰だ?」
「異常物質、危険だな。ーー殺す。」
「ーーッ!」
話を聞く様子なしに、男はラティエルに襲いかかり、手にある剣を振り下ろす。
ラティエルは、槍で剣を止める。
「ーーなんなんだ?」
「……これも止めるか…。化け物め。」
「ちょっと待ってくれ、一旦話そう。」
「俺には、あんたが何を言っているか分からないんだが?」
「……貴様、名前は?」
「俺はラティエル。あんたは?」
「ーー『喚び声に、答えよ。』」
男の前に、魔力の渦が浮かび、魔物が出てくる。
「貴様らは力をつけてきている。」
「牽制のつもりで、わざわざここまで潜ってきたにも関わらず…。」
「貴様らのような異端が数多くいるとはな。」
「ーー?」
(こいつは、何を言っているんだ?)
ラティエルは怪訝そうな表情を浮かべ、槍を構える。
「ーー一度退く。本部にもこの情報を伝えねばならん。」
「待ってくれ、俺は何もしてないぞ?」
「それを持っていることが問題なのだ。」
「ーー何故、原初の武具が…。」
そう、男は何かを呟いた。
男の足元に、黒い渦ができ、男はその中に潜った。
「ーーなんだったんだ?」
ラティエルはそう呟き、小さくため息を吐くのであった。
こうして、スタンピードは、思わぬ形で終息を告げた。
真夜中、ギルドには灯りがあった。
「ーーそれじゃあ、みんな。」
「よく頑張ってくれた。君たちのおかげで、死人は誰もいない。」
「ーー今日は、飲んで食べてくれ。」
「「「ーー乾杯!」」」
「ミスト、これ美味いな!」
「そうっすね。お、こっちも美味いっすよ!」
「ーーラティエルくん、こっちも美味しいよ?」
「お、サンキューな!」
ラティエルは、フローリア、ミストとともに、幸せな時を過ごすのであった。
ーー同刻。
「ーー第七小隊隊長フィエル。帰還した。」
「ーー隊長、お疲れ様です。」
「ああ。」
先程まで、ラティエルと対峙していた男は、暗い厩舎の中で、部下らしきものと喋っていた。
「ーー件の王国に、異常物質を確認した。」
「ーーランクは…?」
「『原初』だ。まだ、創世武具ではないのが救いだな。」
「ーー原初だと、確認されていなかったのは、杖でしたか?」
「いや、奴が持っていたのは槍だ。」
「ーー!?聖槍は隊長が、第三と協力して破壊したのでは?」
「ああ、持ち主も殺した。だが…、俺が間違えるはずがない。」
「ーーなら、王国には、異常物質を復元できる人間がいると?」
「ああ。だが、完全なものではないらしい。奴の魔力らしき魔力が槍には混じっていたからな。」
「もし、完全なものであったのなら、俺の胴体には、もう既に大穴が空いているだろうからな。」
「そう…ですか。では、団長に面会を取り付けますね。」
「ーーああ、頼んだ。」
部下は部屋を出ていき、男は目を押さえた。
「ーーはぁ。ラティエルだったか?注意せねばならんな。」
その呟きは、闇夜に消えるのであった。




