10.ライムの戦い
「ーー行くよ。」
ライムが剣を抜き、走り出す。
「『太陽神の加護』」
突如出現した小規模の太陽が、アスタルテとエルレインを後ろから照らす。
「大いなる剣よ。」
声が響く。エルレインの剣は、大剣となる。
ーー剣の柄に嵌まる魔石から魔力が溢れ出し、エルレインを包み込む。
「ーー『蒼帝剣ラピス』。」
シグルドの色が、変わる。虹から蒼へ。
剣には水流が纏わり付いている。
「うーん、ラピスかぁ。私じゃ分が悪いね。」
「ーーなら俺が相手するよ。アスタルテは後ろでサポートをしてくれ。」
「りょーかい!」
太陽の光が強くなる。今の時刻は真昼間。最もアスタルテが輝く時間。
「ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」
「なんだ?」
「君たちは…なぜ、大戦前から歳をとっていない?」
「残念ながら、封印されていたとかではないぞ。精神の年齢はちゃんと進んでる。」
「ーーなら、肉体は…?」
「色々あった…では無理か?」
「ーー少し、無理があるね。」
「すまんな、今は話せん。」
「ーーなら、話さないとダメなようにしてあげるさ。」
水流がラピスを纏う。
空間が歪むほどの水圧。それがラピスの真骨頂なのである。
「ーー『蒼ノ烈斬』ッ!」
「ーー掌握せよ。『大いなる支配』」
高圧水流を伴う剣と、ライムの技術の合わせ技。
それらは、宙で霧散する。
「相変わらず、本当に無茶苦茶な剣だね、それ。」
「ーーまだ能力を覚えていたのか?」
エルレインが意外そうに聞く。
「ーー対象にした事象の掌握…だったかな?」
「わかっても対処できないのが…最強だ。」
殺気が増した。
「ーーッ、『闇帝剣アビス』。」
ーー闇が、アビスを包む。
濃密で、見ているだけで呑まれそうになる程の闇。
「ーー深淵よ、万を呑め。『深淵の闇波』。」
「ーー芸がないな。ーー掌握せよ…。ッ!?」
能力は発動せず、波がエルレインを包み込む。
「やらせないよ。ーー消し飛ばせ。『不死鳥の炎息』!」
超高温の炎と、深淵の闇がぶつかり合い、侵食し合う。
「ーー対象の掌握。それは、単体のみ掌握できる。」
「対戦前の慣らし。今更帰ってきた君には分からないよ。」
「君に負けてから僕がどれだけ、対策に身を捧げたのかッ!」
「ーー相変わらず、負けず嫌いだな…。」
エルレインが、笑う。
「駄目かい?」
「いいや、お前らしいともッ!『剣聖技』。『巨暴牙狼』!」
「ーー『闇帝剣技』『絶闇』!」
強大な力が激突する。お互いが吹っ飛び、相殺する。
「ーーはぁはぁ…。『闇よ、溢れろ。』」
ガラスが割れるような音がした後、周囲が闇に包まれる。
「今日のところはお暇させていただくよ。」
「また会おう。その時は、しっかりボコボコにしてあげるさ。」
ライムの人影が見え、エルレインの前に立つ。
「ーーああ。」
優しそうな笑みを浮かべながらエルレインが答える。
「やっぱり君たちは変わっていないんだね。」
ライムは嬉しそうに微笑み、手を振る。
「ーーじゃあね。」
闇が晴れた時には、ライムの姿は消えていた。
「……良かったの?エルレイン。」
「何が?」
「ーー別に雇い主のこと喋っても良かったんじゃないの?」
「まあね。でも今じゃないよ。ライムなら神剣を扱えるようになるし。勧誘はその時でいいんじゃないか?」
「そう…だね。それじゃあ帰ろっか?」
「ああ。ラティエル…、すまないな、今は会えないんだ。」
そう呟き、2人はその場を去るのであった。
こうして、スタンピードは旧友との再会という、災禍を残し、収束するのであった。




