第二十話 出会い【後編】
「まず始めたのは、人間の観察です。」
そう語り始めた女神は、どこか嬉しそうに見えた。
目を輝かせながら語る姿はまるで、新しい遊び相手を見つけた子供のようだった。
「同じような生き方をしていても、魂の輝き方には違いが生まれる。その違いを、様々な視点から検証しました。」
「そして、一つの答えを見つけました。」
「人間は、善い行いをした時に魂が輝くのだと。」
「私は神託を人々に与え、善い行いをするように仕向けました。」
「人々は私の言葉に従いました。」
「けれど、魂は思ったようには輝きませんでした。」
「……。」
「私はさらに検証を重ねました。」
「そして、気づいたのです。」
「与えられた善意では、魂は輝かないということを。」
「……。」
「人間は自ら選んだ時にこそ、強く魂を輝かせる。」
「誰かに言われたからではない。」
「自分自身で選び自分自身で行動した時に、魂は最も美しく輝くのです。」
「だから私はひとつの考えに至りました。」
「人間自身が、選ばなくてはいけない状況を作り出せばいいと。」
「例えば、人間に仇なす敵を用意する。」
「その敵に対抗するための人間を一人選び、その者に力を与える。」
「その者が降りかかる困難を乗り越えることで、魂は成長していく。」
「そうやって、魂の輝きを大きく成長させることに成功したのです。」
「……。」
何も言葉が出なかった。
「もう、お分かりですね。」
女神は静かに俺を見つめている。
「それが、勇者という存在です。」
俺は息を呑んだ。
「勇者は人々の希望となりました。」
「その希望に応えようとすることで、勇者は成長を繰り返していく。」
「その成長こそが、魂の輝きを最も大きくするのです。」
女神は、少しだけ遠くを見るような目をした。
「そして私は、魂の成長過程を一つの仕組みとして循環させることを考えました。」
「より多くの魂の輝きを集めるために。」
「より効率よく、世界を維持するために。」
俺はその人智を超えた所業を聞いて、込み上げる嫌悪感を隠しきれなかった。
神が研究者のように実験と検証を繰り返す……
この世界がそんな風に成り立っていたなんて、夢にも思わなかったからだ。
「……。」
「これが、今へと続く勇者の始まりです。」




