幕間 世界のはじまり
むかしむかし。
まだ、世界が世界として存在していなかった頃のおはなし。
あるところにひとりの女神がいました。
女神は何もない場所にぽつりと立っていました。
なぜここに立っているのか、なぜひとりなのかよくわかっていませんでした。
空もありません。
大地もありません。
海もありません。
ただ、静かな闇だけが広がっていました。
女神はしばらくその闇を見つめていました。
何もありません。
いつまでも、何もありません。
ふと、女神は思いました。
退屈だなぁ、と。
そこで暇つぶしにと、自分の身体に手を触れました。
そして女神は、自らの身体を半分に分けました。
そこから生まれたものは、土になりました。
土は少しずつ広がり。
やがて、大地になりました。
大地が生まれると、空が生まれました。
空には雨が降りました。
雨は大地を濡らし。
低い場所へ集まり。
やがて、海になりました。
海の上を吹く風は、大地に栄養を運びました。
するとどうでしょう。
大地に草が芽吹いたではありませんか。
草が増えると、木が生まれました。
木々が増えると、森が生まれました。
そして。
大地と海に、命が生まれました。
女神はそれを静かに見つめていました。
けれど。
女神はまだひとりでした。
なぜか。
それは、女神は命を作ることができなかったからなのです。
草も。
木も。
動物も。
全部女神が作ったものではありませんでした。
なぜ命が生まれたのか。
女神にも分かりませんでした。
それは偶然という名の奇跡だったのです。
女神は生まれた命を見つめ続けました。
小さな命が動くたび。
女神はそれを目で追いました。
命が増えていくと。
女神は少しずつその世界に惹かれていきました。
そして、いつしか。
女神はその命を愛おしいと思うようになりました。
自分には作ることのできなかったもの。
だからこそ。
その命が何よりも大切になりました。
命はどんどん増えていきました。
動物が増え。
色んな姿に別れていきました。
するとどうでしょう。
自分に似た姿かたちをした命が現れたのです。
それが人でした。
人は知恵を持っていました。
人はその知恵を使って、どんどん増えていきました。
そうして世界は、少しずつ賑やかになっていきました。
女神はそれをずっと見守っていました。
命が笑えば、嬉しくなりました。
命が悲しめば、悲しくなりました。
命が生きようとすれば、応援したくなりました。
そうして。
女神は、世界そのものを愛するようになりました。
この世界を。
ここに生きる、すべての命を。
いつまでも守りたい。
そう、願うようになったのです。




