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幕間 止まった時間

「……勇者は、まだ見つからないのか。」


 静まり返った玉座の間に、王の低い声が響く。


 兵士の額に汗が滲む。


 兵士は唾を飲み込み、意を決したように声を上げた。


「……はっ、国内外を問わず捜索を続けておりますが、未だ行方は掴めておりません。」


「そうか。」


 それ以外の言葉は出なかった。


 その顔は、かつて戦場で数々の武勲を立てた男とは思えないほどにやつれていた。


「引き続き捜索せよ。」


「……はっ。」


 兵士は深く頭を下げ、玉座の間を後にした。


 再び訪れる静寂。


「勇者よ……。」


 誰もいなくなった部屋で、小さく呟いた。


「本当に、お前が……。」


 その先の言葉は続かなかった。


「……なぜだ。」


 俯き目元を手で覆う。


「なぜ、わしだけが……。」


 突如、静かな空間に扉の開く音が響いた。


「陛下。」


 現れたのは、年老いた王宮魔術師だった。


 王は顔を上げる。


「……どうした。」


「ご報告が……。」


「申してみよ。」


「王女様の御身体ですが……。」


 片膝をついた王宮魔術師は、慎重に言葉を選んでいるようだった。


「これ以上はもう……長く持たせられません。」


 その言葉に王は、再び目元を覆い俯いた。


「あぁ……分かっている。」


 長い沈黙。


「もう少し……。」


 声が僅かに震える。


「もう少しだけ……持たせてくれ。頼む。」


 両手を組み、額に近付け祈るような仕草をした後、消え入りそうな声で王はそう呟いた。


 王宮魔術師は静かに会釈をし、その場をあとにした。


 まだ。


 受け入れられなかった。


 あの日、娘に何が起きたのかも。


 勇者を疑わなければならないことも。


 だから。


 王城だけが。


 時の流れから取り残されたようだった。

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