第十六話 受け継がれる想い
自我が途絶えそうになるのを必死に堪える。
未来への想いだけを頼りに。
何度も何度も何度も何度も。
だがその灯も。
必死に抗っているその理由も。
やがて闇へ溶けていった。
◇
――気が付くと。
剣が胸を貫いていた。
不思議と痛みはないが、熱さのようなものを感じる。
身体から力が抜けていく。
目の前には一人の青年。
何も知らないまっすぐな瞳。
その姿だけを見つめていた。
身体が静かに光へ変わっていく。
そこで景色は途切れた。
◇
――ゆっくりと目を開く。
……薄暗い。
古代神殿。
祭壇の前に立っている。
迷いはない。
ゆっくりと祭壇へ手を伸ばす。
柔らかな温もりが全身を包み込む。
身体から何かが抜けていく。
そこで景色は途切れた。
◇
俺は息を呑んだ。
古代神殿……。
俺が加護を返した時と同じ体験。
◇
――景色が流れていく。
また。
黒い籠手。
神聖文字。
胸を貫かれる。
光になる。
古代神殿。
祭壇。
温もり。
そこで景色は途切れた。
◇
違う。
同じじゃない。
少しずつ違う。
神殿は徐々に劣化していく。
青年も別人だ。
それなのに。
最後だけは。
変わらない。
◇
また。
冷たい石床。
黒い籠手。
長い廊下。
神聖文字。
胸を貫かれる。
光になる。
古代神殿。
柔らかな温もり。
そこで景色は途切れた。
◇
また。
また。
また。
終わらない。
胸を貫かれる。
光になる。
古代神殿。
黒い籠手。
神聖文字。
止まらない。
◇
「もうやめてくれ……!」
思わず叫ぶ。
声が声にならない。
誰にも届かない。
また景色が変わる。
幾度となく繰り返す。
◇
何度同じような景色を繰り返したのだろう。
あまりにも長く続くその連鎖に、思考を放棄しようとしたその時だった。
突如として胸を激痛が貫く。
今まで経験したことのない激しい痛み。
息ができない、痛い、苦しい。
身体から力が抜けていく。
目の前には黒髪の青年。
その姿を見て。
心の底から。
なぜか安堵だけが込み上げた。
身体が崩れていく。
それでも。
目だけは逸らせなかった。
青年が俺を見ている。
俺も青年を見る。
青年のその瞳には。
傷だらけの黒い鎧。
そして。
優しい目をした自分が映っていた。
この青年もまた。
俺たちと同じ運命を辿る。
俺には止められなかった。
俺には何も変えられなかった。
この一瞬で伝えられること。
それはもう、一つしか残っていなかった。
うまく動かせない口で。
それでも。
なんとか言葉を紡ぐ。
「……すまない。」




