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幕間 魔王城からの帰路

 魔王城を出て、しばらく歩いた。


 背後には、先ほどまで俺たちが戦っていた魔王城がある。


 もう、あそこへ戻る必要はない。


 魔王は倒した。


 長かった戦いも、終わった。


「……勇者君。」


 隣を歩いていた魔術師が、ふと足を止めた。


「どうした?」


「少し先に、魔物がいる。」


 魔術師は目を閉じ、意識を集中させている。


「数は?」


「……六体。」


「多いな。」


「うん。向こうは、こちらにはまだ気付いていないみたいだ。」


 魔術師が杖を構える。


「なら、いつも通りでいこう。」


「ああ。」


 俺たちは、静かに歩き出した。


 魔物の姿が見えてくる。


 会敵する直前。


「――今。」


 魔術師が杖を振るう。


 周囲の空気が、僅かに揺らぐ。


 認識阻害の魔法。


 魔物たちは、すぐ近くにいる俺たちを認識できていないようだ。


「勇者様。」


 神官が、穏やかな声で呼びかける。


「補助は、おまかせください。」


 淡い光が、俺の身体を包んだ。


 身体が軽くなる。


 力が、いつもより強く感じられる。


「ありがとう。」


「いえ。」


 魔術師が、さらに杖を振る。


 今度は魔物へ向かって淡い光が飛んでいく。


 魔物の身体が僅かに揺らいだ。


「弱体化成功したよ。」


 魔法を受け、魔物たちはようやく俺たちの存在に気付いた。


 こちらへ向かって、一斉に駆けてくる。


「勇者殿。」


 守人が一歩前へ出た。


「後ろは気にせず、攻撃に集中してください。」


「ああ。頼む。」


 守人が盾を構える。


 迫ってきた魔物の攻撃を受け止める。


 その隙に、俺は前へ出た。


 だが。


 横から別の魔物が飛びかかってくる。


 その魔物の前に、戦士が割り込んだ。


「勇者!」


 剣を振り抜き、魔物を弾き飛ばす。


「こいつは俺がやる。」


「分かった。」


「とどめは任せたぞ。」


「ああ。」


 俺は、魔物へ向かって駆け出した。


 神官の加護が、身体を支えている。


 魔術師の弱体化が、魔物の動きを鈍らせている。


 守人が、後ろを守っている。


 戦士が、敵を引きつけている。


 いつもの連携だった。


 俺は剣を振り上げる。


 そして。


 一撃。


 魔物が、地面へ崩れ落ちた。


「終わったね。」


 魔術師が、杖を下ろす。


「はい。」


 神官も、ほっとしたように微笑んだ。


 守人は周囲を確認している。


「他に敵影はありません。」


 戦士が剣を肩に担いだ。


「じゃあ、行くか。」


「ああ。」


 俺たちは、再び歩き始めた。


 魔王城は、少しずつ遠ざかっていく。


「なあ。」


 俺は、仲間たちを見る。


「これで、本当に終わったんだよな。」


「そうだね。」


 魔術師が答える。


「魔王を倒したんだ。残った魔物も、いずれは数を減らしていくだろうね。」


「長かったですね。」


 神官が、静かに笑う。


「ええ。」


 守人も頷いた。


「我々の役目も、これで終わりでしょう。」


「……そうか。」


 俺は、背後を振り返る。


 遠くに見える魔王城。


 そこには、もう何も感じなかった。


 俺たちは、ただ帰るために歩いている。


 王都へ。


 そして。


 それぞれの日常へ。


「なぁ、勇者。」


 戦士が、前を向いたまま言った。


「帰ったら、まず何する?」


「そうだな……。」


 俺は少し考える。


「ゆっくり休みたいな。」


「ははっ。」


「お前らしいな。」


 戦士は笑って振り返り、俺の肩を小突く。


「王都に着いたら、しばらくは騒がしいだろうね。」


 それを見た魔術師も、少しだけ笑ってそう言った。


 その言葉を受けて、神官が穏やかに言う。


「それはもう、世界を救った勇者様ですからね。」


「きっと、皆が待っていますよ。」


 守人は真面目な顔で頷いている。


「まずは、無事に帰還することです。」


「ああ、そうだな。」


 俺は前を向いた。


 仲間たちと並んで歩く。


 魔王城からの帰路。


 俺たちは、王都へ向かって歩き続けた。

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