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プロローグ 終わりの始まり

 魔王は、笑っていた。


 いや、笑っているように見えた。


 俺の剣は、確かにその胸を貫いている。


 黒い鎧は砕け、玉座の間を包んでいた禍々しい魔力も、静かに霧のように薄れていく。


 ……終わった。


 長かった旅も、世界を脅かした魔王との戦いも。


 ようやく終わったんだ。


 仲間たちが安堵の息を漏らす。


 誰かが泣いていた。


 誰かが笑っていた。


 誰もが勝利を噛みしめている。


 ただ俺だけが、その場から動けなかった。


 魔王が、俺を見ていたからだ。


 憎しみも怒りもない。


 どこか懐かしいような、優しい目だった。


 そして、その口がゆっくりと動く。


「……すまない。」


 その一言だけを残し、魔王の身体は淡い光となって崩れていく。


 光の粒は静かに宙を漂い、やがて何もなかったように消えた。


 俺は剣を握ったまま立ち尽くす。


「……何を謝ったんだ。」


 返事はない。


 ただ胸の奥に、小さな棘だけが残った。

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