表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巫女さんえにしさま  作者: うらひと
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/12

森宮和樹 ①

禁 複製転載・AI学習

「いや、正直(れん)(あい)とか興味ないし」

質問をしてみた和樹の回答の一言目がこれだった。どういう意味で、と問うてみると。

「いや、んー、確かに(こい)をしてみようと思ったことはあるけど、()(つう)恋するだろって場面でならなくて」

「……恋愛できない感じ?」

「たぶん」

参考になるのかならないのか、とても分かりにくい。結と和樹がお(たが)い『うーん』とうなる。

「いっそ男も好きになれば、と思ったけど、結局『恋愛できない』におさまる感じ」

「そっか……」

恋愛もののドラマも、アニメも、いまいちピンとこないそうだ。ぼんやりと『恋愛は良いものだろう』ということは分かっているものの、自身には実感が()かないらしい。

「なんか、みんな相談してるから(おれ)も相談してみたら、『無性愛かもね』ってお父さんに」

「『無性愛』……」

最近調べ始めた父親の真いわく、『恋心が(だれ)にも向かない』ことをそう言うらしく、これも(めずら)しい(けい)(こう)なのだそうだ。そして、『無理に恋愛する必要もないしね』と言ってくれたとのこと。それでも、和樹は何となくモヤモヤしているようだった。


結はえにしさまに聞いてみることにした。

「誰にも恋しないってこと、あるんですか?」

「ええ、ありますよ」

えにしさまいわく、誰にも恋できない(なや)みを(かか)えた人がこの神社にやってくることもあるそうだ。

「それは、単に運命の人に出会えてなかったりする場合もあります。でも――」

「でも?」

「誰にも恋をしないまま、気ままに過ごす人もいますし、ぼんやりと過ごしてしまう人もいます」

『まるで、私みたい』だと結は感じた。『でも、女の子には興味があるから、きっと(ちが)う』とも。

「誰にも(こい)(ごころ)を持てないのが、『無性愛』というものですね」

「……」

それを聞いて、和樹のことがますます心配になってきた。気ままに過ごすようなタイプではなく、真面目なタイプだから、と。

「ずっと(いつ)(しよ)に居られる親友、みたいな人でも、それは立派な『(えん)』だと、私は思いますよ」

そうか、と結は()に落ちた。その延長線上が無いだけで、一緒に居たい関係はきっといるのではないか、と。

和樹にとって、どんな形でも家族の幸せそうな姿はうらやましかった。うらやましい反面、自分へのいらだちも()(だい)に増していった。

それはきっと、「(けつ)(こん)しなさい」という良くある親からのプレッシャーだ。森宮家ではそんなことはないのだが、将来的に、友達が結婚していくなど、周りについて行けなくなるだろう。


「……こんなの、居づらくなる」

そう(つぶや)きながら、朝方、(けい)(だい)へと入る。

「えにしさまは、なんて言うかな……」

おみくじを引いても、『待ち人 来ず』。ただただ(らく)(たん)するだけだった。

「……何が『(えん)(むす)びの神様』だよ」

「あっ、いたいた」

そこに現れたのは、島田 真里。

和樹の幼なじみで、(たの)んでいなくとも世話を焼いてくれる。それでいて、和樹に好意があるようにも見えない、そんな女の子だ。

「朝早いのに、何を(ひま)そうにしてるの」

「関係ないだろ」

「……そういうとこ、本当におせっかい」

「だって、放っておけないし」

(すで)に待ち人が来ていることに気づくのは、少し後のお話だ。


「和樹は、身だしなみくらい気にしなさいよね」

「わかったから」

真里と和樹は、お互いに(えん)(りよ)が無い。それは幼なじみが(ゆえ)の特権だろうか。

だからといって、ケンカをするわけでもない。せいぜい()()()い程度がいつもの様子だ。

「本っ当にそういう所、変わらないわね」

「どうせ『家筋がしっかりしたところなんだから』って言うんだろ」

「うぐ」

先回りして言う和樹に、真里は言葉が出ない。

「もちろん、行事とかの時には場をわきまえるよ」

「それなら良いけど、()(だん)のボロが出たらダメじゃない」

世話を焼く真里と、世話をされる和樹。和樹自身、そういうことは別に(いや)だとは思っていない。それどころか、神社に来ない日があると。

「……真里、どうしてっかなあ」

真里の心配が口を()いて出るのだ。父親の少しいい加減なところと、母親の(しん)(ぱい)(しよう)なところをそのまま()()いでいる。

真里も、似たような性格なのだ。お互いが、お互いを自然と心配する。そういう関係だ。

えにしさまいわく、真里は人並みに恋心を持っているようで、和樹にそれが向きそうだという。和樹にはなくても、一緒に居たいという気持ちは感じるという。

「だから、結さんもあまり心配しなくて良いのですよ」

 そう言われ、結はあたふたとしてしまった。『心配していたのは確かだけど』と。

「だから、あの子達も、時間を()けてでも、自然と答えが出るんじゃないでしょうか」

「……そうですね」


えにしさまの言葉を見て、結は少しほっとした。立て続けに「普通の恋」とは違う恋の形を見ていて、しかもそれが身近に起きたことだった。きょうだいや、あるいは(かれ)らを(おも)う人が悩み、導き出した答え。

それは、決して悪いものでは無かった。きっとこの先も進んでいくものだのだと感じた。

そして、ふと自分はどうだろうか、という考えに立ち返ってみた。男の子を好きになれない、けれど、女の子には興味がある。それで言うと、優樹のような立場なのだろうか、と。

「確かに、結さんの気持ちは定まりきってないように感じます」

結の疑問は、えにしさまも感じていた。

「でも、それは急ぐ話でもないでしょう」

「……はい」

しかし、それは周囲の話題に(おく)れてしまう。そんな(ばく)(ぜん)とした不安も抱えることでもあった。

それを相談してみると、

「そうですね。まずは、色んな人に会ってみましょう」

「旅行でもすれば良いんですか?」

「いえ、例えば学校だけでも良いと思うんです」

「は、はい」

学校での出会い、と言っても、結の学校は女子校だ。可能性があるとしたら、優樹と花火のような関係かも知れない。気持ち悪がられないだろうか、と不安になった。

「たいていの場合が、そうでしょう」

「……ですよね」

()()(かん)(よう)な家庭だというのは、社務所の人達とのやり取りでも感じた。それはきっと、学校でも社会でも同じだろう、と。

「だから、もし結さんがそれを望むなら、じっくりと探しましょう」

そう、えにしさまは言ってくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
真理さんと和樹君恋に発展するかハラハラものですね。
2026/07/09 20:11 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ