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巫女さんえにしさま  作者: うらひと
第1章

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4/12

森宮継 ①

禁 複製転載・AI学習

 (けい)は良い意味で八方美人だ。()(づか)いも出来るし、何より(くつ)(たく)の無い()(がお)()(へだ)てなく接するその姿には、好印象を受ける。

一方で、それゆえに、女子を中心に(かん)(ちが)いさせてしまう人を続出させてしまうことも事実。父に似てまだ子供っぽいところがあり、それもまた人気の一つだと言われているとか。


18(さい)にもなるが、家に呼ぶ「友達」は男女を問わない。

(かれ)にとって、どこまでが友達で、どこからが(こい)(びと)なのかも分からない。それを彼にそれとなく問うてみると。

「え? みんな好きだよ?」

という答えが返ってくる。もちろんそれだけなら()(つう)の回答なのだが。

「なんかこう、男の子でも女の子でも、ドキドキしちゃうことあるよね」

そう、彼は簡単に相手と手を(つな)ぐし、ハグもする。

(はし)から見れば「うずうずして()きつく」みたいな風にも取れるが、この言動からすると、「(だれ)でも好きになってしまう」ようにも見える。

これもまた、父は社務所での話し合いのネタにしているし、(そう)(なや)みのタネにもなっているのだ。


よく言えば『親愛』だろうか。それにしてはスキンシップが多いと周囲に言われる。妹である結でさえも。

「……」

「結~」

楽しそうに後ろから抱きついてなかなか(はな)れてくれないのだ。家族であっても接し方は変わらないのだ。


あまり広く知られた用語ではないが、継のような『愛』の持ち方を『全性愛』と言うそうだ。『両性愛』、バイセクシュアルと言った方がより通じやすいかも知れない。

しかし、継はあの花火でさえも「ドキドキしたことがある」と言っているのだ。

そんな継なりの悩みというと、「誰でもドキドキしちゃうから、誰を選ぶべきか迷ってしまう」ということらしい。

「ううむ、お父さんに言われてもなあ。こればかりは、継が決めることだよ」

「そっか……」

継と真の相談の場も持たれたが、さほど良い結論も出ずお開き。悩みながら、継も毎日を過ごしているのだ。

「確かに難しいですね。色々な(えん)がありますし」

「そうですよね……」

(こう)(かん)日記でもその悩みを相談した。

しかし、いくら(えん)(むす)びの神様でも、それを簡単には(しぼ)れないようだった。 『でも』とふと思い出す。

(もも)()さんなら」

「確かに、小さい(ころ)から(いつ)(しよ)ですね」

池上桃子。小学校の頃から継にアタックし続けている、継の「友達」だ。

当の継は、別に(そで)にしている訳ではないが、他と変わらず友達感覚で「好きだよー」と言っているだけである。そして、(かの)(じよ)はそれにやきもきしている1人(ひとり)でもある。

「どうしましょう」

「そうですねえ」

名案というものはそう簡単には()かばない。誰でも好きになってしまう人だからこその悩みだ。しかし、継は桃子の良いところをたくさん言える、とも言っていた。そこを足がかりに出来ないか、とえにしさまと()わして()(とん)に入ることにした。


翌日。

「結ちゃん! 結ちゃんに相談が!」

(けい)(だい)で出会って一言目がこれだった。もちろん、結もちょうど良いと思ったところだ。

桃子はこう言った。

「結ちゃんなら、神様にお願い事を伝えてくれるって聞いて!」


『そこまで話が広がっていたの』と、結は目を丸くした。

これまでの人々と同様に、結の手を(にぎ)りながら。しかし、あながち否定は出来なかった。()(はく)(れん)のときも、花火のときも、結と(あく)(しゆ)した相手が結ばれる結果となったからだ。

それに、実際「交換日記」という形でえにしさまと交流しているし、相談もしている。きっとえにしさまも分かっていて、桃子を引き寄せたのだろう。しかし、『分かっていない()りをしないと、また後が大変そうだ』と結は思うことにした。

「あ、あはは……(ぐう)(ぜん)じゃないですか、ね……」

「だって(うわさ)になってるんだもん」

こう(せま)られては、結も困り顔だ。

実際、継とくっついて()しいのは確かだ。とはいえ、誰とくっつくかを保証も出来ない。

『どうしよう』と思った矢先。

「あ、桃子だー」

継が現れ、ぱっと桃子が手を離す。

いつものように継がぎゅーっとハグをした。『あのね、あのね』と小さな子のように継がはしゃぐ。複雑な気持ちの桃子は、少し苦笑いをして受け止める。

「昨日の夜ね、桃子が夢に出てきたんだ!」

びっくりした顔をする桃子。(うれ)しそうに続ける継。

「いっぱい話して、色んなところで遊んでて、見たことないようなところも!」

 それでね、と継が言う。

「これって、予知夢なのかなって」

桃子の表情が、思わず(ゆる)む。

もしもね、と継が繋ぐ。

「未来もずっと一緒にいられるなら、とても嬉しいなって気分で起きられたんだ」

じわりと、桃子の()(じり)(なみだ)が浮かぶ。

「だから、一緒にいたいなって、桃子に伝えたくて」

「うん……」

ぎゅっ、と桃子の手を取る継。それに応え、喜びをかみしめながら声を(しぼ)()す桃子。

「どうかな?」

「……うん!」

ばっと桃子が継に抱きつく。継も、桃子に抱きつき返す。

これが、継の答えだ。


後日、幸せそうに遊びに出かける二人を見送って、結は境内で(そう)()をしながらふと考えた。

「この家、変わった家だなあ」

父親の話を聞いていると、様々な愛の形があることを知る。そして、結自身もそれを受け入れ、実際、家族の中に「当事者」が生まれるようにもなった。たぶん、世間から少しはずれた感覚の家庭にいるのだろう、と考える。

「あ、結ちゃん」

「おはよう」

「おはようございます」

琥珀と(れん)が遊びに来た。聞けば、音大に通って管楽器の演奏を勉強し、プロを目指しているのだそうだ。

「それでねー」

この二人には、一緒に居ることが(すで)に当たり前なのだ、と結は感じた。その気持ちは、きっとそれまでの関係の延長線上なのだと。優樹や花火も、そして継と桃子も。

「私は、どんな(こい)をするのかな……」

『兄で次男の和樹はどうなんだろう』と結は思った。結の中でまだ実感として()いていない恋というものを年の近い和樹なら、何か持っているのではないか、と。

自分の部屋に(もど)った後、和樹の部屋のドアをノックした。

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― 新着の感想 ―
継と桃子さん良いですね。
2026/07/09 20:04 退会済み
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