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巫女さんえにしさま  作者: うらひと
第1章

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3/12

森宮創 ①

禁 複製転載・AI学習

「優樹さーん」

「はいはい」

あの話以来、花火に対する優樹の当たりも(やわ)らかくなって、花火は満足そうだ。優樹自身、色々考えたり、両親に相談したりしながら過ごしている。えにしさまへのお参りもしているようだ。

ただ、(ゆい)(いつ)(なつ)(とく)がいっていなさそうなのが、長男の(そう)だ。元々頭の固いほうではあるが、(すで)(かの)(じよ)持ちというのもある。そのガールフレンドに、どのように説明したらいいか迷っているようだった。

「……結は、どう思う」

「どうって……」

(そう)のぽつりぽつりと(しやべ)(くせ)は、昔から変わらない。神社にいるとき以外でも和装を好み、ゆったりとした()()いをする。

「私も、色々考えてはいるけど、まだ『正しい』とか『正しくない』とかまでは分からないかな……」

「……そう」

小さくため息をつく(そう)。両親はあの様子なので、優樹の件についてとやかく言うつもりはなさそうだ。

結を(ふく)めた下の3人も、まだ実感として分からないようだ、と(そう)は感じているらしい。

そんな(そう)を、結自身も心配している。あっという間に(かん)(きよう)が変わったのだ。少なからず()(まど)いもあるだろう、と。

(そう)は常識を重んじる人だ。それでいて、少し(ゆう)(ずう)()かない、短気なところもある。その常識が(くつがえ)されたことが、少なからず戸惑いといらだちになっているようだ。


(そう)が、早朝に(ほん)殿(でん)()()えて、じっと動かないことも増えた。その横を、同性カップルが通り過ぎることも。

(あと)()ぎとして、色々なことを考える。

だから、社務所での真との話し合いに参加することも多い。その中で、父と少し言い合いになることも増えた。百合(ゆり)は『()(ばつ)が出来そうで心配だわ』とこぼしていた。


『今までのカップル(たち)が居なくなってしまうかもしれない』と、(そう)は言っていた。(そう)の言い分も正しいのだ。

それに対して、真は少し楽観的な見方をしている。『どちらも大切にします、という姿勢を見せれば良いんじゃないかな』と、真は返していた。

(そう)の考えとは裏腹に、社会は少しずつではあるものの、同性愛、(どう)(せい)(こん)というものを(にん)()しつつあるのだ。もちろん、(そう)のように否定的な見方をする人々の方が多い。しかし、真は『それを受け入れた方が、時代に取り残されない』と主張しているのだ。

「……いまいち、納得がいかない」

まんじゅうを()()んだ後、(そう)が結に()()をこぼした。彼女がいて、他の家族と同じように暮らしていたつもりだったのに、いきなりそれが変わってしまったのだ。例えば、()(はく)(れん)のこと。そして、優樹と花火のこと。

「男と女が(こい)をして、やがて(けつ)(こん)する」というのが、(そう)の中での常識だったのが、一気に(くず)()ってしまい、戸惑いを(かく)せない。

結なら同じ事を考えるだろう、と思って結に話しかけているのだが、結自身の考え方も、実のところまとまっていないのだ。

「うーん、お兄ちゃんはそのままで良いと思うけど」

「そう、じゃなくて……なんというか、家庭が、()(つう)じゃ、なくなって」

「あー……」

(そう)の考えも、納得できるものだった。同性婚は、世間(いつ)(ぱん)には「普通」ではないのだ。そして、何より(そう)は異性が好きなのだ。

『普通』でありたいのに、『普通』でなくなってしまった。

「流海も、心配、してたし」

そうしてため息をつく(そう)であった。流海は大人しくも美人だ。和のものを好む(そう)に、わざわざ着物を買ってまで着て遊びに来る感性もある。そして、(そう)が神社の(あと)()ぎであることも、ちゃんと分かった上で付き合っている。

しかし、家族に同性愛者がいるとなると、今のご時世では不安になるのも仕方ない。

(そう)、あなたは(だい)(じよう)()、よね?」

 この不安そうな表情が、今、(そう)(なや)みの種になっている。

(ぼく)は、変わらないよ。流海が、好きだ」

「……うん」

いつもであれば(うれ)しそうに応えてくれるのが、今では、その不安そうな表情が残ったままなのである。すれ(ちが)いが、少しずつ広がっている。まだ、(そう)自身も答えが出せていないからだ。

(そう)は流海のことが好きで、『同性に恋することはまずないだろう』と確信している。しかし、(ふた)()の姉の、同じく(がん)()(もの)の優樹は、同性を選んだ。

自分は変わらないこと、一方で、きっと同性愛者の家族が居ることを認めた上で、周囲に納得させなければならない。既に優樹と何度かケンカをしている。ケンカをすればするほど認められなくなり、流海とのすれ違いも広がってしまう。

「……」

「……」

結が優樹と(けい)(だい)(そう)()をしていたら、遊びに来た流海とばったり会ってしまい、気まずい空気になってしまった。

「あ、あの」

そして切り出した声も重なり、会話が続かない。

「……流海ちゃん、(そう)を呼んでくるわね」

そして、優樹は()げるようにそう言ってその場を去ってしまった。

「あ、……結ちゃん、ごめんなさいね」

「う、ううん……」

自分の妹のように()(わい)がってくれる流海に、結もなついているのだが、この空気ばかりはお(たが)いにどうしようもないと感じていた。

「……優樹さんも何も悪くはないって、分かってるけど、つい不安になっちゃうの」

流海はやはり不安そうに、しかし、自分の気持ちを確かめるように言った。結は意を決して口を開いた。

(そう)お兄ちゃんは、たぶん迷ってるだけ、だと思う」

「うん……分かってるの」

「それに、流海さんと居るときの(そう)お兄ちゃん、すごく嬉しそうにしてるから」

少しだけ、こわばった流海の表情が(ゆる)んだ気がした。

「……流海」

(そう)……」

しばらくして、(そう)がやってきた。

そっぽを向いた優樹を連れて。

「父さんにも、言われたけど……少しずつ話し合う、ことにした」

「…………うん」

「優樹の話も、聞いて(もら)いたい」

「……うん」

「好きだから、(いつ)(しよ)に居たいし」

「……もう、大丈夫だと思う」

「……?」

小さくやり取りした後、流海が顔を上げて言った。

「花火ちゃん、だっけ。あの子とも話すし、優樹さんもいい人だって、分かってるから」

「周りには、少しずつ、話そう」

「そうね。一緒に、考えたい」

「うん」

そっぽを向いていた優樹が、二人を見る。

「その……(そう)も、ごめんね。流海ちゃんも」

「いや、いいよ」

「平気です」

(そう)も思ってるだろうけど、考え方は一緒なの。『一緒にいないと落ち着かない』って」

「……ええ」

「だから、ちゃんと相手をしてみることにしたの。ただそれだけだし、進み方はきっと一緒だから」

そう優樹が笑うと、ふわりと、流海も、(そう)も笑った。

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― 新着の感想 ―
創さんと流海さんいいカップルですね。
2026/07/09 19:55 退会済み
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