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巫女さんえにしさま  作者: うらひと
第2章

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琥珀と蓮 ⑥

禁 複製転載・AI学習

 姿は見えずとも、(こわ)(いろ)(しん)(ちよう)だということは分かった。

「それで、問題って」

『ええ……』

 (れん)の家庭の話だった。

 特に、蓮の母親が、(かれ)の行動にカンカンに(おこ)っているらしく、(すで)(ぜつ)(えん)をしているというところは、これまで聞いている通りだった。

 問題は、その母親が()(はく)の家庭まで口を出し、近所の人々にも何かを言い出しているらしい。

 ただ、公言している部分から外れている様子は無く、望まない(ばく)()――アウティングにあたることは無いようだが、()()したまま放置されていた蓮の部屋から本を(さぐ)()しては、周囲に対して(さわ)()てているようだった。

『琥珀さんへの(えい)(きよう)も強くて、琥珀さんの家族も、うかつに手を出せないようです』

「そんなことになってるなんて……」

 琥珀(たち)の表情からは、そんなことは感じられなかった。

『関わらなければ(だい)(じよう)()』という(ふん)()()でもあったようだ。

「……そういえば、大学って」

『一応、まだ通えているようですが、この様子では時間の問題でしょう』

 お金を出しているのが彼らの両親である以上、これが続けば死活問題だった。

 どうすれば良いか。(だれ)に会えば良いのか。

『それで、どうやら、まだ神社の外には出られないようなので、誰か協力者を……』

 パッと思いつくのは(そう)だ。理解しながら進めていく形ではあるものの、説明力は確かなものだと、結は感じていた。

 あるいは、父親の真だろうか。しかし、(いそが)しい身でそれが出来るだろうか。

 ぐるぐると考えを(めぐ)らせるも、どう転ぶか分からない。

『結ちゃん?』

「あっ、はい!」

『明日、また聞いてもいいですか?』

「……はい、私も考えてみます」

 お()()をすると、気配はなくなった。

 忘れかけていたけれど、えにしさまと交流できること自体が不思議なことだと、改めて思い知らされた。

 少しどきどきする心を(おさ)えながら、兄が向かった方を追いかける。

「……どうしたの?」

「ちょっと、今日の報告してきた」

「ん。その前に、一声、かけてね」

 先に自宅に(もど)った(そう)が、(げん)(かん)(さき)で不思議そうに(たず)ねてきた。

 それに答えると、(かれ)(なつ)(とく)したように、しかし一言だけ付け加えた。

 夕食を終えると、創が(えん)(がわ)へと(さそ)ってきた。

 (おそ)らく今日のことだろうと、片付けを済ませ、兄の後をついて行った。

「……(れん)()(はく)も、()(まん)してる、ようだった」

 縁側に並んで一言目。創はいつも以上に難しそうな表情をしていた。

「家のこと、だよね」

「うん。どちらの家も、協力を得るのが、難しい」

 コーヒーを口につけた創が、一息つく。

 琥珀の家はそもそも同性(けつ)(こん)自体を、蓮の家も彼らが家出したことを(おこ)っていて、その原因が同性愛にあると。

 彼らふたりの生活そのものは問題ないものの、ミュージシャンとしてデビューするために努力していた彼らの夢が()たれることになれば、生活が難しくなることは想像できる。

 それに、特に蓮の家が今していることは、放っておけばきっと()ひれがついてしまう。

 出来ればそれだけでも()けたい。

 しかし、他人である結(たち)に出来ることなのだろうか。

「……タイミングは、あるけど。どう転ぶか」

「え?」

「ライブの場に、両親が、来るかもしれない」

 例えば、学園祭や定期ライブ、あるいはセッションの場に出て、そこに(かれ)らの家族がやってくることは十分にあり得る。

「……出来るなら、きょうだいがいたら。仲間でも、いい」

 (そう)が考えていたのは、近い世代の協力だった。

 次の休日。(すで)()(はく)(れん)にはライブに行くことを(れん)(らく)しておいた。

 急な連絡で創を連れて行くと伝えると2人は(おどろ)いてはいたが、特に深く聞かれることはなく、当日を(むか)えた。

「結ちゃん、久しぶり」

 会場の前で、琥珀が()(むか)えてくれた。

 ハイタッチをすると、琥珀が創にお()()をした。

「創さんも、来て下さってありがとうございます」

「うん」

「新人ライブなんで、まだまだですけど」

「うん、どんな演奏するのか、聞いてみたい」

 琥珀が少し照れるのを、2人で(ほほ)()んで返す。

 行きましょうか、と会場の教室へと向かった。

 暖色系の照明で照らされた、ジャズカフェの出し物、という形だ。

 蓮はホール側の仕切りを任されているようで、合間にこちらに手を()ってくれた。

 (となり)に居る、サブリーダーと思われる青年が、蓮に声を()け、こちらに送り出してくれたようだ。

 席に案内された2人と話す琥珀の隣に、蓮も来た。

「お(つか)(さま)です」

「ふふ、良い(ふん)()()だね」

「ありがとうございます」

 ホールのセッティングも、蓮が中心になっていたらしく、少し(ほこ)らしげだった。

「2人がお世話になってます。(きり)()(さと)()です」

「森宮 創です」

 もう1人、少し(まわ)()むように、にこりと微笑みながら(あい)(さつ)をしてきた。

 創が()(しやく)をすると、(さと)()は続けた。

「結ちゃんは、この間のお()()()ライブも来てくれて、2人も(うれ)しそうだったし。……それに……2人から『相談に乗って(もら)ってる』とも」

 最後は辺りを気にしながら、声を(ひそ)めて言った。

「こうと思ったらアグレッシブになるので、もう『この2人だからしょうがないし、音楽には関係ない』ってことで、何となく(いつ)()してるんです」

「うん……何だか、親友よりすごい、という感じ」

「あはは、ですね」

 そう言うと、ふたりを仕事に(もど)らせてから、悟史が言う。

「……えっと、お兄さんがいらした理由って。最近のこと、ですか」

「……そう、だね」

 どうやら、悟史はふたりから相談を受けていたらしい。

 (そう)の方を見て、一言。

「もし、2人の(おや)()さんが来たら……」

 どうすればよいか、と言外に問いかけていた。

 創が、結と顔を見合わせる。

「……2人に、ソロは」

「ええと、三曲あります」

「――分かった。そこまで持たせよう」

 それまでは、のんびりとコーヒーを飲みながら過ごした。

 にわかにホールがざわつき始めたのは、()(はく)(れん)のバンドの1つ前のステージの(ころ)

 蓮の母親も(ねら)っていたらしく、琥珀の母親を連れてきていた。

「……来たね」

 創と結の表情が(こわ)()る。

 悟史に目配せすると、あちらも「()(あく)してます」と口パクと共に(うなず)いてくれた。

 悟史を中心に「どうしようか」と作戦は練ってあったらしく、それに乗っかる形にすることにした。

「それでは、1年生サックス隊のトップデュオ、堂(もり)琥珀と水畑蓮です!」

 いよいよ始まった。

 ホールの仲間(たち)が、周囲の(じよう)(きよう)に目を光らせる。

 1曲目はカフェに合わせた(おだ)やかな曲。

 2人ともリラックスした様子で演奏を終えた。

 その時。

「この親不孝者!!」

 (いつ)(せい)に、近くにいた数名が(もり)りと()()さえに入った。

 ざわつくフロア。ガードされた2人は念のため裏へ(もど)るようで、(さと)()に手招きされた結(たち)もそれに続く。

「…………」

 楽器を下ろして(ひざ)(こぶし)を置いたまま、(れん)(うつむ)いていた。

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