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巫女さんえにしさま  作者: うらひと
第2章

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10/12

琥珀と蓮 ⑤

禁 複製転載・AI学習

()(はく)を否定するつもりなんて無いんですけど」

 言葉を選びながら、(れん)が話し始める。

「周りから、『こうあって()しい』って言われることって、あるじゃないですか」

 その言葉に、結と(そう)(うなず)く。

「多分、それに(しば)られすぎているんでしょうね。(いま)だに『男と(けつ)(こん)するなんて』って言葉を気にするんですから」

 創から見ると、誠実であり、空気の読める青年でもあり、さらに良い子であろうとする。

 結から受けた(じよう)(だん)めいた言葉も、ついそのまま受け取ってしまいそうになっていたことを思い出す。

「蓮」

「っ……はい」

 (れん)(そう)の問いかけに(おどろ)いて、グラスを持つ手が(すべ)りそうになった。

「蓮は、()(はく)への気持ちは、変わらない?」

 すぐに何かを言いかけて、(いつ)(たん)()()む。

 また言葉を選んだ後、口に出す。

「……その、はずです」

 言葉からも、(こわ)(いろ)からも、まだ迷いが捨てきれないのが分かる。自分に、その(こん)(きよ)を求めることが、出来ずにいる。

「これは、君を理解するための、質問なんだけど」

 創が蓮に語りかける。

「理想を求めるなら、蓮はどう受け止めて()しい?」

「それは……」

「もし、相手が()(なお)に理解してくれるなら」

 何度か、言いかけるのを()(かえ)す蓮。

 結も、創も、静かに答えを待つ。(となり)で琥珀が心配そうに見つめる中で。

「……()()く答えられないです」

「ん。(せん)(たく)()を用意するのは、本当はあまり、すべきではないけど」

 ぴっ、と創の人差し指が琥珀に向けられる。

「えっ」

「……良い感じの、選択肢を」

「あ、は、はいっ」

 琥珀が少し考えた後。

「『当たり前として受け入れられる』と、『変わってるくらいで気に()けられる』、とか」

「……」

 むず、と蓮の心が(さわ)ぐ。

「……『変わってるくらいで』――ううん。だったら、『当たり前として受け入れられる』方が良いです」

ふと見ると、蓮が琥珀の手を(にぎ)りしめているらしく、琥珀が(うなず)く。『(だい)(じよう)()そう』だと。

「あ、でも。『気をつけるところがある』くらいで」

 (あわ)てて付け加える(れん)に、くすくすと3人が笑った。蓮も少し気分が落ち着いたようで、(いく)(ぶん)か表情が(やわ)らかくなった。

(ぼく)も、最初こそ、理解できなかったけど、向き合わなければ、(あと)()ぎとして、失格だからね」

「……はい。こうやって聞いて頂けてるのは、心強いです」

 大人しい(しよう)(ぶん)ゆえに、蓮と(そう)は気が合うため、ゆったりと話が進む。

「家族のことも心配ですけど、いま顔向けできる訳じゃないので」

 喜びを前面にだすタイプではない蓮の表情が、また少し(くも)る。

「……まあ、それは後から考えよう」

「んーと……はい、そうですね」

「何だかんだ、蓮が色々、進められそうだから」

 創がコーヒーを口に(ふく)む。仕切り直そうと、結(たち)も飲み物に口を付ける。

 一息ついて、創が(てん)(じよう)(あお)ぎながら(つぶや)く。

「知らないことを自覚するのは、大変だからね」

「はい……。きっと、僕も『あり得ない』って目をつむること、あるはずですし」

「でも、答えは、身近な人が、持ってるから」

 チラリと、創が()(はく)に目をやる。

 小動物のように固まった後、ポンポンと蓮の手の(こう)(たた)く。

 むず(がゆ)いけれども、蓮にとっての答えは、(となり)にある。

「……そうですよね、琥珀のおかげで、(いつ)(しよ)にいられるんですもんね」

 少し、蓮の表情に()(がお)(もど)ってきた。

 創自身も、この(ごろ)ようやく分かってきたことだ。答えは、身近なところにあると。

 それは、(かれ)らもそうだし、優樹のことがある以上、他人事ではないからだ。

 理解できなくとも、知っておかなければいけないことがある。

 そう考えて、優樹に色々聞いてみた。もちろん、花火にも。

 そうすると、(そろ)って「その人が好きになったから、しょうがないでしょ」と言っていた。

 そこに、同性だからという考え方はない。家族として一緒になりたいからこそ、選んだのだ、と。

 特に優樹は、それまで気にしていたかった花火が()(りよく)(てき)に見えてきたことを、()(まど)っていた。すぐに慣れることはもちろんなかったものの、今までの延長線上として理解しているらしい。

 新しいことを理解するのは難しいけれど、向き合うことで変わることもある。

「何だか、ずっと言えなかったことが言えて良かったです」

「それは、何より。(ぼく)も、勉強に、なった」

 ()(はく)のはにかみ顔が、(みな)にはとても(まぶ)しかった。

 少し西日が差すファミレスの(まど)(ぎわ)で、(おそ)いデザートを(たの)む。

「ねえ」

 結が問う。

 琥珀と(れん)がこちらを向く。

「やっぱり、ふたりだから幸せそう」

 ああ、(うらや)ましいな。

 結が言外にそう(ほほ)()むと、琥珀はまたはにかんで、蓮は照れくさそうに笑った。

 (そう)も、手を止めてそれを見つめる。

 優樹は、花火にショッピングへ連れて行かれたそうだ。

 私服に()(とん)(ちやく)な優樹を、どんな風に変えてくれるかというのは、質素な(よそお)いを好む創も気になるところだ。

 花火は、「ボーイッシュも捨てがたいけど、ガーリーもいいよね」と言っていた。

(きつ)()(てん)の方で、色々()()みもした上で(のぞ)んでいるとのことで、どうなるかが楽しみだ。

「……琥珀、ありがとう」

「うん」

 会計を済ませ、2人とは別方向へと帰ることになった。(ひか)えめに手を()る蓮と、元気いっぱいに振る琥珀。

 帰り道を、夕日が()(がね)(いろ)に染めていた。

 神社へ(もど)ると、創は手短に(あい)(さつ)を済ませて社務所へ向かった。結は、今回感じた気持ちをもう少し報告して、それから自室で「(こう)(かん)日記」をするつもりだった。

「……あれ?」

 (だれ)かの声が聞こえた気がした。(やさ)しい声が、(ほん)殿(でん)の方から。

 いや、目の前にいる。なのに見えない。

『結ちゃん。……聞こえてたら良いけど』

「あ……」

 居る。そして、きっとこれは私だけだ、と結は理解した。

『……えにしさま?』

「あっ……! 良かった、聞こえてた!」

 (こわ)(いろ)からも、きっと(うれ)しそうな顔をしているようだ。

「あ、あの」

『ごめんなさい、(おどろ)かせて。でも、どうしてもお話がしたくて』

「その……お話って」

『ああ、その、実はほんの()(あい)も無い話のつもりだったのですけど……』

 (しり)すぼみになるえにしさまの言葉に、結も次を待つ。

()(はく)さんと(れん)さんの周囲、思ったより深刻そうなんです』

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