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巫女さんえにしさま  作者: うらひと
第2章

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9/12

琥珀と蓮 ④

禁 複製転載・AI学習

「確かに迷いはあったけど――」

 ファミレスで、()(はく)(れん)と話す結。と、連れてこられた(そう)を交えての会話。

「……何で、(ぼく)まで」

「『ちゃんと知っておきなさい』って、お父さんが言ってたでしょ」

 創が(いつ)(しよ)に来ることになったのは、父親の真のアドバイスからだった。

 琥珀が話を続ける。

「でも、中学校で同じクラスになってから、兄弟みたいにやってきたのもあるから、それでも良いのかなって思って」

「僕は、それでも一向に構わなかったけどね」

 メロンソーダとウーロン茶、こちらはオレンジジュースとブラックコーヒー。

 ドリンクバーで選ぶ飲み物も、性格が出る。

「でも、パートナーシップ登録にはちょっと()(まど)ったよー」

「ああ、あれはつい勢いで……」

 いざという時に迷ってしまう(れん)が、その時は勢いで進めた、という話に(そう)と結が(おどろ)いた表情を見せる。

「でも、生活が少し楽になったよね」

「変な目で見られることも、多くなったけど。まあいいよ」

 ()(はく)(たち)は、自分たちなりに向き合い始めているのだ。

「ああ、でも琥珀の家が一番大変だったっけ」

「そうだね……」

 琥珀はもともと異性愛者だった、というより自覚はなかったが、蓮との関係が深まっていく事に、大して()()(かん)を覚えなかった。

 しかし、家族はそう簡単にはそれを(ゆる)さない。以前ふたりのライブに行った時には気付かなかったが、両親からかなりの大反対に()い、家を飛び出して蓮の家に()()み、蓮の家族もそう簡単には首を縦に()らずそこからも追い出されて。

 結局は急ぎで大学近くのアパートを借りてふたりで暮らすようになったのだ。人目を()けるように、とは言っても何か『関係』に(およ)ぶわけでもない。

 現実から()()したかったのだ。(だれ)も自分たちを理解してくれない苦しみから。メロンソーダの、これを話している最中の(あま)みがすっかり()げてしまった。

「……(いつ)(しよ)に居たいだけなのに」

 しばらくの間の後、ようやく(しぼ)()せた言葉がそれだ。アパートに住み始めた初日に買った、とびきり甘いメロンソーダでさえも、(いや)に苦かった。

 覚えている味が、嫌な言葉を思い出させて、()(じり)(なみだ)()かんだ。

「幸せになろうとしちゃいけないのかな」

 切実な願いだった。

「それって、男女じゃなきゃダメなのかな」

「……琥珀」

 (とが)めるというより、ただ泣き出しそうな琥珀を止めようとする蓮。

『別に泣かすつもりはなかったのに』と、結や蓮は思いながらなだめる。

 そこに、創が口を開く。

「……男女である前に、『人間』だから、ね」

 優樹のことを(おも)()かべながらだろうか、創は目を閉じて、それを確かめるように言った。

「……(ぼく)も、正直迷って、いるんだ。(こい)の在り方とは、何か、と」

 その言葉に、全員が聞き入る。

「『大好き』という気持ちが、そこにある。ひとまず、それだけは、確かだ」

「……男女で無くても、ですよね」

「うん。……広い目で見れば、『家族愛』としても、見られるし、『親愛』の延長線上、でもある。多くの人は、それを、意識していない」

 (おだ)やかな表情で、(そう)が続ける。

「よくよく考えれば、ふたりのそれは、『家族愛』の延長線上だ。それも、血の(つな)がっていない、『(ふう)()』……というと、()(へい)はあるかも、だけど、それに相当する」

 その言葉に、()(はく)が応えた。  

 琥珀は(せき)を切ったように話し始めた。

「みんな、みんな言うんです。『男同士だなんて』って。単に好きなだけで、からかわれて、笑われて、(つま)られて。男同士だからって、みんな人間でないかのように(あつか)うんです。一番言われてるのは(れん)なんです。『蓮がたぶらかせなければ』って。蓮は、蓮は何も悪くない!!」

ファミレスの空気が(こお)りつく。『同性愛者がいる』という空気と、まるで今まさに自らが(かれ)らに言ってしまったかのような、『差別をしてしまった』かのような気まずい空気。

 それでも、やがて店員たちも客たちも、続きへと(もど)っていく。

「……『フォレスタ』の方が良かったかな」

「いや、あれはあれで、すごい人たちが、いるから」

「すみません、大声出して」

 ようやく落ち着きを()(もど)した琥珀が(あやま)る。

 もう家族なのだ、という事は結はもちろん、(そう)(めい)な兄もこれで痛感した。

 もちろん創も、優樹や花火に対して気を(つか)っているつもりでいたが、『もしかしたら、まだまずいこと言ってるかもしれない』と思った。

 蓮は複雑そうな表情を()かべる。

 元はといえば僕が、と言いたそうな表情だった。

ファミレスの気まずい空気が、まだ残っているような感覚。

「認めてもらえないことが、こんなに苦しいなんて」

『でも初めからわかっていたことなのに』と()(はく)は言う。

 (こう)(てい)されないことが、と続けようとして()まる琥珀。

 (れん)が言い出せずに()(まど)っているのは、琥珀でも分かる。

「蓮は、(ぼく)が蓮を助けたって言うけど、……だったら、お返しはしたくて」

 今まで何度も言ったらしいことを、(そう)や結に向かって言う。

 きっと、蓮になあなあにされてきたのかもしれない。

 しかし、すっきりさせないと気が済まなそうなのが、琥珀の性格だ。

 小さくうなりながら、琥珀はなんとか言葉を(つむ)ぎ出そうとする。

 何が正解かはわからないけれども、この2人になら、と。

 創も、結も、それを分かった上で、琥珀の言葉を待つ。

「……ただただ、蓮が好きだから」

 ようやく、(なつ)(とく)のいく言葉が出せたらしい。

 少しほっとしたような()(がお)が、琥珀の表情に表れた。

 蓮はなおも、複雑そうな表情を()かべていた。

「キスするには、まだ不安になっちゃうけど」

 いすに(すわ)り、蓮に寄りかかる琥珀。

 もたれかかられている蓮は、まんざらでもないようだ。

「蓮だって、僕を(たよ)ったっていいのに」

「……琥珀は、危なっかしいもん」

 苦笑いする蓮と、不服そうな琥珀。

『大切にしたい』という気持ちが、ふたりから伝わってくる。

 何となく、創もそれは悪い気はしないらしい。

「……フォレスタで、やっても、よかったね」

「うん」

 このふたりを、あの個性的な(きつ)()(てん)に連れて行ったら、楠家(くすのきけ)の子供たちも喜ぶだろう。

 何となく、そういう気がした。

 真っ先に琥珀がいじられるのが簡単に想像できてしまったが。

 蓮を見ると、まだ何かを言いたそうで、()()く固まっていない様子だ。

(れん)?」

「うん……ごめん、もうちょっと」

 ()(はく)(うなが)すように顔を上げるが、難しい顔をしたままだ。

 (そう)がコーヒーを入れに席を立つ。

「……蓮さん、琥珀さんのこと気にしてるの?」

 結が(ちん)(もく)を破ると、蓮の表情がこわばった。

(ぼく)は……その」

 ようやく口を開いた蓮が、話し始めた。

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