第71話「季節はめぐり、準備は続く」
冬が過ぎ、シアトルに柔らかな春の風が吹き始めた。港町へ戻る日まで、あと数か月。ノアたちの毎日は、学業、アルバイト、そしてプロジェクト準備に追われる日々だった。
⸻
学業とアルバイトの両立
ノアは放課後、カフェのカウンターで働きながら、隙を見て日本語アプリを開いていた。
「Irrashai… irashai…」
口の中で小さく繰り返すその声に、同僚が笑う。
「Practicing for the trip, huh?」
ノアは照れ笑いを浮かべながら、「Yeah. I don’t wanna rely on just English anymore」と答えた。
一方、ジェイデンは芝刈りと宅配のアルバイトを掛け持ちし、サラは家庭教師を増やした。カイは父親の工房を手伝い、イーサンは週末のバイト代をほとんど積立に回していた。
⸻
準備会議
週末、学校の図書室で開かれる準備会議。
「航空券、ここで押さえないと値段が跳ね上がる。」
カイの冷静な声に、全員が頷く。
サラは文化紹介用の資料をさらに更新し、イーサンはスポンサーとの打ち合わせ日程を整理した。
ジェイデンは疲れた顔をしながらも、ふと笑顔を見せた。
「We’re almost there, guys. Almost.」
⸻
小さな息抜き
そんな忙しい毎日の中でも、仲間たちは時折集まり、夏の旅の話をした。
「Next time, we’re bringing better cameras.」
サラが笑えば、カイが「いや、まずは体力だな」と真顔で返す。
ジェイデンは「I’m ready for that ramen challenge. 10 bowls, baby!」と豪語し、場を和ませた。
ノアはそんな時間が、今の彼らをつなぎとめる大切な瞬間だと感じていた。
⸻
港町からの便り
ある晩、ユウタから短い動画が届いた。
春の港町、桜が満開の堤防で、子どもたちが笑顔で手を振っている映像。
> 「もうすぐ夏だな。また会えるのが楽しみだよ。」
ノアはその動画を何度も見返しながら、胸の奥でそっと呟いた。
――もう少しだ。必ず戻る。
⸻
ノートのページ
机の上でノートを開き、ペンを走らせる。
•Step Sixty-Seven: Spring. Almost there.
ページの隅には、小さく書き添える。
「季節が変わるたび、帰る日が近づいているのを感じる。」




