第64話「動き出す準備」
秋のシアトルは、雨上がりの空気がひんやりと肌に触れる季節になっていた。ノアは放課後の図書室でノートパソコンを広げ、サラやカイ、ジェイデン、イーサンと一緒に資料を眺めていた。机の上には、日本の地図と姫路城の写真、小野や三木で撮った夏の写真が並んでいる。
⸻
資金集めの作戦会議
「ベイクセールはどう?」
サラが提案すると、ジェイデンが勢いよく頷いた。
「Brownies, cookies, cupcakes… we’ll sell out in an hour!」
カイは冷静に数字を書き込みながら答える。
「それだけじゃ足りない。スポンサーも探そう。地元の企業にプレゼンすれば、少しは出してもらえるはずだ。」
ノアは静かにノートを閉じ、深く息を吸い込んだ。
――この計画は、本気だ。夏に港町で見た笑顔を思い出すたび、責任感が胸の奥に芽生えていた。
⸻
ミセス・アンダーソンのアドバイス
放課後、相談室に行くとミセス・アンダーソンが資料を広げて待っていた。
「プレゼンはシンプルに、でも心を込めて。数字だけじゃなく、あなたたちが何をしたいかを伝えるのよ。」
彼女の優しい言葉に、ノアは小さく頷いた。
「This isn’t just a trip. It’s about building bridges.」
その言葉にミセス・アンダーソンが微笑む。
「Exactly. That’s what will move people.」
⸻
冷ややかな視線
翌日、廊下でメイソンとその取り巻きが笑いながら通り過ぎた。
「So what, you guys begging for money now? Cute.」
その冷たい声にジェイデンが立ち上がろうとしたが、カイが腕を押さえた。
「やらせとけ。俺たちは俺たちのやることをやるだけだ。」
ノアはただ黙って歩き続けた。
――悔しい。でも、夏に見た港町の景色と人々の笑顔を思い出せば、迷いはなかった。
⸻
仲間の決意
その夜、オンライン会議でイーサンが真剣な表情で言った。
「I talked to my dad. He’s got some contacts in local businesses. We might be able to get a sponsor or two.」
その言葉に、サラとカイの目が輝く。
ジェイデンが拳を突き上げた。
「Yes! Team Harima, baby!」
⸻
ノートのページ
夜、机でノートを開く。
•Step Sixty: Work begins.
ページの隅には、小さく書き添えた。
「批判があっても、仲間がいれば進める。」
⸻
遠い港町からの声
その夜、ユウタから短い動画が届いた。港町の海辺で、子どもたちが波打ち際を走り回る姿。
> 「冬の海。夏とはちがうけど、きれいだよ。」
ノアはその動画を何度も見返し、心の奥で静かに誓った。
――来年、必ずみんなを連れて帰る。




