第60話「帰国の朝」
港町の朝は、どこかいつもより静かだった。
潮の香りも、カモメの鳴き声も、そして波の音も――すべてが別れを惜しんでいるかのように柔らかい。
ノアは縁側に腰を下ろし、桔梗模様の風呂敷をそっと膝の上に広げた。
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見送りの港
港に向かう道すがら、町の人たちが次々と声をかけてくる。
「気ぃつけて帰りや!」
「また来るんやで!」
意味は完璧には分からなくても、その温かさは痛いほど伝わる。
ジェイデンは涙をこらえながらも、「See you soon! Not goodbye!」と叫ぶ。
サラは何度も頭を下げ、「ありがとう」と繰り返した。
カイは最後まで静かに、しかし深く礼をした。
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ユウタとの約束
港の桟橋で、ユウタがノアの肩を軽く叩いた。
「Noah… come back. Always welcome.」
ノアは笑顔で頷く。
「I will. This is my town too.」
その瞬間、ユウタの目が少し赤くなった。
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飛行機の窓から
離陸した飛行機が旋回し、瀬戸内の海が眼下に広がる。
青い海と緑の町、そして小さな港が、ゆっくりと遠ざかっていく。
ノアは窓に手を当て、心の中でそっと呟いた。
「また必ず帰る。約束だ。」
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帰国後の日常
シアトルの空港に降り立った瞬間、街の匂いが懐かしく感じられた。
バスに揺られながら、ノアは仲間たちと笑い合った。
「Next time… two weeks. At least!」
ジェイデンの言葉に、サラも笑顔で頷き、カイは静かに「もっと多くの人にこの町を見せたいな」と呟いた。
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ノートのページ
夜、自室の机に座ったノアは、旅の最後のページを開いた。
•Step Fifty-Six: Back home. But a part of me stays there.
ページの隅には、小さな文字で添えた。
「あの町は、僕の居場所になった。」
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静かな夜に
窓の外の夜空を見上げる。
星は遠く、それでも確かに輝いていた。
「イサム、僕は帰ってきたよ。でも、この旅は終わりじゃない。また始まるんだ。」




