第59話「港町の最後の夜」
港町の夕暮れは、どこか切なさを含んでいた。
遠くでカモメが鳴き、静かな波の音がゆったりと響く。縁側に座るノアは、胸の奥に言葉にならない感情を抱えながら、港を見つめていた。
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ささやかな宴
広場には、町の人たちが集まっていた。
テーブルの上には、新鮮な魚の刺身、焼きとうもろこし、冷えた麦茶やラムネ。
マサエが笑顔で声をかける。
「今日は送別会や。よう来てくれたなあ。」
その言葉の意味は完璧には分からない。それでも、温かさは十分に伝わる。
ジェイデンは屋台のように並べられた料理に目を輝かせ、
「This is… paradise!」
と叫んで周囲を笑わせた。
サラは覚えたばかりの日本語で「ありがとう」と丁寧に頭を下げ、カイは静かに「また来ます」と告げた。
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ユウタとの時間
宴が落ち着いたころ、ユウタがノアを港へ誘った。
「Noah… come.」
二人で歩く波止場。夜の海は真っ暗で、空の星だけが静かに瞬いている。
「You… come again. Promise?」
ユウタのぎこちない英語に、ノアは微笑んだ。
「Of course. This is… my town, too.」
その言葉に、ユウタは静かに頷き、少しだけ目を潤ませた。
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仲間たちの約束
縁側に戻ると、ジェイデンが声を張り上げた。
「Next summer, we come again! Bigger group, bigger party!」
サラが笑顔で「Yes, but maybe less noise」と返し、カイは「次はもっと長く滞在したいな」と静かに言った。
その言葉に、町の人たちが嬉しそうに頷いた。
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ノートのページ
夜、部屋に戻ったノアはノートを開いた。
•Step Fifty-Five: Last night in the harbor town.
ページの隅には、小さく添えた。
「さよならじゃない。また会うための“いってきます”」
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夜空への誓い
港の波止場に立ち、桔梗模様の風呂敷を握りしめる。
夜風が頬を撫で、星の瞬きが静かに降り注ぐ。
「イサム、僕は帰る。でも、必ずまたここに戻るよ。」




