第56話「三木の花火」
夏の夜、港町の空気は湿った潮風と高揚したざわめきで満ちていた。
ユウタが笑顔で告げた。
「Tonight… big event. Fireworks. Miki town.」
ジェイデンが両手を挙げて叫ぶ。
「Fireworks!? Dude! This is gonna be epic!」
⸻
河川敷へ
車で三木へ向かうと、河川敷にはすでに多くの人が集まっていた。
提灯が並び、屋台の明かりが水面に映っている。
サラは「This is… beautiful」と息を呑み、カイは静かにカメラを構えた。
ノアは胸の奥がじんわり温かくなる。――この町に帰ってきた証のように、笑顔で迎える声が響いていた。
⸻
浴衣と笑顔
ユウタとマサエが、用意してくれた浴衣を手渡してくれる。
「Here. Try.」
ジェイデンは袖を通した瞬間、鏡を見て叫んだ。
「Oh man! I’m like… Japanese prince!」
周りの子どもたちが大笑いし、マサエも目を細めて頷く。
「似合ってるわよ。」
⸻
夜空の大輪
ドン――と夜空を震わせる音が響く。
見上げた空に、巨大な花火が広がった。赤、青、金色の光が夜空を染め、川面に鮮やかな反射を落とす。
「Whoa…」
サラの声は震えていた。カイは無言でシャッターを切り続け、ジェイデンは両手を挙げて叫んだ。
「This is insane! Japan summer power!」
ノアは静かに夜空を見つめた。
――イサムも、この花火を見上げたことがあるのだろうか。
その思いが胸の奥にあたたかな火を灯した。
⸻
静かな瞬間
フィナーレの花火が夜空を明るく染めた後、しばしの静寂が訪れる。
潮風に混じる火薬の匂いの中で、ノアは小さく呟いた。
「ありがとう、この夏を僕たちに見せてくれて。」
⸻
ノートのページ
帰り道、港町の縁側でノートを開いた。
•Step Fifty-Two: Fireworks in Miki.
ページの隅には、小さく書き添える。
「この夏の夜は、一生忘れない」
⸻
波音の中で
港の夜は静かだった。
遠くで響く波音を聞きながら、ノアは桔梗模様の風呂敷をそっと握りしめた。
「イサム、僕はこの町で、たくさんの宝物を見つけているよ。」




