第54話「港町の夜、語らう時間」
夕暮れの港は、赤く染まった空とゆったり揺れる波が、どこか懐かしい匂いを漂わせていた。三木の鍛冶工房から帰ったばかりの仲間たちは、縁側に腰を下ろし、冷たい麦茶を片手にひと息ついていた。
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火花の記憶
「That… was insane.」
ジェイデンが両手を広げて大げさに言う。
「I mean, fire everywhere, metal everywhere… like a dragon’s home, dude!」
その言葉に、港町の子どもたちがケラケラと笑う。ユウタが英語で「No dragon. Only craftsman.」と返し、さらに笑い声が広がった。
カイは真剣な表情で呟いた。
「でも、あの人たち、すごいよな。あんな集中力、見たことない。」
サラも静かに頷いた。
「道具を“作る”んじゃなくて、“命を吹き込む”みたいだったわね。」
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ノアの胸の奥で
ノアは、鍛冶工房で聞いた「イサムさんも若い頃はここで荷運びをしていた」という言葉を思い返していた。
――曽祖父も、あの火花と熱気の中で青春を過ごしたんだ。
そう思うだけで、胸の奥に静かな誇りが灯る。
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笑顔が広がる縁側
マサエがお盆にスイカと冷えた麦茶を載せて縁側に運んできた。
「みんな、おつかれさん。たんと食べてな。」
意味は完全には分からなくても、温かい声と笑顔にジェイデンは満面の笑みで「Arigatoooo!」と叫ぶ。
サラは丁寧に頭を下げ、カイは静かに「ありがとう」と口にした。
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ノートのページ
夜、客間に戻ったノアはノートを開いた。
•Step Fifty: Fire, steel, and family.
ページの隅には、小さな文字で添えた。
「この町で過ごす時間が、僕の居場所を作ってくれている」
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港の夜
防波堤に立ち、波の音を聞きながら夜空を見上げる。
遠くには漁船の灯り、頭上には満天の星。
「イサム、僕はここにいる。みんなと一緒に。」
そう心の中で呟くと、潮風が優しく頬を撫でた。




