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風の家紋(かぜのかもん)—僕が日本へ向かうまで—  作者: 和泉發仙


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第53話「三木の火花」

翌朝、港町の空は透き通るような青さで広がっていた。潮風の中で朝ごはんを終えると、ユウタが笑顔で告げた。

 「Today… next surprise.」

 仲間たちは一斉にざわつく。ジェイデンは椅子から飛び上がり、

 「Another surprise!? Bro, Japan is full of quests!」

 と大騒ぎ。ノアは少し笑いながらも、胸の奥で高鳴る期待を押さえられなかった。



火の町へ


 車は港町を離れ、緑の田園風景を抜けていく。やがて視界に、煙突と鉄骨の建物が点在する小さな町が見えてきた。

 「Welcome to Miki!」

 ユウタが誇らしげに告げた瞬間、ジェイデンが目を輝かせる。

 「What is this place?」

 「Metal town. Knife, tools… craft.」


 その説明に、カイは興味深そうに身を乗り出した。

 「刃物の町ってことか。面白そうだな。」



鍛冶工房の扉


 案内されたのは、古い瓦屋根の鍛冶工房。中からは、金槌が鉄を叩く重低音が響いていた。

 扉を開けると、熱気と火の匂いが全身を包み込む。

 ジェイデンは思わず叫んだ。

 「Whoa… it’s like… a dragon’s cave!」

 職人たちが笑顔で迎え、「いらっしゃい!」と声をかける。



火花のリズム


 目の前で、真っ赤に熱せられた鉄が金床に置かれ、金槌で打たれていく。

 火花が散り、力強い音が工房全体に響く。

 「This is… so beautiful.」

 サラが息を呑み、ノアも思わず頷く。

 ――ただの道具を作る作業じゃない。命を吹き込む“技”だ。


 ユウタが通訳すると、職人のひとりが笑顔で言った。

 「イサムさんも、若い頃はここで荷運びを手伝っていたんだぞ。」


 その言葉に、ノアの胸が熱くなる。

 ――曽祖父も、この音、この熱、この匂いの中で青春を過ごしたんだ。



触れる技


 職人が、仕上がったばかりの小さなナイフを手渡してくれた。

 「Careful. Sharp.」

 ノアは両手で受け取り、そっと刃を見つめる。光を反射して輝くそれは、まるで誇りそのものだった。


 ジェイデンは小さな包丁を握り、「I’ll cook sushi when we get home!」と大声をあげ、工房に笑い声が広がった。



町の温かさ


 作業を終えたあと、町の人たちが麦茶と地元のお菓子を振る舞ってくれた。

 カイは静かに感謝を述べ、サラは覚えたばかりの日本語で「ありがとう」と笑顔を見せた。

 その自然なやり取りが、町の人たちの心を柔らかくした。



ノートのページ


 夜、港町の縁側でノートを開く。

•Step Forty-Nine: Fire, steel, and history.


 ページの隅には、小さく添えた。


「イサムが見た景色を、僕も見られた」



夏の夜風


 夜の港、潮風に吹かれながらノアはそっと呟く。

 「イサム、ありがとう。僕たちは、君の故郷を少しずつ歩いているよ。」


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