第52話「小野のそろばん」
翌朝、港町の空は雲ひとつない青さで輝いていた。潮の香りが心地よい風に乗り、縁側でスイカを食べていたジェイデンが大声で叫んだ。
「Best day ever! Japan is paradise!」
その横で、ユウタが少し緊張した声で言った。
「Today… trip. Surprise.」
ノアと仲間たちは顔を見合わせ、期待と不安で胸を高鳴らせた。
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町を離れて
車が町を離れると、景色はゆっくりと変わっていった。
港の青から、田んぼの緑、そして低い山々に囲まれた穏やかな風景へ。
ジェイデンが窓に顔を押し付け、「Whoa… so green… so peaceful」と呟く。
サラはスマホを構えながら、「ここ、本当に日本なの?」と驚きの声をあげた。
ユウタは運転席で笑いながら言った。
「Little town. But… important town.」
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そろばんの町・小野
着いた先は、静かな町並みに木造の建物が並ぶ場所だった。
「Welcome to Ono!」
ユウタの言葉に、ノアは思わず息を呑む。看板には「そろばん工房」と書かれている。
工房の中に入ると、木の香りと規則正しい“カチカチ”という音が迎えてくれた。
熟練の職人が手早く珠を通し、糸を締める。
ジェイデンは目を丸くして、「Oh my god… it’s like… magic」と呟いた。
サラも静かに頷きながら、「So beautiful…」とため息をつく。
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触れる伝統
職人が笑顔でそろばんを差し出した。
「Try.」
ノアが恐る恐る触れると、木の感触が指先に心地よく伝わる。
ユウタが通訳しながら簡単な使い方を教えると、カイが驚きの声をあげた。
「Wait… it actually works!?」
ジェイデンは計算に挑戦して、見事に失敗。
「Man, math is hard in any language!」
その一言に、工房中が笑い声で包まれた。
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町の人たちの温かさ
見学を終えると、職人たちが手作りのキーホルダーを仲間たちに渡してくれた。
「Thank you! Arigato!」
ジェイデンは何度も頭を下げ、サラも胸に手を当てて感謝を伝える。
ノアは、ただその場の温かさに胸がいっぱいになっていた。
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ノートのページ
夜、港町の縁側でノートを開く。
•Step Forty-Eight: Saw the abacus town. Tradition, beauty, kindness.
ページの隅には、小さな文字で添えた。
「この町の誇りを、僕たちは受け取った」
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夜風の中で
夜の港の風に吹かれながら、ノアは心の中でそっと呟いた。
「イサム、見てる? 僕ら、あなたが愛した日本を少しずつ知っていってるよ。」




