第40話「言葉の扉」
帰国から数週間が経ち、シアトルの空はすっかり秋めいていた。だが、ノアの頭の中には播磨の潮風や港の灯り、そして「また来いよ」と笑った人たちの声が、まだ鮮やかに残っていた。
⸻
オンラインの再会
夜、パソコンの画面にはユウタとマサエ、そして町の子どもたちの笑顔が並んだ。
「ノアー! ゲンキ?」
ぎこちない日本語がスピーカーから流れ、ノアは思わず笑った。
「Genki! ありがとう!」
その一言に、画面の向こうから歓声が上がる。たった短い言葉でも、距離を縮められる――それが、心から嬉しかった。
⸻
日本語の勉強
学校の授業が終わると、ノアは町の図書館に通った。
初心者向けの日本語教材を開き、「あ」「い」「う」と指でなぞる。
「ありがとう」「ただいま」「おかえり」――播磨で聞いた言葉をノートに書き込み、声に出して練習する。
ある日、カフェテリアでジェイデンが冷やかした。
「おい、ノア! “カラオケ”って日本語で何だか知ってるか?」
「それ、英語でも“karaoke”だろ」
笑い合いながらも、ノアは心の奥で静かな決意を固めていた。
――次にあの町を訪れるときは、もっと伝えられるように。
⸻
仲間たちの協力
サラが言った。
「じゃあ、次は週末に会話の練習をしましょう。私も手伝うから。」
カイはスマホを見ながら、
「父さんも協力するってさ。俺たちも簡単なフレーズなら覚えておくよ。」
支えてくれる仲間たちの存在が、ノアの背中を押した。
⸻
ノートのページ
その夜、机の上のノートを開き、新しいページに書き込む。
•Step Thirty-Six: Learn Japanese. Build the bridge.
そして、ページの隅に小さく添えた。
「次に会うとき、もっと“僕”を伝えるために」
⸻
夜の決意
窓の外の夜空を見上げる。星の光は遠いけれど、港の灯りのように確かだった。
「待っててくれ、播磨のみんな。もっと話せるようになって、必ず帰る。」




