表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第五話:そして始まる物語



「……と、とりあえず何があった……?」

「…………」


椅子に座らせ、先程のクリームソースでの余り物で作ったホットミルクを与える。

しかし真由美は何も答えずに、ずっと顔を俯かせているだけだ。


「なぁ真由美。何か言わなかったら俺も分からないんだけど……」

「……そ、それは、そうだけど……」


そこで俯かせていた顔を上げ、声を出す。


「けど、何て言ったら分からないの……。私も何が何だか……」


どういう事だよ? 一輝がそう言おうと真由美の方へと歩みかけると、そこでまたチャイムが鳴る。


「なっ……またかよぉ」


いい加減うんざりした気分で玄関へ向かう。


「あっ……!」


真由美が何かを言いかけるが、一輝の耳には入らない。

玄関についた一輝は、さっきと何も変わらない感じで扉を開け放つ。


「っとに、もう誰だよこんな忙しい時によぉ……っ!!」

「……俺だよ」

「んあ? 誠也?」


とまぁ勢いよく飛び出したが、相手は一輝の親友であり、真由美の彼氏でもあった誠也だった。


「ちょっと聞きたいんだけどさぁ、真由美……来てないか?」

「ん? あぁ来てるぞ。なんか様子が変なんだ。誠也、何か知ら――」


そこで一輝の言葉は遮られる。

真由美がいるといった瞬間、誠也の表情が変わったからだ。


「やっぱり真由美はここに……」

「せ、誠也……?」


豹変した親友の様子に、一輝の額には嫌な汗が浮かぶ。


「一輝、君は最初からこの結末を望んでいたんだね……」

「……は? お前は何を言って――」


しかし、一輝の言葉を聞かずに、誠也は土足のまま室内に上がり込む。

慌ててそれを制止させようとする一輝だったが、その前に誠也はリビングへと足を進めていった。


「真由美! やっぱりここにいたのかっ!」

「せ、誠也……!」


リビングに居た真由美を見つけた誠也が叱咤し、真由美はそれに怯えた声を上げる。

その真由美や誠也ののただ事ではない様子に、一輝は、誠也の肩を掴んで止めようとするが、その手を掃われた。


「誠也……いったいどうしたんだよ?」

「うるさい……真由美は俺の物だぞ……お前こそ、ここで何をしていたんだ?」

「あぁ? ここは俺の家だぞ?」

「だから、なんでその彼氏でもないお前の家に、真由美がいるんだ……っ!」


叫びながら一輝の両肩を力強く掴む。

一輝は、今の誠也は正気じゃない事が目に見えて理解することが出来た。


「そ、そんなの……幼馴染みなら普通だろ! それよりも、今日のお前は可笑しいぞ? ただの喧嘩じゃないのかよ?」


そんな親友の姿に、困惑しながらも、負けずと大きめな声で抵抗する一輝。

けれど、誠也はその言葉を聞くと、更に表情を憎悪に歪ませる。

どうやら、今の幼馴染みという単語で誠也の怒りは頂点に達したようだ。


「またか……またなのか……! そうやって俺と真由美の仲を……お前は……お前はぁぁぁっ!!!」


グッと指が肌に食い込む痛みに耐えながら、一輝も誠也に掴みかかる。


「い、一輝! ダメだよ! そんな……っ!」


それを見た真由美が立ち上がり、二人の間に割り込もうとするが、それは誠也の手によって遮られた。


「きゃあっ!」

「真由美!? ……っ! お、おい……誠也……」


フッと捕まれていた肩から圧力が消えた一輝。

誠也の手が真由美の目の前で空を切ったのを見て、一輝は駆け寄ろうとしたが、喉に冷たい感触を当てられ、身動きを封じられる。


「お前……そんな物を……どこで……」

「これか? 真由美の家にあった物だ……くくっ……切れ味いいんだぜ?」


当然だ。

真由美の母は料理が得意だが、それは必然として道具にも気を遣い、大切に扱っているという事にも結びつく。

月に一度は磨いでいるその包丁は長年使われてきたにも拘らず、未だに鋭利な輝きを失っていなかった。

その刃を当てている誠也の手に力が入る。


「……っ!」


首筋にツーッと血の線が流れ落ちる。

誠也のそれを見て、含み笑いをしていた。


「い、一輝! 一輝ぃ……っ!」


切られはしなかった真由美が誠也の足にしがみつきながら泣き叫ぶ。

誠也は眼下で自分の最愛の人が己ではなく、違う人の名を叫ぶのを冷たく見下ろす。

そして、うざったそうに足蹴にした。


「お、お前っ!!」


それを見て怒りが弾けた一輝は、押し当てられた包丁に怯むことなく、誠也を殴り飛ばす。


「んぐっ……あぁぁぁぁぁぁっ!」


しかし、誠也は殴り飛ばされた瞬間に、押し当てていた包丁を横に一閃。

覚悟していたとはいえ、切られた痛みに、一輝は悲鳴を上げる。


「ぐぅぅぅっ……かはっ! あぁぁっ……!」

「一輝!! 一輝、一輝ぃ!!」


膝をつく一輝に、真由美が駆け寄る。


「くくくっ……ざまぁないな一輝。人の物に手を出すからこうなるんだぞ……」

「真由美は……あっ、けほっ、はぁっ、はぁっ……物じゃあ……ないっ!」


誠也の言葉を聞き、ついていた膝を叱咤しながら、無理やり立ち上がる。

そして一輝は、残る力を振り絞って腕を振り上げた。


「うるさいな。真由美は俺の彼女……俺の物じゃないか!」


それを刃物以上の鋭い視線で睨み付けながら、一輝の一撃を避ける。


「なっ……ぐふっ!」


更に、隙が出来た一輝の腹に、誠也は無情にも包丁を突き刺した。


「一輝ぃぃぃっ!!!」


室内に、真由美の声が響きわたった。




◇◆◇◆◇◆◇


saide 一輝



世界の動きが減速した感覚に陥った。

いや、減速したのは世界じゃな……俺自身だ。

誠也に腹を刺され、こうして倒れるのに、永遠にも等しい時間が経過しているように感じる。

けれど、徐々に視界迫ってくる床。

やがてその床が視界一杯に広がり、床の冷たい感触が俺の身体を刺激する。

ひんやりして気持ちいいが、腹だけが狂いそうなぐらいに熱い。

よく、刺されると焼けるような痛みが襲うというのを漫画やラノベを読んで知っていたが、実際にそうなんだな。


――痛い。


痛みが腹から全身に広がる。


――つらい。


後悔したくなる。


俺はここで死ぬのか……嫌だ!


「死にたく……ない……」


声に出せたのか分からない。

でも掠れた自分の声が聞こえた気がする。


「一輝……まだ生きてたのか……」


俺を見下ろしているんだろう。

誠也の足しか見えないけど、きっとそうだ。

その横では両腕を捕まれて、膝をつき、俺に向かって泣き叫んでいる真由美が居た。


「ま、まゆ……み……」


――届け。


そんな願いを込めながら、手を伸ばす。

だけど……


「汚い手で……俺の真由美に触るなよっ!」

「~~~~っ!!!」


その手は誠也に刺されて阻止された。

床に包丁が突き刺さり、自分の手が串刺しにされたのを見て、意識が飛びそうになる。

しかし、激痛がそれを許さない。

意識を手放そうとしても、無理やり刺激されて気絶が出来ない。


「無様だな、一輝……」


そう言いながら、笑みを零しているであろう親友の姿を脳内で思い描き、俺の目からは涙が流れる。


「はははっ! お前はもう――」


次第に涙が瞳を覆い隠し、視界がぼやける。

いや、これは涙だけの所為じゃない。

それに誠也の声も真由美の叫び声も段々遠くなっていく。


(あーこんなに痛いのに、気絶ってするんだな……)


俺の意識はそこで途絶えた。




◇◆◇◆◇◆◇




そして、あれからどれくらい経ったのか分からないが……俺は意識を取り戻した。

重たい瞼を開け、何とか身体を動かそうとするが、身体が言う事を利かない。

きっと血を流しすぎたんだ。

だけど、俺は自分の身体に鞭を打つように、無理やり頭だけを横に動かす。


「――っ!! ま、まゆ……」


そして、俺は視界に入ったものに絶句した。

何も纏っていない、真由美が横たわっていた。

今の今まで涙を流していたのか、閉じている瞳からは今でも涙が流れ続けている。

身体にもいくつか痣が見当たる。

誠也に無理やりされた証だ。

真由美の必死な抵抗も、きっと誠也は力でねじ伏せたんだろう。

俺はその時の事を想像してしまい、再び涙を流し、後悔した。

真由美がここに逃げ込んだのも俺に助けて欲しかったからだろう。

なのに、俺は誠也を部屋に上がらせ、剰え自分は何も出来ずにこうして床に這いつくばっている。

結果、真由美も無理やり……。


「まゆ……み……」


余力を使って、何とか声を絞り出すが、喉を切られたこともあって、声が上手く出ない。

けれど、その声が届いたのか、真由美が僅かに瞼を開ける。

それを見た俺は、何とかして伝えようと必死に声を絞り出そうとするが、出るのは血と咳だけ。


「はぁ……はぁ……んぐっ……はぁ、あぁ……」


あの時に自分の気持ちに素直になり、想いを伝えていればこうはならなかったのだろうか?


(真由美……ごめん……俺、本当はお前のことが……ずっと……)


心の中で伝えたいこと思い描く。

しかし伝える術がない。

俺は僅かに瞼を開くも、意識が朦朧としている真由美に向かって口だけで伝えた。


(ずっと好きだった……)


今のが通じたのかどうかは分からない。

だけど、そう口を動かした瞬間、真由美の瞳が目を見開いた。

その光景を最後に、俺は意識を手放す。

思いを伝えられなかった後悔と好きな相手を守れなかった後悔。

俺はその後悔を胸に抱きながら、この世を去ったのだった。




◇◆◇◆◇◆◇




「……はぁ。俺、死んだのかぁ……」


そして、目を覚ますと、そこにはあろう事か真っ白な世界が広がっていた。

本当に真っ白で、何もないただの空間。

俺は状態を起こしながら、ここが天国かとくだらない感想を漏らす。

それと同時に、死ぬ前に感じていた後悔が俺の心を浸食してきたのを感じた。


「くそっ……何も出来なかった……真由美の事を……護れなかった……っ!」


今更嘆いたってしょうがない。

そんな事は頭で理解していても、嘆かずにはいられない。


「くそ……」

「まぁまぁ、そんなに毒づかないの」

「――っ!」


突如、背後から女性に声をかけられる。

俺以外に誰も存在しないと思っていた空間でのそれに、俺の身体は自分でもびっくりするくらいにビクッと反応した。


「でもそういうのも若さってやつなのねぇ……って、それだと私がお婆ちゃんみたいじゃない! 誰がお婆ちゃんよ!」

「えー……」


振り向き、女性の姿を認識したのはいいが、その女性は何故か俺に逆ギレしてきた。


(何この理不尽……)


「理不尽って、そんな事ないわよ」

「なっ! こ、心を読まれた……!?」


この人、一体何者なんだ?

俺は死んでここに来た。

ということは、ここは天国とかで間違いないはずだ。

すると、今こうして目の前にいる人は……天使? なのかな?

まぁそれだと納得もする。

何せ、この女性。

胸とか大きくて、ナイスバディなくせに、身に纏っているのは薄着一枚で……実にきわどい。

きっとその姿で悩殺した人間を天国へと導くんだろう。


「それだと天使じゃなくて、死神にならないかしら?」

「……そうだね。って人の心が読めるんなら、俺がそんな事思っていないのは分かるでしょ?」


そんな事というのは、彼女がお婆ちゃんということだ。

俺の問いに、女性はふフッと笑みを零しながら、俺の横をツカツカと素通りする。

その彼女の姿を追うように、俺も振り向くと、いつのまにかそこには一つの玉座が置いてあった。

彼女はそこにすました顔で平然と座り、うっすらと瞳を細く開け、こう言い放った。


「えぇ知ってたわ」

「だから、何その理不尽!?」


思わず今度は声に出してしまったが、彼女は何も言わず、ただただ、そんな俺の事を見つめてくるだけだった。

何か品定めでもされているかのように、その瞳は俺の事を下から上へとくまなく動く。

その視線に、俺の身体は知らずのうちに緊張し、力が入るのが分かった。


「ふーん。まぁ色々大変だったみたいね……」


――色々大変だった。

過去形。

それはつまり、俺の過去、生前? についての事だろうか?

だとすると、彼女は今、俺の過去に何があったのかを見ていたのか?


「あ、あの……貴女は……」

「ふふっ。遠山 一輝君、ね?」


いきなり名前を呼ばれた事に、俺は投げかけた疑問を呑み込む。


(な、何で俺の名前を知っているんだよ……?)


そして、新たな疑問が生まれる。


「良いわ。貴方にはまぁ……ギリギリで資格があるみたいだから教えてあげる」


彼女はそこでフフッと不適に微笑むと、徐に玉座から立ち上がり、毅然とした面持ちで口を開く。


「私の名前はアテネ……ここ、神界の主で――っとちょっとまって!」


ポンと可愛らしい煙を立てながら彼女は何もないはずの空間から一つの携帯を取り出す。

その光景に俺は唖然しながら、彼女の言いかけた自己紹介を頭の中で反復させていた。


「あ、もしもし劉ちゃん? 何どうしたの? 寂しくなっちゃったの?」


彼女、アテネさんはさっきのような態度から一転、可愛らしい声で携帯越しの相手、劉ちゃん? と話し始めた。


(ここが神界……天国と同じような物なのか?)


話の内容を聞くのは無粋だと思い、俺はどこまで広がっている分からない真っ白な空間をグルッと見回す。


(うーん。俺はこれからどうなるのだろうか?)


もしかして俺は何か罰を受けるために呼び出されたのか?


「違うわよ~。ここに呼んだ理由はちゃんと別に存在してるわ~」

「あ、もう電話はいいんですか?」

「えぇ。ごめんなさいね……まったく劉ちゃんはぁ。寂しがり屋なんだからぁ♪」

「…………」


目の前でアテネさんは身体をくねらせながら、何やら照れ笑いをし始める。

俺はその光景に何も言えなくなるが、何とか次の言葉を絞り出す。


「その劉ちゃん? はお友達ですか?」

「ん? 劉ちゃんは私の……きゃあ!! これ以上は言えないわ~っ!」


アテネさんの顔がボンッと音を立てて真っ赤になる。

それを見た俺は……


(アテネさんみたいな女性に好かれるのは……羨ましいな……)


そんな感想を抱いてしまう。

だってしょうがないじゃないか。

こんな大人な面があると思いきや、可愛さも兼ね備えて……それに、こんな素晴らしい身体…………


「ととっ。ごめんなさい。少し話が脱線しちゃったわね。 えっと……どこまで話したかしら?」

「あ、えっと……アテネさんがここの主だというところまでです」

「あーそうだったわね」


俺は邪な気持ちを理性という正当な力で抑え込みながら、真面目に話し始めたアテネさんの話を聞いた。






「つ、つまり……俺がここに呼び出されたのは転生、させてもらえるから……?」

「そうよ。元の世界はダメなんだけどね。一応前世の貴方は『良い事』をしたから」


俺はアテネさんの話に思考を停止してしまう。

それでも、アテネさんは話続ける。


「私の役目はね、生前に『良い事』を行った生命を転生させる事なの。まぁ転生システムを管理してるのは私だけじゃないんだけどね。でも、大まかは私が行ってるわ……何せ、こんなヤツが転生しちゃう事例もあったからね……」


そう言いながら、パチンと指を鳴らしたアテネさんに合わせて、何もない空間からモニターが出現する。

そして、そのモニターが砂嵐の後に映し出したのは……


「うわぁ。かなりの美青年ですね。こんな綺麗な金髪なんて初めて見ましたよ……」

「見た目だけはね……でも実はこれね、失敗作の代表例なのよ。名前は木下タカト。皆はエロトって呼んでいるんだけど、そのニックネームを通り、転生先の異性に下衆な真似をしくさっているのよ……!」

「…………」


まるで途中からは吐き捨てるような物言いに、俺は何も言えなくなる。

だって今映し出されている彼からは、そんな雰囲気を感じ取れないからだ。

しかし、アテネさんが真面目に話している様子から嘘をついているとは思えない。


「まぁそういうヤツもいるから、ここ最近は私が直々に転生者の選別をしているのよ。それで今回の貴方はさっきも言ったように、ギリギリだけど合格。このギリギリって意味は……分かるかな?」

「…………」


アテネさんの問いに俺は答えられずに、顔を俯かせてしまう。

理由が分からないんじゃなくて、その理由を答えられないからだ。

そんな俺の心中を察してくれたアテネさんは、俺に近づき、そっと頬に触れてきた。


「ごめんなさい。少し、意地悪だったわね。でもね、転生をする人にはちゃんと前世での自分に向き合ってほしいのよ。じゃないと……次の人生で過ちを犯してしまうから……」


そっと瞳を細くし、優しく微笑みながら、俺に諭すように語りかけてくれるアテネさん。

俺はその言葉に、涙が流れそうになるのをグッと堪えた。


「……は、はい。俺、転生出来るんなら……次の人生は……もう、同じ事は繰り返したくないです……」


俺が前世、先程まで居た世界で犯した罪。

それはきっと、自分の気持ちに嘘をついて、他人を巻き込んでしまった事だ。

間違いないだろう。


「そうね。でも貴方ならきっと大丈夫よ」


そう言いながら、今度は俺の首に両手を回して抱き寄せてくれる。

身長は少しだけ俺の方が大きいから、自然とアテネさんが軽く背伸びをするのが分かった。

そして、今の格好は他人が見れば俺がアテネさんにキスを迫られているようにも見えるだろう。

俺自身、そういう風に意識してしまって、少し頭がクラクラしてしまう。


「ふふっ。貴方って初心なのね……。少しだけ、可愛いじゃない」

「そ、そうですか……?」


俺の耳にそっと囁くよう、大人モードなアテネさん。

微かな息と高めだが魅力を感じる声音が俺の鼓膜を刺激する。

そして全身に感じてしまう、女性特有の柔らかい肌の感触。


「あ、あああのっ! 次の世界はどこなんですかね!?」


俺は自分の中で芽生え始めた煩悩を振り払いながら、必死に話題を逸らす。

すると、アテネさんはクスッと微笑して、俺から離れてくれた。


(す、少し惜しい事をしたかな……)


自分で言っておきながら、早くも後悔に苛まされそうになってしまう。


「転生先は貴方が決められるわ。さっきも言ったように、元の世界はダメなんだけどね」

「え? そうなんですか?」

「えぇ。ちなみに、アニメやゲームなんかの世界が人気だけど、貴方もそっちの方が良い?」

「いや。興味はあるけど……」


俺は次の転生先について疑問を口にする。


「あの、オリジナルの世界とかって行けるんですか?」

「オリジナル……?」

「はい。俺、強くなりたいんです。今以上に強く……! そんな力を手に入れ居られる世界へ行きたい!」


俺はもう誰も傷つけさせたくない。

そして、誰かが助けを求めるのなら、俺は手を差し伸べたい。

だけど今の俺ではそれは不可能だ。

その手を差し出すだけの資格が今はまだ無い。

だからこそ、俺は転生先をここに選んだ。


「わかったわ、貴方がそう強く思えば行先の世界はそのように変貌するようにしてあげる。だけど、それは良い結果につながらないかもしれないわよ?」

「構わないです。強さを手に入れられるなら……!」

「りょーかい。じゃあ少しだけ待っててね」


アテネさんはそう言うと、俺の額に手を当てると何やらブツブツと口ずさみ始める。

何かは聞き取れないが、呪文のようだとは理解できた。


「―――っ!!」


そして、アテネさんの手から光が放出し、俺の全身を包み込んできた。


(温かい……)


次第に光は手が当てられている額に集束していく。


「よし。能力なんかも良いのを選んどいてあげたわ」

「はい? 能力?」


な、何ですかそれ?


「ん? あーこれは転生する際のオマケみたいなものよ。まぁこのオマケも転生先の醍醐味? になっているみたいだけどね」

「き、聞いてないですよぉぉ!?」

「安心しなさい。私が考え得る限りいいのをあげたんだから。まぁそれでも、劉ちゃんに勝てるようになれるかは分からないけどね♪」

「うぅ……」


もう誰だよ、その劉ちゃんってさぁ!


「んじゃあまぁ、いってらっしゃい! 何か分からない事があったら、心の中で私に話しかけてみなさい!」

「え? ちょっ、えぇぇっ!?」


突如としてやってくる浮遊感。

なに? これってお約束のパターンってやつですか?


「いってらっしゃい♪」

「いってきまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっす!!!!!!!!!!!!!!」


こうして、俺の二度目の人生が始まったのだった。




◇◆◇◆◇◆◇




「んー。今の子を送った世界……大丈夫かしら。何か不安ね」


今回の転生者。

前世での出来事がよっぽど悔しかったのか、今でのあの子の後悔は膨大だった。

思っている事が反映される世界にしたのは良いけど、その後悔が嫌な方向に向かなければ……。


「でもでも……んー……はぁ。今は様子見だけ、なのかしらねぇ

見直し出来てない状態での投稿になってしまった……。

何かミスがあったら、感想で教えてください。


今日は会社に泊まり作業……。

では、感想コーナー!


龍賀様、夜神様、感想ありがとうございました。


一応この先もストックがありますので早めに更新……できたらいいなぁ。


では、次回もよろしくお願いしますね!

感想いっぱいおまちしておりまーす!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ