↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/83

第81話:Aランクの日常と、次なる不穏な影

『黒銀の地下迷宮』の深層を無事に踏破し、数々の難関を乗り越えて正式にAランク冒険者への昇格を果たしてから、早くも数日が経過していた。


王国の辺境に位置するこの街の敷地に佇むブックカフェ『グリーン・リーフ』には、早朝から焼き立てのスコーンの甘く香ばしい匂いと、店主の一二三が厳選したコーヒー豆をじっくりと淹れる深い香りが心地よく漂っている。


朝の爽やかな日差しが木漏れ日となって大きな窓から差し込み、店内を柔らかく包み込んでいた。


「はいっ、お待たせいたしました! 特製ハーブブレンドティーと、自家製の焼き立てスコーンのセットになります!」


二葉が、重たいトレイを片手で軽々と支えながら、軽快な足取りでテーブルの間をすり抜けていく。


そして、笑顔を絶やすことなく手際よく料理を客席へと並べていった。


「いつもありがとうね、二葉ちゃん! いやあ、それにしてもAランク冒険者への昇格、本当におめでとう! 冒険者ギルドでも街の広場でも、君たち三姉弟の快挙の噂でもちきりなんだよ!」


常連客の老紳士が目を細めながらそう声をかけると、二葉は嬉しそうに照れ笑いを浮かべ、胸を張った。


「ふふっ、ありがとうございます! でもね、私たちにとっては冒険と同じくらい、このカフェでみんなに美味しいものを食べてもらうお仕事も大切なんですよ! だから、これからもよろしくお願いしますね!」


二葉が元気に答えると、周囲のテーブルからも温かな笑い声と「偉いぞ」「応援してるよ」といった歓声が一斉に弾けた。


カウンターの奥では、一葉が優雅で全く無駄のないしなやかな手つきでコーヒー豆をミルで挽いていた。


カリカリと心地よい音が店内に響く中、おっとりとした声で妹へ声をかける。


「二葉、あまりお客様とお話しすることに夢中になりすぎちゃダメよ。せっかくの焼き立てのスコーンやお茶が冷めてしまうでしょ」


「あ、ごめんなさい、ひと姉! すぐに次のお客様のお会計に行ってくるね!」


二葉はペコリと頭を下げると、バタバタと嬉しそうにレジカウンターへと向かっていった。


その様子をカウンターの隅で帳簿を整理しながら見守っていた三葉が、そっと小さな息をつきながら一葉のほうを見上げた。


「ひと姉、今朝ギルドからうち宛てに届いていた指名依頼の件……全部お断りして正解だったね」


「ええ、そうね。私たちがAランクになった途端、貴族の方々からの個人的な専属護衛や、無理なプライベートの指名依頼が一気に増えてしまったけれど……私たちは自分たちのペースで、この大切なカフェとみんなの平穏な日常を守ることができれば、それで十分だもの」


一葉は優しく目を細め、丁寧にドリップした漆黒のコーヒーを磁器のカップへと優しく注ぎ入れた。


そんな穏やかで平和な時間が流れていた店内だったが、昼下がりを過ぎた頃、店の入口に取り付けられた真鍮のドアベルが重々しい音を立てて響いた。


ゆっくりと扉を開けて入ってきたのは、顔に大きな傷を持つ無骨な体格の男、冒険者ギルドのベテラン幹部だった。


彼の表情は厳しく硬く結ばれており、店内を満たす和やかな空気とは明らかに異質な、冷たく重い緊迫感を漂わせている。


男は店内をぐるりと見回すと、静かな足取りでカウンターの前へと歩み寄ってきた。


「すまないな、森羅三姉弟……いや、『グリーン・リーフ』の三人だな。大至急、極密裏に話したいことがある」


一葉は淹れ終えたカップをそっと置くと、静かに手を止め、穏やかだが一切の隙のない眼差しを男へと向けた。


「いらっしゃいませ。とても改まったお顔をされていますが……ギルドで何か緊急の事態でも起きましたか?」


男は周囲の客を気遣うようにさらに声を低く落とすと、胸元から一枚の重厚な羊皮紙を取り出し、カウンター越しに滑らせた。


「隣国の巨大な軍事国家『ヴェルザ帝国』の国境付近で、不穏すぎる動きが察知されたんだ。帝国直属の特殊精鋭部隊が、我が国の国境沿いに位置する『霊峰アルタ』の古代ダンジョンへ、不法に潜入した形跡が見つかった」


「隣国の軍隊が、我が国のダンジョンに不法侵入……ですか?」


三葉が即座に眉をひそめ、羊皮紙に記された特殊な暗号や複雑な魔力反応のデータを冷静な目つきで読み解いていく。


「噂や回収された暗号文によると、彼らの目的はダンジョン最深部に封印されている古代兵器の強奪、あるいはダンジョンのコアに直接干渉して暴走させ、麓の街道や交易都市を壊滅させる『ダンジョンテロ』だと言われている。ギルド本部も極秘裏に精鋭の調査隊を出したが、相手は訓練された帝国の工作員たちだ。並のAランクパーティーでは返り討ちに遭う危険があまりにも高すぎる」


「だからこそ、表立った軍を動かせない状況で、私たちに極秘裏での潜入と事態の収拾を頼みたい……ということですね」


一葉が静かに男の言葉を継いだ。


「その通りだ。君たちの『Aランク』としての実力、そして周囲に察知されずに迅速に物事を解決できる能力を買っている。どうか、力を貸してはくれないだろうか」


二葉と三葉が同時に長女である一葉の顔を見つめる。


「ひと姉、もし麓の街や街道が大変なことになるなら、絶対に放っておけないよ! 私たちで行こう!」


「うん、僕たちなら、相手がどんな軍隊や工作員であっても絶対に後れは取らないよ」


一葉は妹と弟の力強い言葉に頼もしそうに目を細めると、静かに頷き、差し出された依頼書をそっと自分の手で受け取った。


「分かりました。その極秘依頼、お受けいたします。私たちの愛するこの街と、大好きな日常を守るために」


穏やかなカフェの日常の裏側で、国家規模の危機という新たな不穏な影が、三姉弟の前に静かに姿を現そうとしていた。

「少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【評価】(★★★★★)で応援していただけると励みになります!」


前作もあわせてお楽しみいただけると嬉しいです!


前作はこちらから読めます。

https://ncode.syosetu.com/n5113mk/


※アプリをご利用の方は検索画面で Nコード『n5113mk 』と検索していただくか、作者マイページの「活動報告」から直接お越しいただけます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。