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森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第80話:最深部の主

地下回廊を護る青白い結晶の巨獣を退けた三姉弟は、古代遺跡の最深部へと通じる静寂の回廊を歩んでいた。


三葉が点滅させる明かりの魔法が、何千年間も誰の目にも触れられることのなかった古びた石壁を淡く照らし出す。


壁面に刻まれた精巧な紋様は、下層へ向かうにつれてより複雑に、そして禍々しい色彩を帯び始めていた。


「ここから先は、これまでの階層とは空気がまるで違うね」


三葉が静かに足を止め、重く湿った空気の中に漂う魔力の奔流を感じ取る。


「そうね。肌に触れるだけでピリピリとした重圧を感じるわ。奥にいる魔物の強さが伺えるわね」


一葉が素手のまま優雅に佇み、呼吸を静かに整えた。


「ふふっ、どんなに強い相手が出てきたって、三人で力を合わせれば絶対に負けないよ!」


二葉が木剣の柄をぎゅっと握り直し、頼もしく胸を張る。


回廊を突き進んだ三人の視界が開け、巨大な黒銀の扉が立ちはだかった。


扉の表面には幾重にも重なる重厚な封印の術式が施されている。


三葉が扉の表面にそっと手を触れると、日頃の生活魔法で養った魔力操作と自身のスキルを滑らかに応用し、何百年も固く閉ざされていた古代の構造を瞬時に解除してみせた。


ゴゴゴゴゴ……と、腹に響くような重低音が広間に轟き、巨大な黒銀の扉がゆっくりと左右に開かれていく。


扉の向こうに広がっていたのは、見上げるほど高い天井を持つドーム状の巨大な地下神殿だった。


神殿の中央、石造りの祭壇の前に鎮座していたのは、かつてこの遺跡全体を統括し、周辺地域の地脈すら食い荒らしていたとされる古代の超大型魔獣『アビス・キマイラ』だった。


三つの禍々しい頭を持ち、全身を漆黒の鉱石結晶と圧倒的な密度を誇る重装甲で固めたその姿は、まさにこのダンジョン最深部に君臨する絶望の象徴だった。


ギィィィィンッ!


三姉弟の侵入を察知したアビス・キマイラが、鼓膜を狂わせる高周波の咆哮を叩きつける。


それと同時に、巨体の表面を覆う漆黒の結晶が一斉に赤く輝き、神殿全体を埋め尽くすほどの高密度な魔力弾が全方位に向けて一斉に放たれた。


回避の隙すら与えない、完全なる殺意の弾幕。


「させるかぁっ!」


二葉が速攻で最前線へと躍り出ると、古びた石畳に強固に両足を踏み込んだ。


「二生の根張!」


二葉の足音が高らかに響いた瞬間、彼女の足元から目に見えない無数の根がスッと広がり、広大な神殿の地下深く存在する堅固な大地そのものと固く一体化する。


ドズゥゥゥゥンッ!


猛烈な落雷のような衝撃音とともに、無数の魔力弾が二葉の身体を直撃した。


しかし、二葉の身体は一ミリたりとも後退しない。


見上げるような威力の衝撃すべてが二葉の脚を経由して大地へと綺麗に逃がされ、彼女は木剣一本で全ての攻撃を完璧に受け止めてみせた。


「今よ、二葉の作り出した隙に!」


長女の一葉が静かに踏み出し、空中で指先を舞わせる。


まるで繊細な蔓を巻きつけていくかのように優雅に空間を這う指の動き。


その滑らかな動作に応じるように、追撃を仕掛けようとしたアビス・キマイラの三つの頭の動きがぐにゃりと歪められた。


事象の歪みによって魔力の制御が狂わされ、巨獣の体勢が大きく崩れる。


「仕上げは僕がやるよ」


三葉が二葉と一葉が作り出した一瞬の隙間を逃さず、影のように滑らかにアビス・キマイラの巨躯へと滑り込んだ。


そして、その漆黒の装甲にそっと自らの手を触れさせる。


「三途の葉落」


触れた瞬間、神殿の重苦しい空気が一変した。


アビス・キマイラの全身を覆っていた無敵の装甲が、恐ろしい速度で黒ずみ、サビと風化の現象に侵されていく。


バリバリバリッという乾いた音とともに、神話級の硬度を誇る鎧が一瞬にして古びた砂と脆い灰へと変わり、その場にガラガラと崩れ落ちた。


最深部の主は悲鳴を上げる間もなく、全身が砂の城のように崩壊し、サラサラとした枯れ葉の灰となって消滅していった。


静寂。


強大な主が倒された神殿には、荒れ狂っていた魔力の残り香も消え去り、澄んだ静かな空気が満ちていた。


「ふう……やったね! 二人とも、怪我はない?」


二葉が根張りを解除し、汗を拭いながら爽やかに笑った。


「ええ、みんなの息がぴったりだったわ」


「うん、最高だったよ」


一葉と三葉も互いに顔を見合わせ、満足そうに微笑み合った。


数日後。


無事に地上へ帰還し、ギルド本部に足を踏み入れた三姉弟を待っていたのは、報告書を前に驚愕するギルドマスターと高位冒険者たちの姿だった。


『黒銀の地下迷宮』の未開エリアと最深部の主を、怪我一つなく短期間で踏破したという驚くべき実績。


「あの最難関エリアの主を、カフェ上がりのBランクパーティーが無事に討伐して帰ってきただと……!?」


「嘘だろ……あいつら、重装備すらなしで手ぶら同然で挑んでいたんだぞ!?」


かつて彼らを「カフェの雑用係」と見下していたベテラン冒険者たちが、これまでの無礼を恥じるように次々と息を呑み、感心と尊敬の眼差しを向けてくる。


ギルドマスターは震える手で新しい金色のプレートを取り出し、三姉弟へ向けて恭しく差し出した。


「見事な活躍だった。君たちの確かな実力と大きな功績を正当に評価し、本日をもってパーティー『グリーン・リーフ』を――『Aランク冒険者』へ昇格とする!」


その瞬間、ギルド内に割れんばかりの大きな歓声と温かい拍手が巻き起こった。


一歩一歩、自分たちの力と絆で階段を上って掴み取ったAランクの称号。


三姉弟は気負うことなく、誇らしく微笑み合った。


「やったね、ひと姉、三葉ちゃん! またひとつ上に行けたよ!」


「ええ、よく頑張ったわね、二葉、三葉。でも、調子に乗らずにこれからも地道に進みましょう」


「うん。まずはカフェに帰って、お父さんとお母さんに報告しよう!」


着実に実力を証明し、Aランク冒険者へと成長した三姉弟。


変わらない温かな家族の絆を胸に、彼らは誇らしい足取りで、大好きな我が家へと帰路につくのだった。

【次回から不定期(1日数話まとめて)更新になります!】


いつも『森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜』をお読みいただきありがとうございます!


誠に勝手ながら、次回より「不定期で1日数話ずつのまとめ更新」にスタイルを変更させていただきます。


一度によりたくさんのエピソードを楽しんでいただくとともに、より多くの方に本作を知ってもらうための挑戦です!

執筆ペースを整え、より面白い展開をお届けできるよう頑張りますので、ぜひブックマークや更新通知をして待っていただけると嬉しいです。


引き続き応援よろしくお願いいたします!


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