第79話:古代遺跡の深層、見え始めた絆の形
ミミック・キングの群れを退けた三姉弟は、宝物庫の奥からさらに下層へと続く古びた石段を進んでいた。
壁面に等間隔で並ぶ燭台に三葉が次々と火を灯していく。
その温かな明かりが、何千年も放置されていた冷たい石畳を静かに照らし出していく。
「宝物庫を抜けたのに、まだまだ下に続くんだね。この遺跡、いったいどこまで広いんだろう」
二葉が木剣の柄からそっと手を離し、伸びをするように肩を回した。
「古代の文献によると、この一帯はかつて地脈の強いエネルギーを利用して巨大な研究施設が築かれた場所らしいわ。最深部には、当時の技術の結晶が眠っているかもしれないわね」
一葉が、周囲の石壁に刻まれた美しい浮き彫りを静かに観察する。
「うん。それに、さっきから地下へ行くほど空気中の魔力密度が急激に濃くなっているよ。気をつけて、ここから先はこれまでの魔物とは格が違う個体が出てくるはずだ」
三葉が手を軽く開いたまま、周囲の空間に漂う魔力の流れを慎重に探った。
長い石段を降りきった先は、広大な地下回廊になっていた。
天井が高く、両脇には等間隔で古代の騎士を模した巨大な石像が並んでいる。
その不気味な静寂を切り裂くように、前方の暗がりから低く重い足音が響いてきた。
ドスン……ドスン……。
「みんな、止まって! 何か来るよ!」
三葉の鋭い声と同時に、回廊の影から姿を現したのは、全身が青白い巨大な魔力石で形作られた体高四メートルの守護獣『クリスタル・ガーディアン』だった。
その巨腕には神話級の硬度を誇る大剣が握られ、胸元に埋め込まれた核心の魔結晶が禍々しい閃光を放っている。
「一筋縄ではいかない相手だね! でも、ひと姉も三葉もいるなら負けないよ!」
二葉が素早く最前線へと飛び出した。
「二生の根張」
足音を響かせた瞬間、二葉の足元から目に見えない無数の根がスッと広がり、遺跡の堅固な大地と完全に一体化する。
ズアァァンッ!
守護獣が力任せに振り下ろした巨大な大剣の斬撃が二葉の掲げた木剣を直撃する。
だが、二葉の身体は微動だにしない。
凄まじい衝撃のすべてが足元の大地へと綺麗に逃がされ、守護獣のほうが逆に強烈な反発を受けてバランスを大きく崩した。
「今よ、二葉の作り出した隙に!」
長女の一葉が優雅に空中で指先を舞わせる。
蔓を巻くように空間を這うと、体制を立て直そうとした守護獣の巨体の軌道がぐにゃりと歪められ、大剣を持ち上げる動きが完全に封じられた。
「仕上げは僕がやるよ」
三葉が二葉と一葉の完璧な連携が生み出した隙間を縫い、守護獣の巨足へと素早く滑り込む。
そして、その青白い魔力石の装甲に自らの素手をそっと触れさせた。
「三途の葉落」
触れた瞬間、硬質な魔力石の表面が凄まじい速度で黒ずみ、恐ろしい風化の現象に侵されていく。
バリバリという乾いた音とともに、強固な装甲が古びた砂と脆い灰へと変わり、その場に崩れ落ちた。
守護獣は支えを失い、ガラガラと音を立てて完全に崩壊していく。
「ふう、私たちのコンビネーションなら完璧だね!」
二葉が根張りのスキルを解除し、額の汗を拭いながら誇らしそうに笑った。
「ええ、三人で助け合えば、どんな強敵も乗り越えられるわ」
一葉が優しく微笑む。
「うん、ひと姉、ふた姉のサポートのおかげだよ」
三葉も深く頷いた。
戦いが終わり、静寂を取り戻した地下回廊。
その先にある最深部への扉が、静かに三姉弟を待ち受けていた。
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