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森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第74話:黒銀の地下迷宮

穏やかな昼下がりのカフェ『グリーン・リーフ』に、カランコロンと激しいベルの音が響き渡った。


飛び込んできたのは、息を乱したギルドの受付員だった。


「一葉ちゃん、二葉ちゃん、三葉くん! 大変だ!」


「どうしたんですか、そんなに慌てて?」


長女の一葉が静かに立ち上がる。


「北の岩山で崩落が起きて、未知のダンジョンが出現したんだ。真っ先に入った先発隊と連絡が途絶えた! 救助に向かってほしい!」


「なんですって……!?」


配膳の手を止めた二葉が、目を見開いた。


「わかりました。すぐに向かいます」


三葉も受付員から地図を受け取ると、素早く二人の姉に向かって頷いて見せた。


「準備しよ! ひと姉、三葉!」


「ええ、急ぐわよ!」


父親の一二三が厨房から駆け出し、特製のポーションが詰まったポーチを三人の腰へ押し当てた。


「気をつけて行っておいで! 三人で力を合わせれば大丈夫だからね」


「「「行ってきます!」」」


現場の岩山は、崩れた巨石と砂塵で覆われていた。

 

ぽっかりと口を開けた暗い洞窟から、冷たく重苦しい風が不気味に噴き出している。


「うわ……なにこの嫌な空気。いつもの洞窟と全然違う……」


二葉が首筋をすくめ、息を呑む。


「気を引き締めて。行くわよ」


一葉を先頭に、三人は闇の中へと一歩を踏み出した。


湿った岩肌を叩く自分たちの足音だけが、静かに響く。

 

静寂の中、歩を進めていた三葉がふと足を止め、天井を見上げた。


「……上!」


直後、黒い影が頭上から舞い降りてきた。


シャアァァッ!


毒液を散らしながら襲いかかってきたのは、人間ほどもある巨大な大蜘蛛の群れだった。


一気に五匹が襲いかかる。


「二葉、受け止めて!」


「了解! スキル――『二生の根張』!」


二葉がグッと踏み込むと、彼女の足元から目に見えない無数の『根』がスッと伸び、巨大な大地そのものと深く一体化した。


ドズゥンッ!


上空から襲いかかってきた二匹の大蜘蛛の激しい体当たりを受け止めるが、二葉の身体は1ミリたりとも後退しない。


大地がすべての衝撃を綺麗に吸収し、ビクともしない要塞と化す。


「よしっ、ビクともしないよ!」


「助かるわ、二葉!」


すかさず長女の一葉が前に出た。


おっとりとした雰囲気を崩さぬまま、空中で空中を撫でるように優雅に指先を動かす。


蔓を巻くようなその指の軌跡に応じるように、周囲の空間と事象がぐにゃりと歪んだ。


襲いかかってきた蜘蛛たちの牙や爪の軌道がぐにゃりと逸れ、威力が完全に削ぎ落とされて無力化される。


「三葉、仕上げを!」


「任せて。スキル『三途の葉落!』」


三葉が静かに手を伸ばし、無力化されて身動きの取れない大蜘蛛の甲殻にそっと触れた。


触れた瞬間、蜘蛛の生命と存在のライフサイクルが凄まじい速度で加速し、一瞬にして乾いた『枯れ葉』のようにボロボロと風化していく。


一瞬にして三匹の大蜘蛛がサラサラとした灰となって崩れ去り、残りの個体も恐怖をなして逃げ出していった。


「ふう……助かったよ、三葉の分解能力」


二葉が足元の根張りを解除し、胸を撫で下ろす。


下層へ向かう階段の先には、打ち捨てられた松明や、砕け散った剣の破片が転がっていた。


「これ……調査隊の人たちの備品だわ」


一葉が破片を拾い上げ、唇を噛みしめる。


「早く追いつかないと……!」


焦って前へ進もうとする二葉の肩を、一葉がそっと押さえた。


「待って二葉。足元を見て」


「え……?」


床の岩肌をよく見ると、踏むと作動する巧妙な罠が仕掛けられていた。


「危なかった……ありがとう、ひと姉」


「焦る気持ちは分かるけど、慎重に行きましょう」


一葉が再び優しく指を這わせる動作をすると、罠の仕掛けそのものの事象が歪み、静かに不発化していく。


慎重に、だが着実に暗闇を降りていく三人。


そして、最奥に位置する巨大な鉄の扉の前にたどり着いた時だった。


ドズン……! ドズン……!


地響きとともに、扉の向こうから激しい衝撃が伝わってきた。パラパラと天井から砂利が落ちてくる。


「く……ッ! なんの音……!?」


二葉が身構える。


「中に誰かいるわ! 間違いない!」


一葉の目が険しく光る。


「開けるよ!」


三葉が重い扉の表面に手を触れ、スキル『三途の葉落』を発動。


扉の古い金属と蝶番を急速に老朽化・腐食させると、ボロボロになった鉄扉がガラガラと崩れ落ちた。


開いた大広間の奥。


そこには、怪我を負って倒れ込む先発隊の姿と、彼らを見下ろす体高三メートルを超える岩石の巨獣――『ガーディアン・ロック』が立っていた。


巨獣が赤い目を光らせ、重苦しいクラブを持ち上げる。


「そこまでよ!」


一葉が指先を優雅に構え、先発隊と巨獣の間へと躍り出た。


「みんな、無事!? 今助けるからね!」


二葉も大地に根を張る構えをとり、三葉とともに巨獣に対峙する。


暗い迷宮の底で、それぞれのスキルと三姉弟の絆を試す戦いの火蓋が切って落とされた。

「少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【評価】(★★★★★)で応援していただけると励みになります!」


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