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森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第70話:凱旋の報告

世界樹の最深部を覆っていた黒紫色の澱みが消え去り、根の回廊には瑞々しい翡翠色の光が満ちあふれていた。


かつて呼吸を止めていた太古の主根は、清らかな魔力を勢いよく汲み上げ、霊峰全体、そして大陸の隅々へと巡らせ始めている。


肌を刺すようだった重苦しい圧迫感は消え去り、吹き抜ける風には爽やかな森の匂いが混ざっていた。


「すごい……! 世界樹の根が、こんなに綺麗な光を取り戻したよ!」


二葉が木剣を鞘に納め、眩しそうに主根を見上げる。


「うん。地脈の滞りが完全に消えたから、これで下界の干上がっていた谷や、不調に陥っていた宿場町エルムの井戸も完全に元通りになるよ」


三葉が手帳に状況を書き留めながら、安堵したように表情を緩めた。


「三人とも、本当に……本当にありがとう」


『大樹の護り人』の青年シルヴァンが、三人の前で深く頭を下げた。


その目には、長年の苦難から解放された感謝の涙が浮かんでいる。


「あなた方『グリーン・リーフ』の誠実な手入れがなければ、世界樹は力任せの破壊によって傷つき、取り返しのつかない災厄が大陸を襲っていたでしょう。我が一族を代表し、心からの感謝と敬意を捧げます」


シルヴァンは胸元から、白銀の彫刻が施された見事な木製の勲章を取り出し、一葉の手へと手渡した。


「これは『大樹の護り手』の証です。これを持つ者は、我が一族と世界樹の加護を永久に受け取ることができます。どうかお納めください」


「そんな……大切なものを、ありがとうございます」


一葉は両手で大切に受け取り、胸元にぎゅっと抱きしめた。


一方、その光景を壁際で這いずりながら見ていたのは、Bランクパーティ『銀翼の獅子』のラグナルたちだった。


彼らの自慢だった豪華な全身鎧は見る影もなく叩き割られ、高価な魔導杖も折れ曲がっている。


必死で手に入れようとした功績も、地位も、すべて目の前で「ただのCランクの子供たち」として見下していた三姉弟に奪われる形となった。


「くそっ……俺たちの……俺たちの功績が……」


ラグナルが悔しげに地面を叩き、血の混ざった唾を吐き捨てる。


二葉がそんなラグナルの元へゆっくりと歩み寄り、腰に手を当てて上からニッコリと微笑みかけた。


「ねえ、Bランクのすごい冒険者さんたち? 散々『雑用専門のCランク』とか『足手まとい』とか威張っていたのに、最後は私たちに助けられて、成果も持っていかれちゃってどんな気分?」


「ぐっ……ぅ……っ!」


「力任せに威張り散らすだけじゃ、本当の強さとは言えないんだよ。これからはもっと反省して、地道に修行し直したら?」


二葉の容赦のない追撃に、ラグナルたちは恥ずかしさと惨めさで顔を真っ赤にし、ただ無言でうつむくことしかできなかった。


かつて街で誇っていた『銀翼の獅子』の名声は、今や完全に潰れ去ったのだ。


「さあ、用事が済んだなら下山しましょう。あなた方の惨めな姿をこれ以上ここに晒されても困ります」


シルヴァンの冷ややかな一言に押されるように、ラグナルたちはほうほうの体で、這うようにして根の回廊を逃げ出していった。


「ふふ、スカッとした!」


二葉が八重歯を見せて満足そうに笑う。


「ふた姉、あんまり追い詰めちゃダメだよ。でも……スカッとしたのは本当だけどね」


三葉もくすりと笑った。


「さて、私たちも街へ戻りましょうか。お父さんとお母さんが、きっとお店で待っているわ」


一葉の言葉に、二人は元気よく「うん!」と頷いた。


数日後。


三人が無事に白嶺山脈を越え、北方の拠点であるギルド支部へと戻ってくると、ギルド内は異様な熱気に包まれていた。


「おい……聞いたか!? あの危険極まりない『世界樹の目詰まり』を解決したのが、昇格したばかりのCランクパーティ『グリーン・リーフ』だって話だぞ!」


「マジかよ! あの高慢ちきなBランクの『銀翼の獅子』が返り討ちに遭って逃げ帰ってきた大異変だろ!?」


「なんでも、一傷も負わずに一発で綺麗にしちまったらしい!」


一葉たちがドアを開けて足を踏み入れた瞬間、ギルド内にいた冒険者たちから一斉に割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。


「すごいぞ、一葉! 二葉! 三葉!」


「あの大怪異を解決するなんて、名実ともにBランク……いや、Aランク並みの手腕だ!」


かつて新参者のCランクとして見られていた三人は、今やギルド全体から尊敬と憧れの眼差しを向けられる存在へと至っていたのだった。


カウンターの奥から現れたギルドマスターのヴァルターが、髭を蓄えた顔をほころばせながら歩み寄ってくる。


「やあ、よくぞ無戻ったな、一葉。……ふふ、シルヴァン殿から連絡は受けているぞ。世界樹の不調を完璧に解決し、大陸の危機を救ってくれたそうだな」


「ヴァルターさん。私たちはただ、自分たちの出来ることをしただけです」


一葉が謙虚に微笑むと、ヴァルターは満足そうに大きく頷いた。


「相変わらず欲がないな。だが、ギルドとしてはこの偉業を放っておくわけにはいかん。本部からの特例通達だ――森羅一葉、二葉、三葉。本日をもって、君たちを『Bランク冒険者』へと昇格とする!」


「「「ええっ!? 本当に!?」」」


三人が目を丸くする中、ヴァルターの手から手渡されたのは、鈍い重厚な光を放つ新しいBランクの金属プレートだった。


「おめでとう。君たちの『生活魔法』の凄さは、もう誰も疑わんよ」


ギルド内に再び大きな歓声が響き渡る。


二葉は新しいプレートを握りしめ、嬉しそうに胸を張った。


「やったね、ひと姉! 三葉! ついにBランクだよ!」


「うん。僕たちも評価された証拠だね」


「ふふ、本当に嬉しいわ」


一葉は胸元の新しいプレートと、大樹の護り手から受け取った木製勲章を優しく撫でた。


「さあ、ギルドの手続きが終わったら、一刻も早く『グリーン・リーフ』へ帰ろう。お父さんの淹れた美味しいコーヒーと、お母さんの温かい料理が待っているわ!」


「「おーっ!!」」


実力を見せつけ、見事にBランクへと昇格した三人は、誇らしげに胸を張り、大好きな家族が待つ我が家への帰路を駆け出していくのだった。

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