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森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第56話:旧魔導研究所の遺恨と、不気味な脈動

白銀の雪を覆い隠すように、どろりと濃密な紫黒色の魔煙が空を覆っていた。


森羅家の三姉弟——一葉、二葉、三葉の三人が辿り着いたのは、白嶺山脈の山頂付近、断崖絶壁にへばりつくように建つ巨大な石造りの廃墟群だった。


『旧魔導研究所跡地』


かつての大戦期、禁忌とされる人造魔導兵器や毒素の研究が行われていた不祥の地。


外壁は黒く変色し、長年の風雨に晒されて荒廃しているものの、建物の奥深くからは地鳴りのような「ドクン……ドクン……」という不気味な脈動が漏れ聞こえていた。


「すごい圧迫感……。息をするだけで、喉の奥がチリチリ焼けるみたいだね」


二葉が木剣の柄を固く握りしめ、眉をひそめる。


「うん。周囲の魔力濃度が異常だよ」


三葉が周囲の気配を警告した。


「研究所の地下深くに放置された『人工魔導炉』が、大地の地脈から過剰にエネルギーを吸い上げ、溜め込んだ不純物と共に増殖・暴走させている。王都の『魔力腐敗症』やサフィールの『黒砂』の元となった技術の、まさに根源と言える場所だね」


一葉は胸元の緑のペンダントをそっと包み込んだ。


ペンダントの結晶は、建物の奥から放たれる過剰な悪意と毒素に反応し、激しく熱を帯びながらチリチリと警告の光を点滅させている。


一葉は二人へ向けて力強く頷いた。


「二葉、三葉、行こう。この場所に遺された過去の悲鳴を止めて、森に静けさを取り戻そう!」


「「はい!!」」


重厚な石造りの大扉は腐食して崩れ落ちており、三人は暗い館内へと足を踏み入れた。


内部は迷宮のように入り組んだ通路が伸びており、壁面にはひび割れた魔導管から黒い粘液が垂れ落ちていた。


足を踏み出すたびに、足元から不気味な湿った音が響く。


「気をつけて。何か、地下から這い上がってくるわ」


一葉が静かに注意を促した、その瞬間だった。


ガサガサガサッ……!!


暗闇の奥から、無数の黒い影が這い出してきた。


それは、かつて実験段階で棄てられた魔導人形(ゴーレム)の残骸に、過剰な不純魔力と黒い粘液が取り憑いて動いている「腐食の自動人形群」だった。


錆びついた金属の刃や鋭い爪を光らせ、正気を失った動きで三人へと群がってくる。


「ギ……ギギギ……侵入者……排除……」


「ただの機械じゃない……! 毒素の塊が動力源になって動かされているんだ!」


二葉が素早く前線へと飛び出した。


「壊すだけじゃ意味がないよね! 【二生の根張】——」


ドガガガガッ!


二葉が木剣を床の石畳へ突き立てると、亀裂から解き放たれた温かな緑の魔力根が、幾重にも交差して自動人形たちの足元を網の目のようにすくい上げた。


「ギギッ!?」


強力な破壊力で押し潰すのではなく、人形たちを動かしている「荒々しい不純魔力の運動エネルギー」をしなやかに受け止め、根を通じて床下の大地へと逃がしていく。


二葉の包み込むような魔法により、前進しようとしていた十数体の人形たちが一瞬でその場に固定された。


「ふた姉、ナイス! 続いて動力核の解体に入るよ!」


三葉が指先を滑らせた。


「【三途の葉落】——!」


三葉の瞳から放たれた精巧な分解波動が、固定された人形たちの胸奥にある「紫黒色のコア」へと一直線に突き刺さる。


人形の金属フレームには一切の傷をつけず、核にまとわりついて暴走させていた人工毒素の分子結合だけを、髪の毛一筋の狂いもなく正確に切断していった。


バリバリバリッ……!


不気味な黒いモヤが人形たちの身体から噴き出し、空間へと霧散していく。


「そして……還りなさい、静かな道具の姿へ! 【一輪の秒芽】!」


仕上げに一葉が空中を通じて蔓を巻くように優雅に指を動かした。


胸元のペンダントから解き放たれた澄み切った緑の保持光が、二葉の「脈動鎮静」と三葉の「毒素分離」を逃さず捉え、人形たち全体へと時間ごと強力に定着・固定させた。


シュゥゥゥ……!


人形たちの瞳に灯っていた不気味な赤光が静かに消え、ただの錆びついた古い金属の置物へと戻り、その場にカシャンと崩れ落ちた。


「すごい……! 人形を破壊せずに、中の毒素だけを綺麗に抜き取れたよ!」


二葉が汗を拭いながら笑みを浮かべる。


「うん。僕たちは、相手が生物であれ魔導兵器であれ、調和を乱す『不純物』だけを狙い撃ちにして無力化できるんだ」

三葉が安堵の息を吐いて目を閉じる。


しかし、一葉の表情は引き締まったままだった。


胸元のペンダントが、さらに強烈な脈動を地下深くから感じ取っていたからだ。


「……本番はここからよ。地下の最深部で、暴走した魔導炉が私たちの気配を察知して、魔力を急激に膨れ上がらせているわ」


一葉は深く続く地下階段の暗闇を見つめた。


三姉弟は、過去の過ちと悪意が眠る最深部へ向け、迷いのない足取りで階段を降りていくのだった。


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