↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/83

第54話:北方の影と、深まる三位一体の絆

『グリーン・リーフ』の店内に、シナモンとリンゴを煮詰めた甘い香りと、挽きたての香ばしいハーブコーヒーの薫香が満ちていく。


「ふはぁ〜っ……! お母さん特製の煮込みリンゴのタルト、温かくて甘くて、身体の底から力が湧いてくるよ!」


二葉が焼きたてのタルトをほお張りながら、幸せそうに頬を緩ませる。


「気をつけて食べなさい、二葉。火傷をしてしまうわ」


一葉は優しく苦笑しつつ、空中を通じて蔓を巻くように優雅に指を動かした。


【一輪の秒芽】——。


手のひらから解き放たれた清廉な緑の保持魔力が、焼き上がったばかりのタルトの絶妙な温度と食感、そして芳醇な香りをそのまま空間へとしなやかに定着させていく。


「北方の旧魔導研究所跡地で報告されている『不自然な魔力変異』について、僕たちの魔法を研ぎ澄ませば、どんな歪みであっても完璧に分解・固定できるはずだね。」


「ええ。私たちの三位一体は、ただの雑用魔法の組み合わせじゃないわ。崩れてしまった世界の調和を、元通りに戻すための『約束の形』なんだもの」


一葉は胸元の緑のペンダントとCランクプレートにそっと触れ、力強く頷いた。


昼過ぎ、『グリーン・リーフ』の重厚なドアが開かれ、カランコロンと清々しいドアベルの音が響いた。


入ってきたのは、ギルドマスターのヴァルターと、Bランク冒険者のバルガスだった。


「一葉さん、二葉ちゃん、三葉君。急な訪問ですまない」


ヴァルターの険しい表情に、店内の空気が一瞬で引き締まる。


バルガスもいつもの豪快な笑みを消し、神妙な面持ちでカウンターへ歩み寄ってきた。


「ヴァルターさん、バルガスさん。何か進展があったのですか?」


一葉が尋ねると、ヴァルターは懐から黒い羊皮紙の書簡を取り出し、カウンターの上に広げた。


「北方山脈の旧魔導研究所跡地から、調査に向かったBランクの冒険者パーティーが手負いで戻ってきた。……報告によると、山林地帯の変異はすでに無視できないレベルにまで悪化している」


「Bランクの先輩方が……手負いに!?」


二葉が思わず身を乗り出す。


「ああ」とバルガスが重々しく頷いた。


「怪異の正体は、かつて闇の錬金術師たちが遺した『人工的な魔力毒素の増殖炉』だ。旧研究所の地下深くに放置されていた魔導炉が、過剰な不純物を吸い上げて暴走し、周囲の森や魔物を黒く変異させてやがる。剣や通常の攻撃魔法じゃ、切り刻むそばから毒素が増殖して埒があかねえんだよ」


三葉が手帳を開き、素早くペンを滑らせる。


「やはり……。カルゼル子爵やサフィールのガルシアが使っていた『人工的な魔力凝固剤』と同系統、あるいはその原形となった高濃度毒素ですね。通常の魔力攻撃では、毒素に魔力を吸収されて逆効果になってしまう…」


「その通りだ、三葉君」


ヴァルターは三人の目をじっと見つめた。


「毒素の増殖を止め、暴走する魔導炉を『分解・浄化』できるのは、王国広しといえども君たち三人の『生活魔法の連携』以外に存在しない。ギルド本部から、Cランク冒険者・森羅三姉弟に対し、正式な『特別指名討伐・浄化依頼』が発令された」


ヴァルターから差し出されたのは、金のギルド印が押された最高格の依頼書だった。


一葉、二葉、三葉は顔を見合わせ、言葉を交わすことなく深く頷き合った。


「ヴァルターさん、その依頼、喜んでお受けします」


一葉が凛とした声で宣言する。


「悪意や毒素が遺されていようと、私たちが掃除してみせます。そして、北方の人たちの暮らしと自然を守ってみせます!」


「任せてよ! どんな頑固な汚れだって、私の根っこでバッチリ押さえ込んであげるんだから!」


二葉が木剣の柄を力強く握りしめる。


「僕も旧魔導炉の構造解体パターンはすで把握済みです。完璧に解体してみせるよ!」


三葉が誇らしげに微笑んだ。


その夜。『グリーン・リーフ』の夕食時。


北方の旧魔導研究所への遠征について報告する三人を、父・一二三と母・葉は静かに見守っていた。


一二三がスープカップを置き、重みのある声で語りかける。


「一葉、二葉、三葉。相手がどのような人工の毒であれ、怯む必要はない。三人が暮らしの中で磨き上げてきたものは、守るための力だよ。破壊のための魔導など、調和を貴ぶ三人の足元にも及ばないよ」


「ええ。三人でしっかり声を掛け合って、無事に帰ってくるのよ。温かいご飯を焼いて待っているわ」


葉が優しく三人の手を包み込む。


「はい! お父さん、お母さん!」


一葉は胸元の緑のペンダントを強く握りしめた。

「少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【評価】(★★★★★)で応援していただけると励みになります!」


前作もあわせてお楽しみいただけると嬉しいです!


前作はこちらから読めます。

https://ncode.syosetu.com/n5113mk/


※アプリをご利用の方は検索画面で Nコード『n5113mk 』と検索していただくか、作者マイページの「活動報告」から直接お越しいただけます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。