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森羅家の生活魔法は戦闘不能? 〜カフェの雑用と馬鹿にされた三姉弟、Fランクから最強へ駆け上がる〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第2話:Fランク登録と、カフェ店員への洗礼

朝の静けさが嘘のように活気に満ちた冒険者ギルドのホール。


重厚な木製の扉をくぐると、酒と汗と鉄の匂いが混ざり合った独特の熱気が森羅家の三姉弟を迎え入れた。


「……すごい人だね、ひと姉」


「うん。思っていたよりもずっと賑やかだね」


次女の二葉ふたばが少し緊張した様子で一葉ひとはの袖を引っ張る。長女の一葉は落ち着いた様子でホールを見渡すが、その視線はどこか場違いなほど穏やかだった。


末っ子の三葉みつばは、背中に背負った小さな布包みをそっと持ち直す。


「ふた姉、あまり離れないでね。……僕たち、明らかに浮いてるから」


三葉の指摘通り、周囲の冒険者たちからの視線が集まっていた。


周りは無骨な鎧を身につけた強者や、鋭い剣を携えた戦士ばかり。


それに対して三人は、カフェ『グリーン・リーフ』のエプロンこそ外しているものの、街着のシャツにスカート、スラックスという軽装だ。


手に持っているのは、父から渡された古い小剣と小さな鍋の蓋のような盾、そしてただの木の枝である。


「受付はあちらみたいだね。行ってみようか」


一葉を先頭に、三人は「新規登録受付」のカウンターへと向かった。


受付に座っていたのは、少し疲れ気味な表情をした女性職員だった。


一葉たちが前に立つと、彼女は目を丸くして三人を見比べる。


「……いらっしゃいませ。あの、本日のご用件は? ブックカフェの出張販売……ではなさそうですね?」


「はい。冒険者ライセンスの新規登録をお願いしたくて伺いました」


一葉が丁寧にお辞儀をしながら答えると、受付カウンターの隣にいた大柄な男の冒険者が、豪快に吹き出した。


「ハハハ! おいおい冗談だろ、お姉ちゃん! カフェの店員さんが遊び半分でダンジョンに入る気かよ?」


男の不躾な笑い声に引きずられるように、周囲の冒険者たちからもクスクスとした嘲笑が漏れ聞こえてくる。


「見たかよ、あの装備。小枝と鍋の蓋だぜ?」


「おままごとの延長かい? 最初のスライムに服を溶かされて泣いて逃げ帰るのが目に見えてるな」


二葉がカッと頬を赤くして身構えようとしたが、三葉がそっとその制服の裾を引いて制した。


一葉は特に気にした様子もなく、柔らかな笑みを浮かべたまま受付職員に向き直る。


「登録料はこちらで合っていますでしょうか?」


「あ、はい……お預かりします。では、こちらの魔導水晶に順番に手をかざしてください。適正属性と初期スキルを計測します」


職員に促され、まずは一葉が水晶に手を乗せた。


水晶が淡く発光し、羊皮紙に文字が浮かび上がる。


『所持スキル:【一輪の秒芽ファースト・ブルーム】(生活・補助系)』


「……ええと、一葉さんのスキルは、植物の鮮度を保つ生活魔法ですね」


「はい。普段はコーヒー豆の品質維持に使っています」


続いて二葉が手をかざす。


『所持スキル:【二生の根張ツイン・ルーツ】(生活・身体系)』


「二葉さんは……踏ん張りを効かせる力仕事用の生活魔法……」


「はい! お店の業務用冷蔵庫を移動させるときに重宝してます!」


最後に三葉が手をかざした。


『所持スキル:【三途の葉落エンド・オブ・リーフ】(生活・清掃系)』


「三葉さんは、雑草や生ゴミを分解する清掃魔法……ですね」


「庭の手入れとゴミ出し担当なので」


受付職員はハァと小さなため息をついた。周囲の冒険者たちは呆れ顔だ。


「……三人とも、戦闘用の攻撃魔法や剣技スキルは一切ありません。危険度の一番低いFランクからのスタートとなりますが、本当にダンジョンへ入るおつもりですか? 正直にお伝えすると、薬草採取すらまともにこなせるか怪しい構成ですが……」


「はい。無理のない範囲で、三人で協力してやってみます。よろしくお願いいたします」


一葉は全く悪びれることなく、発行されたばかりの銅色のFランクプレートを受け取った。


「ひと姉、あいつら言いたい放題言ってくれたね……」


ギルドの建物を出たあと、二葉が悔しそうに口を尖らせる。


「いいじゃないか、ふた姉。変に期待されて危険な仕事を押し付けられるよりずっといい」


三葉は冷静に自分のプレートをポケットにしまった。


「二人とも、怪我をしないことが一番だからね。まずは最浅層で、安全に薬草を探してみましょう」


一葉が二人に向かって優しく微笑む。


生活魔法しか持たない無謀な三姉弟——周囲からはそう見られていた三人だったが、彼ら自身もまだ知らなかった。


この「ただの生活魔法」をどう使うかという彼らの工夫が、やがて冒険者ギルドの常識を根底から覆すことになるということを。

「少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【評価】(★★★★★)で応援していただけると励みになります!」


前作もあわせてお楽しみいただけると嬉しいです!


前作はこちらから読めます。

https://ncode.syosetu.com/n5113mk/


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