↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/42

第16話:試行錯誤と、予期せぬ遭遇

商業組合による査察の一件を経て、『グリーン・リーフ』にはいつもの穏やかな日常が戻っていた。


悪質な虚偽告発を行ったゴルド商会には組合から厳しい業務停止命令と罰金が科されたらしく、もう店に嫌がらせをしに来る気配もない。


朝の光が差し込む厨房で、一葉、二葉、三葉の三人は並んで仕込み作業に没頭していた。


「二葉、シトラスのジュレ、固まり具合はどう?」


一葉がボウルの中を覗き込みながら声をかける。


「うん、いい感じ! でも、もうちょっとハーブの香りを均一に残したいなぁ……」


二葉が首を傾げ、泡立て器の手を止めた。三葉が手帳を開き、メモと見比べながら提案する。


「ひと姉の【一輪の秒芽】で茶葉の香りを固定して、僕の【三途の葉落】でゼラチンの中の小さな気泡を取り除いてみようか。ふた姉が冷やしながら混ぜてくれれば、滑らかになると思う」


「それ、いいね! やってみよう!」


二葉が氷水の入ったボウルをセットした。


試作のジュレタルトを完成させた後、二葉が大きくストレッチをした。


「よし! それじゃあ開店前に、トウカ草を追加で摘みに行ってくるね!」


「うん。最浅層の近くなら、僕たちだけでも十分に採取できるからね」


三葉が採取用の小籠と手帳を抱え、二人は一葉に見送られて森へと向かった。


一葉は二人の背中を見送ると、カウンターの拭き掃除とテーブルセッティングを始める。


奥の厨房では、一二三と葉が珈琲豆の選別と焼き立てパンの準備を進めていた。


青々とした木々に包まれた森の最浅層。日当たりの良い大木の下に、目当てのトウカ草が群生していた。


ほのかな甘みと爽快感のある香りを漂わせる緑の葉を、二人は手際よく摘み取っていく。


「よし、これくらいあれば今日の分のタルトには十分足りるね」


二葉が手についた土を払い、息を吐いた、その時だった。


ザザッ……!


近くの茂みが激しく揺れ、低い唸り声が森に響いた。


「……! ふた姉、下がって!」


三葉が素早く手帳を構え、二葉の前に躍り出る。


茂みを押し分けて姿を現したのは、体長二メートルを超える大きなイノシシ型のモンスター——『ワイルドボア』だった。


最浅層には本来現れないはずの中型モンスターであり、上層の縄張り争いに敗れて迷い込んできたらしい。


ワイルドボアは二人を見つけると荒い息を吐き、角を剥き出しにして突進してきた。


「どうしよう、逃げる!? 背中を見せたら追いつかれるよ!」


「私が足止めする! 三葉は横に避けて!」


二葉はしっかり大地に足をつけた。


【二生の根張】を発動させ、踏ん張りを効かせる。


「ぐっ……うあぁぁっ!?」


正面から突進を受け止めようとした二葉だったが、ワイルドボアの質量と速度を殺しきれない。


ドオンっという激しい衝撃とともに、二葉の身体は泥を削りながら数メートル後ろへ押し込まれた。


「ふた姉!【三途の葉落】……っ!」


三葉が慌てて手帳を振り、ワイルドボアの足元の雑草や湿った腐葉土を分解して摩擦を奪う。


しかし、突進の勢いが強すぎて、巨体は滑りながらも二人に向かって勢いよく倒れ込んできた。


「きゃああっ!?」


「うわっ! 避けろっ!」


間一髪で左右に飛び退いた二人だったが、ワイルドボアはそのまま勢いを殺しきれず、すぐ後ろにあった大木へと猛スピードで激突した。


ドゴォォン!!


凄まじい音とともに落ち葉が舞い散る。


自らの突進の勢いと三葉の魔法で足元が滑ったことが重なり、ワイルドボアは大木に頭部を強く打ち付け、その場に倒れ込んだ。


「はぁ……はぁ……びっくりした……死ぬかと思ったよ……」


二葉が胸を押さえ、泥だらけになった服を払いながら地面にへたり込んだ。受け止めようとした腕には、擦り傷と青あざができている。


「ふた姉、傷を見せて。【三途の葉落】で土埃と雑菌だけを取り除くよ」


三葉が荒い息を整えながら手帳を開き、魔法をかざす。


傷口に付着していた泥や不純物が綺麗に消え去り、清潔な状態になった。


三葉はカバンから薬膏と包帯を取り出すと、手際よく二葉の腕に巻き付けた。


「ありがとう、三葉……。ふぅ、生活魔法をそのまま使うだけじゃ、急なモンスターには全然太刀打ちできないね」


「うん。魔法の使い方や間合いの取り方、連携をもっと考えないと、次は本当に危ないよ」


二人は顔を見合わせた。


「……ところで、このワイルドボア、気絶してるだけだけど……どうする?」


三葉が横たわる巨体をじっと見つめた。


「放置したら起きて街の方に行っちゃうかもしれないし……それに、お肉はすごく新鮮そうだよね。三葉の分解魔法で、血抜きと臭み取りだけでも試してみる?」


「やってみる。……【三途の葉落】」


三葉が集中し、肉の周囲の不純物や体表の汚れ、血留まりを分解・除去していく。


本格的な解体までは届かないが、調理しやすい綺麗な赤身肉の状態に持ち込むことができた。


二人は肉を魔法の保存袋に詰め込み、街へと戻った。


午前十時。『グリーン・リーフ』の真鍮のベルが涼やかな音を響かせた。


「いらっしゃいませ……!」


店内は、新作の『トウカ草とシトラスのジュレタルト』を楽しむ客たちの笑顔で溢れていた。


「美味いなぁ! このジュレの爽やかさとハーブの香りがたまらんよ!」


冒険者のバルガスや商業組合のヴァルターたちも、大満足でタルトを頬張っている。


厨房の奥では、着替えと手当てを済ませた二葉と三葉が、一葉と向き合っていた。


「二人とも、大きな怪我がなくて本当に良かったよ……」


一葉が二人を見つめる。


「ごめんね、ひと姉。最浅層くらい平気だって、少し油断してたよ」


二葉が反省したように視線を落とす。


「僕も、魔法の威力を過信してた。これからはもっと、考えないとダメだね」


三葉も手帳を小さく握りしめながら言った。


「ううん、二人とも無事で帰ってきてくれたんだもの。……持ち帰ってくれたお肉、三葉が綺麗に不純物を除いてくれたおかげで、すごく良い状態だよ」


一葉が微笑み、仕込み台に置かれたボア肉を見せる。


「これなら、明日は『ボア肉と野菜のスープパスタ』が作れそうね。二人が持ち帰ってくれた材料だもの、美味しく作ろう」


「うん!」「頑張ろう!」


厨房に三人の声が重なり、店内には今日も香ばしい焼き立てパンとハーブの香りが穏やかに漂っていた。

「少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【評価】(★★★★★)で応援していただけると励みになります!」


前作もあわせてお楽しみいただけると嬉しいです!


前作はこちらから読めます。

https://ncode.syosetu.com/n5113mk/


※アプリをご利用の方は検索画面で Nコード『n5113mk 』と検索していただくか、作者マイページの「活動報告」から直接お越しいただけます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。