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彼女を奪われても何も言わなかった俺、イケメンがクラスで自慢した結果なぜか1軍女子に距離を置かれて孤立した  作者: 白金豪


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第8話 陽キャに誘われる

「前川、ちょっといいかな? 」


 1人の男子が自分の席から立ち上がる。

 席に座ってスマートフォンを注視する前川さんに声を掛ける。


「なに? 」


 前川さんはスマートフォンから意識を外す。

 文字を入力する手を止める。

 顔を上げて声の主に視線を向ける。

 渡辺に対するような冷たい態度や無視などはしない。

 普通の対応をする。


「やっ! 」


 話し掛けた男子はニコッと爽やかな笑みを浮かべる。

 愛嬌のある笑顔だった。


 同じクラスメイトの桜井隼人。

 金髪の爽やかな高身長イケメン。

 クラスの中心でスクールカーストも高い。

 確か、渡辺と同じグループに所属していたはず。

 だが、前の休み時間の辺りから話している姿を見掛けない。

 現に渡辺は孤立して自分の席にポツンッと寂しそうに座る。

 入れて欲しそうにチラチラと前川さんや桜井に視線を送るほどだ。

 これも前川さんや後藤さんの件が関係しているのかもしれない。


「今日の放課後だけどさ。一緒にカラオケでも行って遊ばない? 」


 桜井は爽やかな笑みを絶やさずに前川さんを遊びに誘う。

 なんていうかスマート。

 息を吸うように遊びに誘っていた。

 俺には到底できない芸当だ。

 羨ましい。

 ああいうコミュ力が欲しい。

 

「う~ん。いいけど。私と桜井の1対1? 」


 前川さんは自分と桜井を交互に指差す。

 参加者を確認するように。


「もちろん後藤も誘うよ。あと、それと――」


 桜井が前川さんの席を離れる。

 なぜか俺に意味深な視線を送る。

 そのままズンズンとゆっくりとした足取りで俺の席まで向かって来る。

 

 席から立ち上がって逃げ出したい。

 情けないが、そう思ってしまう。


「大江、君もどうかな? 今日の放課後、俺たちとカラオケでも行かない? あの前川や後藤もいるよ? 」


 桜井は柔和な笑みを浮かべながら俺を遊びに誘う。

 その表情は仮面が張り付いたように見えた。


「えっと。他のメンバーがいいなら」


 断る勇気などなく、顔色を窺いつつ、参加者の了承に委ねるような歯切れの悪い返しをする。

 本当は心の中で疑っている。

 何か邪な企てをしてるのではないかと。

 でも、それを言葉にして表現できない。

 桜井に伝えられない。

 そこまで強気に出れない。


「オッケー。前川と後藤にも聞いてくるよ。もちろん俺は誘ってるから問題ないからね」


 桜井は元の場所の前川さんの席まで戻る。


 数回ほど会話を交わした後、近くの後藤さんにも意見を募る。


「私はいいけど」


「あたしも〜」


 前川さんと後藤さんの返答が聞こえてくる。

 席が離れていても不思議と聞き取れた。

 それとも前川さんと後藤さんの声が通りやすいのかもしれない。


 桜井は返事を全て受けてから振り返る。

 俺と目を合わせる。


「前川も後藤もオッケーだって~」


 前川さんの席から離れた場所にいる俺に結構なボリュームで伝える。

 教室のクラスメイト全員の耳に届くレベルだった。

 陽キャだからこそでき、許されることだ。

 もし、陰キャの俺が、そんな配慮のない行いをすれば、クラスメイトに不機嫌な目を向けられるのは必至だろう。

 経験しなくても容易に想像できる。

 学校のクラス内での真理だから。


「それでどうする? もちろん行くよね? 」


 桜井は再び俺の前まで戻って来る。

 圧力を掛けるように俺の席の机に両手をつく。

 まるで逃げ場を失くすように。


「う、うん。行くよ」


 断ることなどできない。

 2つ返事で了承する。

 断ったら後が怖い気がする。

 それに前川さんや後藤さんにも印象悪いから。

 前川さんや後藤さんに不快感を与えたくない。

 それらを加味した上での判断。


「決まりだね。学校終わり、そのまま近くのカラオケ店に行くから。一緒に行こうね。もちろん、声は掛けるから」


 桜井はニコッと爽やかな笑みで締めると、用件を済ませて俺の席の近くを離れる。

 前川さんの席に戻る。

 

 合流して前川さんと後藤さんと親しげに会話を始めた。

 俺なんか完全に忘れたように。

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