第6話 他のメンバーのグループ退会
「あの、さっきはありがとう」
渡辺が教室を退出して落ち着いてから。
俺は会話を交わしていた前川さんと後藤さんに改めて感謝を伝える。
まだ前川さんと後藤さんに借りは返していない。
だけど、感謝はしないといけない。
こういった礼儀はしっかりとしないといけないから。
今後、しっかりと借りも返さないといけない。
その思いは強い。
「そんな。感謝なんて必要ないのに」
「本当にね。もとはといえば、あたしたちが原因だし」
前川さんと後藤さんは不思議そうな表情を浮かべる。
まるで感謝を受け取る理由が分からないかのように。
「でも、せっかくの大江君の感謝だからね。その言葉は受け取るよ」
「あたしも一緒ね~」
前川さんと後藤さんはニコッと俺に笑みを浮かべる。
その笑顔を目にしてドキッとする俺。
それほど魅力的だった。
そして、前川さんと後藤さん、凄い優しい人なんだと思った。
彼女たちに対する印象は昨日と比べて明らかに変わっていた。
もちろんプラスの方向に。
☆☆☆
(渡辺哲也視点)
「クソ! どいつこいつも! なんなんだよ!! 」
1階の人気のない空き教室。
逃げるようにして教室を退出した俺は、教室内の使われてないイスに当たる。
勢いよく蹴り上げる。
ガシャンッ。
イスが教室の床に転がり落ちる。
甲高い音が室内に響き渡る。
「あぁ~〜。うるせぇな~〜」
俺は騒がしい音を立てたイスに不満をぶつける。
ぶつける相手がイスしかなかったから。
ブブッ。
制服のポケットのスマートフォンが振動する。
「ちっ。なんだよ! こんな時に!! 」
俺は怒りに任せてポケットからスマートフォンを引き抜く。
『悪い、俺もグループ抜けるわ』
『俺も』
都子と七海が退会した例のグループ。
俺にとっては大切なグループ。
1番仲のいい奴ら。
残りの男子2人、あいつらからのメインでのメッセージ。
ブブッ。
通知音と共に退会したことがロック画面に表示される。
「お…。おい。これはどうなってんだ」
通知の1つを指で触ってアクセスする。
クラスで仲のいい例のグループは俺1人になっていた。
それ以外は全員、退会してしまっていた。
「なんなんだよ。…これはなんなんだよ。夢か? …それともドッキリか?」
俺は震えながらスマートフォンの画面を食い入るように見つめる。
手の震えが止まらない。
やがて震える手がスマートフォンを支えられずに落としてしまう。
床にスマートフォンが落ちる音が響く。
だが、俺はすぐに拾うことはできない。
ショックで何もできずに呆然と立ち尽くしていた。




