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彼女を奪われても何も言わなかった俺、イケメンがクラスで自慢した結果なぜか1軍女子に距離を置かれて孤立した  作者: 白金豪


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第5話 やつ当たり

「おい! お前!! どういうことだよ!!! 」


 次の2時間目終了直後の休み時間。


 渡辺が俺の胸ぐらを有無を言わさず強引に掴む。

 

 席に座っていた俺は渡辺の腕力に引っ張られて無理やり立ち上がる形になる。

 首が締まる感覚が俺を苦しめる。


「都子だけでなく七海までメインのグループを退会しやがった!! こんなの説明がつかねぇ。お前の仕業だろ!! そうだろ!! おい!!! 」


 渡辺は俺に怒鳴る。

 やつ当たりで俺の胸ぐらを一層に強く握る。

 まるで締め上げるように。


 さらに俺の息が苦しくなる。

 途切れ途切れになる。


「ちょっと! やめなさい!! 」


 自分の席に座っていた前川さんが飛び跳ねるように立ち上がる。

 駆け足で俺と渡辺の場所まで移動する。


「離しなさい! 大江君は何も関係ない! 私は関わりを消したかった。だから自分の意志でグループを退会した。ただそれだけ」


 前川さんは渡辺の腕を掴む。

 強引に俺から引き剥がす。


「ゴホッゴホッ」


 俺の首が渡辺の手から解放される。

 身体が不足する酸素を強く求める。


「あたしも自分の意志だから。この人は関係ないからね。そこは勘違いしないで欲しいな」


 もう1人の1軍女子の後藤さんも前川さんの隣に姿を見せる。


「都子、七海。…どうしてだよ。俺たち、あんなに仲がよかったじゃないか? 学校でも一緒にいたじゃないか? 放課後でも頻繁に遊んだじゃねぇか? なんでだよ? 」


 渡辺の目に絶望が滲む。

 目の前の現実が信じられないといった表情。


「それは渡辺の行いが人間として最低だったから」


 前川さんが遠慮のない指摘をする。


「都子に激しく同意。あと、ポリシーや価値観も全く合わないと思ったからかな。それと–––」


 後藤さんも前川さんに同調しつつ補足を加える。


「「名前呼びやめて」」


 前川さんと後藤さんの言葉が被る。


「っ!? 」


 渡辺は助けを求めるように周囲に視線を行き渡らせる。

 

 誰1人として渡辺を擁護しない。

 異論を唱える勇気のある者もいない。

 その場を凌ぐために視線を逸らすクラスメイトたち。

 

「クソ…。どうしてこうなった。クソ…。クソ〜〜」


 周囲から同調や助けを得られなかった渡辺は、教室の空気に耐えられずに、一目散に駆け足で退出する。

 逃げるように教室の出口を抜ける。


「大丈夫だった? 」


 そんな渡辺の姿など目にくれず、俺を心配してくれる前川さん。


「ごめんね。迷惑かけちゃって」


 後藤さんから謝罪の言葉を受ける。


「だ、大丈夫だから」


 舌足らずな返答しかできなかった。

 情けなかった。


 だけど、今回の件で前川さんと後藤さんに対する見方が変わった。


 前川さんの渡辺への態度。

 渡辺から俺を守ってくれた。


 以前よりは信頼できるようになった。


 その上、どんな形であれ、俺は前川さんと後藤さんにピンチを助けて貰った。

 これは紛れもない事実だ。


 この借りは必ずどんな形でも返さなければいけない。

 そう思った。

 これから前川さんや後藤さんのピンチの時には、自分を犠牲にして身を挺してでも助けなければ。

 借りを返すために。

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