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彼女を奪われても何も言わなかった俺、イケメンがクラスで自慢した結果なぜか1軍女子に距離を置かれて孤立した  作者: 白金豪


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第38話 前川さんとの日常は、いつまでも続くわけではなかった

「今日はいつもと違って教室が騒がしかったね」


 隣を歩く前川さんが上機嫌に話しかけてくる。


 いやいや、誰のせいだよ。


 学校が終わり、帰路に就く俺と前川さん。


 教室内で普段よりも明らかに注目を浴び、疲労が溜まっている俺。


 一方、前川さんは対照的に元気そうである。


「男と一緒にいて随分楽しそうだな」


 聞き覚えのない声が後方から届く。


 その声を聞いた直後、前川さんから笑顔が消える。


 焦ったように瞬時に声のした後方に振り返る。


 俺も前川さんに引っ張られるように後ろに視線を走らせる。


 そこにはスーツ姿の眼鏡を掛けた男性が、両腕を組んで立っていた。


「おとうさん。どうして…」


 前川さんは信じられない顔で男性を見ながら弱々しく呟く。


「今日は半日で仕事を切り上げてきたんだ。いつまでも男の家で遊んで夜遅くに帰らせ続けるわけには行かないからな」


 男性(前川さんのお父さん?)は、止まっていた足を動かす。こちらに向かって来る。


 ズンズンと歩き、前川さんとの距離を縮める。


 目の前まで来ると、男性は前川さんの手を取る。


「行くぞ、都子。車はあそこに停めてある」


 男性は後方を指す。先には黒の車が路肩に停まっていた。


「い、いやだ! どうして、お父さんに勝手に決められないといけないの! 離して!! 」


 前川さんは反論して抵抗する。


「言うことを聞きなさい」


 男性は淡々と告げ、力づくで前川さんを車まで引っ張ろうとする。


 男性と女性では力の差が如実に表れ、前川さんはズルズルと引かれる。


「ちょ、ちょっと! 嫌がってるじゃないですか!! 」


 前川さんのピンチに黙って見てるわけにはいかず、男性(前川さんのお父さん)を止めようと、腕を掴む。


「君が都子がお世話している同級生か?」


 男性は不機嫌な視線を俺に向ける。まるで敵対心を向けるような冷たい口調だった。


「そ、それがなんですか? 」


 俺は声を震わせながらも、なんとか聞き返す。


「悪いが、家族の問題に部外者が首を突っ込まないでくれるか? 立場をわきまえなさい」


 男性は冷たい口調で俺に言い放つ。


「っ」


 俺はなにも言い返せず、力なく男性から手を放す。


「お、大江君!? 」


 前川さんは俺に助けを求めるように手を伸ばす。


「ほら、さっさと行くぞ」


 前川さんはグイッと男性に手を引かれる。


 前川さんの伸ばした手はギリギリのところで俺に届かず、虚しく空を切る。


 悲しい顔を浮かべながら、前川さんは手を引かれ続けた。


 そんな光景を黙って見届けることしかなかった。



☆☆☆



 時刻は19時。


 いつものように前川さんは俺の家に来なかった。

 おそらく帰路の際の出来事が関係しているのだろう。


 今日は誰もご飯を作ってくれない。前川さんの美味しい料理も食べられない。


 失ってより気付く、ありがたみ。


 改めて感じる前川さんの存在。


「コンビニに買いに行くか」


 俺は自宅を後にして、久しぶりのコンビニに向かう。

 

 前川さんが料理を作ってくれるようになってから遠ざかっていたインスタント食品やコンビニ弁当。それらを今日は食べる羽目になりそうだ。


 記憶を辿りながらコンビニに到着する。


「どうしたの? こんな時間にコンビニなんて来て」


 コンビニの近くで制服姿のクラスメイトの女子と遭遇する。


「…後藤さん」

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