第36話 まずは小説のヒロインのマネをしてみます♡
(おもしろい! )
大江君のおすすめの小説を読み終えた率直な感想。
お父さんに小言を言われてイライラしながら小説を読み始めた私だけど、ページをめくる度にラブコメ? のストーリーに惹きこまれた。
時間はあっという間に経過し、今が深夜の1時。
いつもより数時間も夜更かしをしちゃった。
(それにしても)
私は勉強机に文庫本を優しく置いて、ベッドにダイブする。そのまま枕に顔を埋める。
大江君のおすすめの小説、ヒロインの南川さんは、超かわいかった。ストーリーを読むごとに主人公を自分に投影すればするほど、同性からしても南川さんは魅力的な女の子だった。
でも、それ以上に気になったのは主人公の薬師寺君。
なんていうか大江君に似てる。
クラスでは目立たないし、自分に自信を持ってない。優しくて義理堅い。
そんな主人公の薬師寺君に積極的に話し掛けたり触れたりする南川さん。
(もしかして大江君も南川さんみたいな女の子を求めてるのかな? だから、今回のような系統の小説を読むのかな? )
私の中で1つの疑問が浮かぶ。
そうだとすると、この小説が大江君のおすすめであることも辻褄が合う。だって自分が好きなストーリーだから。
南川さんは、クラス1の美少女で、愛嬌があって、主人公の薬師寺君を絶対に否定せずに肯定してスキンシップが多い。
私はクラス1の美少女か分からないけど、愛嬌は少しはあると思うし、今まで大江君のことを否定したことはない。すべて肯定してきた自負がある。私の持ってる属性は南川さんに近いところがあると思う。
それじゃあ、南川さんのようにすれば、大江君ともっと距離を縮められるかも?
あは♡ 明日から実践してみよ。効果あるか実験しないと。
私は予定が決まり、明日の朝を迎えるのに心を躍らせながら、遅めのお風呂に入るために、ベッドから起き上がり、自分の部屋を後にした。
☆☆☆
(大江 真春視点)
次の日の朝。
俺と前川さんは並んで学校に向かう。
俺の自宅を出て、10分ほどして学校が見えてきた。
学校の正門に向かう制服を着た男女の生徒たちがチラホラ見受けられる。
「ねえねえ、大江君」
隣を歩く前川さんがチョンチョンッと俺の右腕をつつく。
「どうしたの? 」
俺は横を向く。前川さんと目が合う。
「いきなりごめんね、えい! 」
前川さんは意味深な言葉の後に、俺の右腕にいきなり抱き付く。
「ちょ!? え!? ま、前川さん!? 」
俺は驚愕して発狂したような声を漏らす。
「えへっ♡ くっついちゃった♡♡ 」
前川さんは上目遣いでニコッと俺に笑い掛ける。
「最近、筋トレしてるんだよね? 前よりも太くて硬くなってる」
前川さんが俺の右腕の筋肉を確かめるように、ツンツンッと指で触れてくる。
「っ!? 」
俺は顔を真っ赤にして動けない。今の状況に対応できていない。
周囲の登校中の生徒たちも男女関係なく、密着する俺と前川さんを目にすると、驚いて足を止める。衝撃のあまり、中々目が離せない様子だ。
「さっ、一緒に行こ♡ 」
前川さんは頬を僅かに赤く染めながら、抱き付いた俺の右腕を優しく包み込む。柔らかい胸の感触が、嫌でも意識させられる。
「は、はい~」
俺と前川さんは、そのまま学校の正門をくぐる。登校する生徒たちに男女関係なく注目されながら、教室に向かう。
「大丈夫だよ。もっと自信を持って。大江君はそれだけの男の子なんだから」
俺の右腕に抱き付く前川さんは俺を励ます言葉を掛けてくれる。
「う、うん。そうできればいいんだけど」
俺は慣れない多くの視線と前川さんの胸や腕の感触に心を奪われる。
昇降口で上履きに履き替え、廊下を進み、階段を上がり、クラスの教室の前に到着する。
前川さんは躊躇うことなく、1歩を踏み出す。教室の前方の戸から入室する。
「みんな~、おはよう~〜」
前川さんはヒラヒラと右手を振りながら、普段しない元気な挨拶を教室にいるクラスメイト全員に向けてした。
「え……?」
「前川さん……だよな?」
「なんで大江君と……?」
「距離近すぎない? 」
クラスメイトたちの視線が俺と前川さんに集中し、ザワザワと騒ぎ始めた。




