第35話 家族の目は厳しい
(前川 都子視点)
「ここだよ」
大江君が自分の部屋に私を案内してくれる。
内装は勉強机、ベッド、本棚、クローゼット、床にはカーペットが敷かれている。
大江君が毎日過ごす部屋が私の視界に広がる。
うん。凄いテンション上がる。色々なところを嗅ぎたい。特にベッドやカーペット。大江君の身体や足が何度も直に触れているだろうか。今は我慢。今度、隙を狙って入ってチャレンジしてみよ。
「これなんだけど」
大江君は本棚から取り出した1冊の文庫本を私に差し出す。
表紙にはアニメチックな黒髪のロングヘアの可愛いキャラがメインを飾る。
タイトルは――
『1軍女子の南川さんの距離感が陰キャの僕に対してバクっている』
ふんふん。タイトルが長い。初見の感想がそれだった。
「これが大江君のおすすめの小説? 」
私は大江君から文庫本を受け取って首を傾ける。
「そうだよ」
大江君は肯定するように首を頷く。
「ふふっ。ありがと! 読んでみるね」
私は大江君のおすすめの小説をギュッと胸の前で抱き締めた。
大江君が好きな小説。楽しみだな~。今すぐにでも読みたい。
大江君が薦めてくれたんだから面白いに決まってる。
「そろそろ時間も遅いし送って行くよ」
「うん、今日もお願いするね」
私と大江君は数回ほど言葉を交わし、彼の部屋を後にした。
☆☆☆
「それじゃあ、今日も送ってくれて、ありがとね」
私は自宅の前でヒラヒラと大江君に手を振る。
「うん。じゃあ、また」
大江君も手を振り返してくれる。
あは♡ 手の振り方、かわいい。
大江君は踵を返して帰路に就く。
私は自宅のドアを開ける。
「ただいま~」
私は帰りの挨拶をし、玄関で靴を脱ぐ。きれいに揃えてリビングに移動する。
「帰ったか」
お父さんがリビングに座りながらジロリッと眼鏡越しに私に視線を走らせる。
私は洗面所に向かう。
「こんな遅くに帰って来るのは問題だな。例の同級生の男にご飯を作りに行ってる件か」
お父さんは皮肉がを混じえた小言を口にする。私の背中にグサッグサッと届く。最近、大江君の家から帰ったらすぐにこれ。本当にうざい。なにが気に入らないの?
「お前が、その男の料理をする必要があるのか? 過保護過ぎないのか? そいつは甘えすぎなんじゃないか? ちょっと冷静に考えてみろ」
お父さんは大江君を貶すような口ぶり。
ブチッ!!!
私の頭の中のなにかが切れた。
「うるさい! うるさい!! うるさい!!! お父さんには関係ないでしょ!!! それと私が好きでやってることなんだから勝手でしょ!! 大江君のこと悪く言わないでよ!!! 」
私は発狂するように怒りをぶつけ、お父さんとの境目を作るために、洗面所に足早に入る。
お父さんには分からない。
大江君は、そんな人じゃない。
「まじ、うざい! なに、あいつ!! 」
不満を隠さずに口にしながら、怒りに任せて乱雑にドアを閉めた。




