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彼女を奪われても何も言わなかった俺、イケメンがクラスで自慢した結果なぜか1軍女子に距離を置かれて孤立した  作者: 白金豪


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第34話 知らないものと新たに分かること

(前川都子視点)


「ごちそうさまでした」


「は〜い。お粗末様で~す」


 大江君が夕食を完食し、いつものやり取りをする。


 今日は牛丼とみそ汁にポテトサラダを作った。


 大江君は米粒1つすら残さずに食べてくれた。素直に嬉しい。


 大江君が使い終わった丼の中にみそ汁椀と小鉢を入れてシンクに移動する。


 私も大江君の後を追う。


「今日も私が洗うから水滴を拭き取るのお願いね」


「うん。任せてよ」


 大江君はキッチンから移動して洗面所の中に入って行く。いつも通りタオルを持って来るんだろう。

 

 大江君が戻るまでの間にパパッと手際よく丼から洗い始める。


 すぐに大江君が戻って来る。


「はい! これお願い」


 私は洗い終えた丼を大江君に差し出す。


「うん。ありがとう」


 大江君は私から丼を受け取り、タオルで水滴を拭き取ってくれる。


 私は次のみそ汁椀と小鉢を洗い始める。


 洗い物が少なかったため、すぐに終わりを迎えた。


 あとは大江君が拭き終えるのを待つのみ。

 いまチャンスだよね? 大江君のことを知るために色々と聞くチャンスだよね? 頑張れ! 都子! 女だろ。


「大江君はさ。休みの日になにしてるの? 」


 私はさりげなく大江君に尋ねる。わざとらしくなく、ぎこちなくはない、絶妙を攻める。大江君に違和感を抱かれないように努めたつもり。


「休みの日? う~ん。本とかかな」

 

 大江君はタオルで小鉢を拭き取りながら答えてくれる。


 へぇ~〜、大江君って本読むんだ。読んでる姿を見たことがなかったから意外な感じ。七海に指摘された通り、私は大江君について知らないことが多いのかも。


「どんな本を読むの? 大江君の好きな物なら私、興味あるな~」


 私は大江君の読む本について気になって尋ねる。欲を言うならジャンルまで特定したい。


「小説かな。ストーリーを読むのが好きなんだよね」


 大江君はタオルで最後のみそ汁椀を拭き終わる。


 なるほど。小説なんだね。でもジャンルが気になる。私が家で作った計画やチェックリストの項目を達成するために必要な情報。


「どんなジャンルの小説を読むの? 」


 私は自然を装ってさらに尋ねる。


「え、えっと」


 大江君の返答が歯切れの悪いものになる。求める回答も得られない。


「言えないならいいよ」


 私は無理に聞こうとしない。私の目的を達成するよりも、まず大江君に嫌われたくないから。しつこく聞こうとして大江君を以前に怒らせてしまったから。あの時は本当に辛かった。次、同じことが起きたら耐えられないかも。私は経験から学ぶ女。


「いや、なんていうか。恥ずかしいから。実はラブコメが好きなんだ。恋愛系のラノベを読むんだけど。変じゃない? 」


 大江君はチラチラと私の様子を窺う。まるで私の反応を観察しているみたいに。


「ううん。全然、変じゃないよ。人の好きな物に変なことなんて一切ないよ」


 大丈夫だよ。大江君。私は大江君を肯定するよ。それにラブコメ、恋愛系の小説を好んで読んでなにが変なの? そんなイメージなかったから意外性があって逆に惹かれるんだけど。


「本当に? 前川さん、俺に嘘ついてないよね? 」


 大江君が確認するように用心深く尋ねて来る。


「嘘ついてないよ。私、大江君の好きなラブコメの小説、読んでみたいぐらいだよ」


 私は大江君を安心させるために優しい口調で本心を伝える。


「…それじゃあ、俺の部屋におすすめの小説あるんだけど。…行ってみる? 」


 大江君は天井を指す。おそらく2階にある自分の部屋を示したジェスチャーだと思う。


「うん! 是非!! 」


 私は元気よく返事をし、大江君からの提案を強く望んだ。


 予想外の展開だけど、私にとって嬉しい方向に話が進んだ。

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