第31話 脅すあたしと何も出来ない渡辺
(後藤七海視点)
1時間目終了後の休み時間。
あたしはメインで指定した空き教室で待機する。
適当にスマートフォンでも見ながら時間を潰す。
ガラッ。
空き教室の戸が開く。
1人の見知った顔の男子が入って来る。
「やっと来た」
あたしはボソッと呟き、スマートフォンを制服のポケットに仕舞う。
「ど、どうしたんだ? 急に俺を呼び出して。今まで何度も連絡しても繋がらなかったのに」
渡辺が興奮した口調で早口に尋ねる。
「さっきまでブロックしてたからね~。ただ今から伝えたいことのためにわざわざ解除しただけ」
あたしは普段の調子で理由を説明する。
「そうか。もしかして! 俺と関係性を戻す気になったのか? 前と同じように仲良くしてくれるのか? 」
渡辺の声が大きくなる。興奮して鼻息も荒くなる。
は? なにこいつ。そんなわけないじゃん。もしかして関係性の修復の可能性を期待してここまで来たわけ? そんなわけないじゃん。別の理由で呼び出したに決まってんじゃん。こいつのアレルギーになりそう。
あたしは原因の分からない寒気を感じながらも、平静を保つために軽く息を吐く。
「渡辺って、いま大江君から奪った女の子と付き合ってるよね? いくらクラスで上手く行ってないからってさ、やつ当たりするのはやめなよ。みっともないからさ」
あたしは本題に入る。
「は? なんでその話なんだよ? 」
あたしの発言を聞いて、あからさまに不機嫌になる渡辺。
「あたし見ちゃったんだよね。渡辺が彼女に呼び出されてやつ当たりしてるの。あたしは部外者だけど悪いことをしている人を野放しにしたくないポリシーなの。だから、やめてあげてくれない? 」
「は? なんでそんなこと言われる筋があるんだよ。勝手に首を突っ込んでくるな」
渡辺はあたしの言うことを聞こうとしない。
「別に聞かなくてもいいよ。ただ渡辺が大江君から奪った彼女に学校生活が上手く行ってないからやつ当たりしてるって情報を流すけどね」
「ふざけんなよ! そんなことする必要ねぇだろ! 」
渡辺が怒鳴り声をあげる。
「あ~、うるさいうるさい。もしあたしが情報を流したらクラスメイトたちが信じるのは分かるよね? もちろん渡辺の言い分なんて聞き入れないことも」
「っ!? 汚ねぇぞ!! 」
「はいはい。なんて思っても構わないよ。嫌な目に遭いたくなかったら言うこと聞いてね」
あたしは用が済んだため、空き教室の出口に向かう。
出口の前で立ち止まる。
「もう必要ないから渡辺のメイン、またブロックしとくから」
伝え忘れた肝心なことを残し、何も言えずに悔しそうに下を向く渡辺を残して空き教室を後にするあたしだった。




