第27話 順調とは程遠い
俺はいつもの人気のない場所の自動販売機でお茶を購入する。
いつも通り吐き出された500mlのペットボトルを手に取る。
「おい、朝ぱっから呼び出して来んなよな。俺、最近は大変なんだからよ」
向こう、具体的には自動販売機に面した柔剣道場の裏側から聞き覚えのある男のイライラした声が俺の耳に届く。
(な、なんだなんだ)
俺は引っ張られる形で声のした方向に向かう。
「ご…ごめん」
1人の茶髪の女子生徒が渡辺に怯えた表情を浮かべる。
柏木真奈。現、渡辺の彼女であり、俺の元カノでもある。
俺を裏切って渡辺に乗り換えた女。
そんな女が渡辺に怯えているように俯く。
「ったく。次から気を付けろよな」
渡辺は辟易しながらポケットに両手を突っ込んで踵を返す。
「あ…」
元カノは呼び止めようとするが、途中で躊躇って止めてしまう。
「やべっ」
俺は渡辺に見つからないように近くの自動販売機に隠れる。
「ちっ」
渡辺が不機嫌そうに舌打ちをして俺の隠れる自動販売機の傍を通過する。
俺はバレないように渡辺との距離を測る。まだ自動販売機から姿を見せれば、足跡で気付かれる距離にはいる。
しばらく渡辺の背中を目で追い続ける。
ようやく渡辺が校舎の中に消えたところで、自動販売機から1歩を踏み出す。
「どうしたの? 自動販売機になんか隠れて」
「え!? ご、後藤さん!! 」
気が抜けていた時に声を掛けられて動揺を隠せない俺。
「やっほ~。大江君」
後藤さんがヒラヒラと手を振る。
「どうして後藤さんがここに? 」
俺は心の動揺が言葉に出る。
「大江君が自動販売機に隠れてたから気になって」
後藤さんが不思議そうに首を傾げる。
「それは…」
俺はチラッと柔剣道場の裏にいるであろう元カノに視線を向ける。
おそらく元カノは俯いて沈んでいる最中だろう。
「ふ~ん、まあ詳しく聞かないようにするよ」
後藤さんは意味深な表情を浮かべる。
そのまま深く追及せずに歩を進める。
「どうしたの? 教室に戻らないの? それとも用を残してる? 」
後藤さんが不思議そうに振り返る。
「…なにもないよ」
俺は前を進む後藤さんの背中を追った。




