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彼女を奪われても何も言わなかった俺、イケメンがクラスで自慢した結果なぜか1軍女子に距離を置かれて孤立した  作者: 白金豪


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第25話 楽観と心配

「もう夜の8時過ぎてるよ。前川さん、時間大丈夫? 」


 俺はスマートフォンで時間を確認して、向かいに座る前川さんに尋ねる。


「もうそんな時間なんだ。そろそろ帰らないと」


 前川さんは食卓のイスから立ち上がる。


「1人で帰るつもり? 」


 俺は玄関に向かおうとする前川さんに尋ねる。


「そうだけど? 」


 前川さんは不思議そうに首を傾げる。


「ダメだよ! 夜は危険なんだよ。それに、前川さんみたいな可愛い子は悪い奴に狙われる可能性もあるから。俺が自宅まで送り届けるよ! 」


 俺は食卓のイスから立ち上がる。

 玄関に向かおうとする前川さんを追い掛ける。


 一方、前川さんは立ち止まり、振り返る。

 俺と目が合う。


「ねぇ、さっき私のこと可愛いって言った? そう言ったよね! 」

 

 前川さんが駆け足で俺に寄ってくる。

 上目遣いで確かめてくる。


「それはそうだよ。前川さんのことを可愛くないと思う人の方が珍しいよ」


 近い。

 俺は前川さんの距離感に戸惑いながらも嘘偽りなく答える。


「大江君はどう思ってるの? 」

 

 前川さんが追加で尋ねる。


「えっと」

 

 俺は戸惑いを隠せない。逃げるように視線を逸らす。


「答えて」

 

 前川さんは真剣な表情で俺を見つめる。


「そ、それは可愛いと思うよ。でないと、送り届けようとなんて言わないよ」

 

 俺は前川さんから視線を逸らしたまま回答する。


 凄い恥ずかしかった。


「そ、そうなんだ。私…大江君から見て可愛いんだ」


 前川さんは俺から距離を取る。

 顔を赤くしてブツブツとなにか呟く。


「じゃ、じゃあ。お言葉に甘えて家まで送って貰おうかな」


 ここで俺が前川さんを自宅に送り届けることが決定した。



☆☆☆


 俺と前川さんは俺の自宅を出た。


 会話もなく、しばらく互いに無言で並んで歩く。

 少し居心地が悪いが、無理やり会話をする空気ではなかった。

 空気を読んで沈黙を貫く。


「大江くんは優しいね。私のこと心配してくれて家まで送り届けてくれて」


 前川さんは下を向きながらポツリッと呟く。


「そんなことないよ。当然のことをしてるだけだよ」


 俺は謙遜せず素直な気持ちを言語化する。


「そういうところがまたいいんだよな~。その優しさ普通じゃないからね? 自分が優しくて気を遣える凄い立派な男だって自信を持った方が良いと思う。今まで、私は大江君のような男子に会ったことないからね。本当に稀少で魅力的だよ」


 前川さんは俺に目を向ける。

 ニコッと微笑を浮かべながら、俺をこれでもかと称賛する。


「…あ、ありがとう」


 俺は褒め慣れてない。

 自然と前川さんから視線を逸らし、照れ隠しをしてしまう。


「えへへ。どういたしいまして~」


 前川さんは俺の反応を面白そうに観察する。

 可愛いと、呟いたりもする。


「この話に触れていいかは分からないけど。大江君は最近まで彼女がいたんだよね? 」


 前川さんが俺の顔色を窺いながら元カノについて触れる。


「元カノさんのことはどうか知らないけど。私はセンスないと思うな~。こんな優しくてかっこいい魅力的な大江君と別れるなんて。損してるよ」


「…」


 俺はどう返していいか分からず黙り込んでしまう。

 何日かぶりに元カノの顔を思い出した。

 俺を裏切って渡辺に乗り換えた女。

 あいつはなにをやってるのだろうか?

 思い出したくもなかったし、俺にはもう関係ないが、ふと気になってしまうのだった。



☆☆☆



(元カノ視点)


 うちは気晴らしに夜の道を歩いていた。

 

 最近、ストレスが凄い。


 どこから間違えたんだろう?

 

 いや、原因は分かってる。


 乗り換えた彼氏とも上手く行っていない。

 それがストレスの原因。


「はあぁぁ~〜」


 大きな溜め息を吐いた後、カップルらしき男女を発見した。

 

 その男女は並んで歩いていた。

 

 そのうちの1人は見覚えがあった。

 なんと元カレの大江真春だった。


 それだけでも驚きなのに、隣には黒髪ロングヘアの絶世の美少女が歩いていた。

 その女子は元カレを熱っぽい目で見つめていた。完全にメスの表情をしていた。

 

 なにあれ。

 

 どうして? うちはこんなに苦しんでるのに。なんであんたはもう他の女と一緒にいるの? そんなにモテるような男じゃないのに。


 うちは自分の置かれた境遇のこともあり、元カレが青春を謳歌しているように見えて、嫉妬と怒りを覚えた。



☆☆☆



「ここが私の家だから」


 前川は自分の戸建ての自宅を指差す。

 前も送り届けたため、覚えている。


「送り届けてくれてありがとね」


 前川さんはニコッと嬉しそうに感謝を伝えてくれる。


「うん。それじゃあ、俺は帰るよ。またね」


 俺は踵を返す。


「ちょっと待って」


 前川さんは俺のTシャツの袖を優しく掴む。


「どうしたの? 」


 俺は振り返る。

「明日も私の料理、楽しみにしててね。絶対に大江君の期待に応えてみせるから」


 前川さんは上目遣いで俺に意志を表明する。


「…うん。期待してるよ」


 俺は頷く。


「まず明日の朝にお披露目するから。また明日ね」


「うん。また明日」


 前川さんが名残惜しそうに俺のTシャツの袖から指を離す。

 別れるのを惜しむような顔で俺に手を振る。

 

 俺もそんな前川さんにヒラヒラと手を振りながら帰路に就いた。

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