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彼女を奪われても何も言わなかった俺、イケメンがクラスで自慢した結果なぜか1軍女子に距離を置かれて孤立した  作者: 白金豪


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第24話 俺の家のキッチンに、キッチンに、クラスの美少女が~〜!?

「どこにあるかな? 」


 前川さんが何かを探している。

 キッチン内をウロチョロしている。


「ごめん。大江君、エプロンってない? 」


 前川さんがキッチンから俺に尋ねる。


「ああ。エプロンなら」


 俺は2階に上がる。

 母親の部屋に向かう。

 

 1週間に1回の掃除の際に使わないがため母親の引き出しに仕舞った記憶があった。


 母親の部屋に入る。

 埃の溜まった使用感のない香りと雰囲気が漂う。


 適当に母親の部屋の引き出しを漁る。

 エプロンが見つかるまで片っ端に開けていく。


「あった」


 きれいに畳まれたピンクのエプロンがあった。

 おそらく母親のものだろう。


 流石に前川さんに渡すのだから整えないと。

 俺は母親のベッドを借りて、きれいに畳む。


 俺は抱えるように手に持って母親の部屋を後にする。

 階段を降りて1階に戻る。


「はい、これでいいかな? 」


 俺はキッチンにいる前川さんに差し出す。


「ありがとう~。でも、1つお願いがあるんだよね」


 前川さんは俺からエプロンを受け取らない。

 その不自然な行動に疑問を抱いてしまう。


「大江君につけてほしい」


 前川さんが両手を合わせておねだりしてくる。


「え…」


 俺の目が点になる。

 予想外の展開だった。

 いや、想定すらしてなかった。


「ダメ…かな?それとも嫌? 」


 前川さんが上目遣いで見つめてくる。

 瞳は僅かに潤んでいる。


「そ、そんなことないよ! 俺でいいなら全然」


 俺は顔の前で両手をバタバタと左右に振る。

 嫌ではないことを身振り手振りで伝える。


「やった~」


 前川さんが満面の笑みを浮かべる。

 さっきまでの少し悲しそうな表情は完全に見る影もなくなる。


 前川さんが俺からエプロンを受け取る。

 エプロンの紐を肩に通す。


「はい、あとはお願い」


 俺に背を向ける。


「こ、こんな感じかな? 」


 俺は緊張した面持ちと口調で前川さんとの距離を詰める。

 

 前川さんからフローラルな香りが俺の鼻を刺激する。めちゃくちゃいい香り。同じ人間の匂いとは思えない。

 女子ってこんなにいい匂いがするのかな? それとも前川さんだけが特別?


 そんな香りに包まれながらも、前川さんの背中に合わせてエプロンの紐を結ぶ。

 簡単に解けないように蝶々結びにする。

 キュッときれいな蝶々の形が完成する。


「これでいいかな? きついところない? 」


 俺は結び終えたところで前川さんの状態を尋ねる。


「うん! バッチシだよ! ありがとう~」


 前川さんは振り返る。俺と目を合わせてニコッと嬉しそうな笑顔を浮かべる。


「これからの調理も大江君にエプロン付けて貰ったから、より一層に頑張れそうだよ」


 前川さんは胸の前で両拳を握ると、ノリノリの足取りで調理の準備を始めた。



☆☆☆



「ふんふ~ん♪」


 前川さんは鼻歌交じりにキッチンで調理する。

 

 俺は、そんな前川さんをソファに座ってリビングから眺める。

 つい先程、なにか手伝えることはないと聞いたが、やんわりと断られた。

 そのため、ソファに座って待機している。


 クラスで1軍女子で美少女と名高い前川さんが俺の家のキッチンで調理をしている。

 しかも、エプロン姿で。


 これって、まるで奥さんみたいじゃ。

 

 いやいや、勘違いするな真春。前川さんは俺が自炊に困ってるから助けてくれてるだけ。ただそれだけ。ただそれだけ。

 

 俺は自分に言い聞かせるように何度も胸中で繰り返す。


「もう少しでできるから待っててね」


 キッチンから前川さんの声が届く。


「うん。分かった。それじゃあ、スプーンを準備しとくよ」


 俺はソファから立ち上がり、準備を進めようとする。


「あ、それは大丈夫。さっき準備したから」

 

 前川さんが調理しながら食卓を指差す。

 

 俺は確かめるために食卓まで移動する。

 

 確かに、食卓にはスプーンが準備されていた。

 1枚のティッシュの上に置かれており、配慮が行き届いていた。


「はい! できたよ」

 

 前川さんが大皿に盛ったオムライスを食卓まで運んでくる。

 そのまま食卓に置く。

 

 ふわっとろのオムライスだった。

 オムライスの真ん中にはケチャップでハートが描かれていた。

 

 卵の香ばしい香りが俺の食欲をそそる。

 無意識に口内からよだれが出る。流石に垂らしはしないが。


「はい! どうぞ!! 召し上がれ!! 」

 

 前川さんはスプーンを俺に差し出す。

 ニコッと微笑を浮かべながら。


「あ、ありがとう」


 俺は食卓のイスに腰を下ろす。


 前川さんの作ったオムライスから目が離せない。


「それじゃあ。…いただきます」



☆☆☆


 俺はオムライスをスプーンで掬う。

 ふわとろっとした卵が生き物のように動く。


「うわぁ~。美味しそう〜~」

 

 俺は思わず口から感想が漏れてしまう。


「本当に! よかったよかった。 食べて食べて」

 

 前川さんは俺に食べるように催促する。

 味の感想を求めているようだ。


「それじゃあ」


 俺はゴクッと生唾を飲み込む。

 食欲が抑えられない。

 

 見た目から美味しそうだと分かるレベルだ。

 

 俺はスプーンで掬ったオムライスをゆっくり口に運ぶ。


 ジュワッ。

 

 卵とチキンライスの混ざった爆発的な風味が俺の口内を支配する。

 チキンライスには鶏肉や玉ねぎも入ってそうで食感もよかった。

 卵との相性も最強だった。


「お。美味しい…。美味しいよ! 前川さんのオムライス!! 」

 

 俺は食卓のテーブルに両手を付いて、身を乗り出して前川さんに正直な感想を伝える。


「でしょでしょ~。そう言って貰えて私は嬉しいよ~」

 

 前川さんは頬を緩めてだらしない表情を浮かべる。

 

 こんな前川さん初めて見た。もしかして褒められるのに弱いのかもしれない。


「本当だよ! こんな美味しいオムライス初めて食べたよ」


 俺のオムライスを食べる手が止まらない。

 スプーンで何度も口へ運ぶ。


「大江君、いい~。もっと私を褒めて」

 

 一方、前川さんはうっとりした表情で、両手を頬に添えながら、顔を仄かに赤くして、俺にさらなる称賛を求めた。



☆☆☆



「ごちそうさまでした! 」


 俺は両手を合わせて食事の終わりの挨拶をする。


「は〜い。お粗末様でした~」


 前川さんは上機嫌で俺の挨拶に応える。


「本当に美味しかったよ。前川さん、ありがとう」

 

 俺はニコッとした笑みで前川さんに心から感謝を伝える。


「っ!? 」

 

 前川さんは恥ずかしそうに俺から視線を逸らす。


「そんなに美味しかった? 」

 

 前川さんは視線を逸らしたまま俺に尋ねる。


「うん。それはもちろん」


「満足した? 」


「うん。大満足」


「それなら、明日も作ろっか? 朝から3食すべて作ってもいいけど」


 前川さんが視線を俺に戻す。

 未だに頬は赤い。


 どうしたのだろうか? 不思議だ。


「え、それは悪いよ。今日限りで大丈夫だよ」


 俺は遠慮して断る。流石に明日まで食事を作って貰うわけにはいかなかった。前川さんにも迷惑だろうし。


「それでも、食事で栄養面や健康面で不安があるんでしょ? 」


「それはまあ。でも、これから改善するしかないね」


「具体的な計画は? 」

 

 前川さんは痛いところを突いてくる。


「…」


 俺は返す言葉がなく黙り込む。


「ダメじゃん」


「ごもっともです」


「やっぱり明日も私が作るよ。昼ご飯は弁当だから。もちろん手作りだから、楽しみにしててね」


「え!? 本当に!! 」


 俺は思わずイスから立ち上がってしまう。手作りの弁当など何年も食べていない。

 弁当という言葉に魅力を感じざるを得なかった。


「凄い食い付きようだね」


 前川さんはクスクスと口元に手を当てて上品に笑う。


「ご、ごめん」


 俺は恥ずかしくて顔を赤くしてイスに座る。

 はあぁ~〜。やらかした~〜。

 思わずやってしまった~。


「大江君の期待に応えないとね。私に任せて。絶対に満足させてみせるから」


 前川さんは意気込んで顔の近くで両拳をギュッと握った。

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