第22話 あ、不健康な生活からの脱却だ
俺と前川さんは近くのスーパーに入店する。
スーパーに入るなど何年ぶりか分からない。
前川さんは店の入り口付近に常設される買い物カートとカゴを準備する。
「何か食べたいものある?」
前川さんはカートを押しながら隣の俺に尋ねる。
「う~ん」
俺は両腕を組んで下を向く。
少し考える。
「オムライスとか」
ぱっと頭に浮かんだ料理を口にする。
「オッケー。オムライスなら作ったことあるから。それじゃあ、食材調達しますか! 」
前川さんは野菜コーナーに進み、たまねぎやにんじんの状態を確認して、良好なものをカゴに入れる。
「前川さん、ごめんね。俺が困ってるせいで料理する羽目になっちゃって」
俺は申し訳なさそうな表情を浮かべる。
素直に謝る。
俺が困ってると言わなければ前川さんが気を遣って料理を作るなんて言い出さなかったと思うから。
「どうして謝るの? 必要ないよ。それに、大江君の家は、ご両親が海外に住んでるから実質1人暮らしなんでしょ? 他にも洗濯や掃除なんかの家事もあるのに、自炊なんて手が回らず困って当然だよ」
前川さんが俺の置かれている境遇を理解した上で、困るのは仕方ないと肯定してくれる。
「それに、そんな境遇でもご飯を食べない選択肢を取らずに、コンビニ弁当やインスタント食品を食べてきたんでしょ? 家事をしながら続けてきたんでしょ? 凄いことだよ! 中々できることじゃないよ。クラスメイトでもできる男子なんて1人もいないと思うよ? だから大江君は今までの頑張りを誇ってもいいと思う」
前川さんは俺の1年間の自宅での生活を頑張りとして評価してくれる。
「…あ、ありがとう」
俺は照れ隠しで視線を逸らしつつ、頬を緩ませながら感謝を伝える。
「気にしないで。私もやりたくてやるから」
前川さんは俺を安心させるように満面の笑みを浮かべる。
その表情が可愛くて仕方がなかった。
同じ生物とは思えなかった。
天から舞い降りた超次元的な存在に見えた。
「次は鶏肉が欲しいから精肉コーナーへ行こうか」
前川さんは店内の奥を指差す。
その後、スーパーで買い物を続けた。
会計を済ませて袋詰めを終えて店内を後にした。
ちなみに会計は流石に俺が全額を支払った。
前川さんが払おうとしたが必死に阻止した。
ここが中々、骨が折れた。
前川さんが中々、譲らなかったから。
流石に俺のために作って貰うのに、お金まで払わせる訳には行かなかった。
こうして多少の疲労感を溜めつつ、俺と前川さんは店を出て自宅に向かった。




