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彼女を奪われても何も言わなかった俺、イケメンがクラスで自慢した結果なぜか1軍女子に距離を置かれて孤立した  作者: 白金豪


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第2話 渡辺の味方じゃない

 俺は、いつの間にか屋上に辿り着いていた。


 この先は進む場所も無く、屋上のベンチに腰を下ろす。


「はぁぁ~〜」


 俺は俯いて大きな溜め息を吐く。


 教室に戻りたくなかった。

 また、渡辺にバカにされる未来しか想像できなかった。


 だけど、これから1時間目の授業がある。

 そのために戻らないといけない。

 それが嫌で仕方がない。

 

 仮病を使って保健室で休もうかな。

 俺は邪な考えをしてしまう。

 それほど学校、特に教室に身を置きたくない。

 具体的には渡辺と同じ空間にいたくなかった。

 渡辺を避けることばかり考えてしまう。

 嫌でも頭から離れない。

 意識してしまう。


「あ! いたいた。探したよ」


 どこかで聞き覚えのある声が前方から届く。

 

 俺は声のした前方へ顔を上げる。


 前方にはクラスメイトの前川さんがいた。


 黒髪ロングヘアに紫の大きな瞳、男なら1度はチラ見してしまう制服のブレザーからでも分かる豊満な胸。

 きれいさと可愛さがバランスよく合わさった顔立ち。

 顔もスタイルも整った文句なしのクラス内でもトップレベルの美少女だ。


 前川さんは渡辺と仲が良く、教室では一緒にいることが多い。

 クラスでも中心的で影響力のあるグループに所属する。

 そんな前川さんがどうして俺を探してたんだ?


 1つの疑問が浮かぶが、前川さんに聞く勇気はない。


「クラスには渡辺の味方しかいないと思ってる? 」


 前川さんが再び口を開く。


「…そうとしか思えないよ。だから耐えられなくて教室を出て逃げてきたわけだし」


 俺は逃げるように前川さんから視線を逸らす。

 素直な気持ちが胸に苦しさを覚えながらも口から漏れる。


「全員が味方なんてありえないから。少なくとも私は渡辺の味方じゃない」


「…え」


 俺は思わず顔を上げる。


 前川さんの真っ直ぐな瞳が俺を捉える。

 その目は嘘をついているように見えなかった。

 それほど真剣なものだった。


「でも前川さんは渡辺と仲が良いんじゃ。だから味方じゃない理由がない…」


 口からスラスラと言葉が出て来る。

 正直、渡辺と一緒にいることが多く、同じグループに所属する前川さんの発言が信じられなかった。疑ってしまうほどだった。


「ああ…。さっきまではそうだったかもね。でも、事情が変わったから。他人の彼女を奪って自慢するクズと一緒にいるなんてごめんだし」


 前川さんの口調が冷酷なものに変わる。

 さっきまでと明らかに雰囲気が違う。


「私、許せないんだよね。恋人や夫婦とかの大事な人間関係を壊しても平気な奴。本当に、最低でクズとしか思えない。ちっ」


 前川さんは不機嫌そうに舌打ちする。

 明確に口調に怒りが籠っている。


 どうやら渡辺の今朝の行いが前川さんの逆鱗に触れたみたいだ。

 怒っている理由までは分からないけど。

 相当な地雷なのは間違いない。


「もし今度、また渡辺に彼女を奪ったことでバカにされたり見下されたりしたら私に言って。絶対に味方になるから」


 前川さんは真っ直ぐな瞳を俺に向ける。

 何か強い意志が宿った目だった。


「でも…」


 俺は未だに前川さんを完全に信じることはできなかった。

 申し訳ないけど、渡辺と前川さんが仲のいいイメージは抜けない。

 これすらも渡辺の策略の一部ではないかと疑ってしまう。


「まあ、いきなりでは信じられないよね」


 前川さんは、なぜか両目を瞑る。

 しばらく無言を維持する。


「これからの教室での私の渡辺への態度を観察してて。それで分かると思うから。いい? 体調不良で帰ったりしないでよ」


 前川さんは1歩ほど前に出る。

 真剣な眼差しを俺に向けて来る。


「わ、分かった」


 俺は前川さんの目力と迫力に圧倒される。

 歯切れの悪い返答をしてしまう。


「絶対に嘘はつかないし、裏切らないから」


 前川さんは踵を返す。

 俺の返事を待たずに屋上の出口に向かう。


 俺は屋上を後にする前川さんの背中を立ち上がって目で追うことしかできなかった。

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