第16話 嘘の情報
「あ、来た来た」
俺と前川さんが教室に一緒に登校した。
クラスメイトの視線が集まる。
「なにかあったのかな? 」
「さぁ? 」
俺と前川さんの頭に?が浮かぶ。
「ねぇ、前川さん、桜井君に告白してフラれたのって本当? しかも、しつこく迫ったって聞いたけど」
「そうそう。そう聞いたけど」
2人のクラスメイトの女子が前川さんに駆け寄る。
興味津々で尋ねる。
「え? 私、告白してないけど。されたんだけど。しつこくも迫られたし」
前川さんの顔に動揺が走る。
明らかに嘘の情報が流れている。
「本当に? 桜井君が登校して言ってたよ」
「言いふらしてたけど。どっちが本当なんだろうね」
クラスメイトの女子2人は困ったように腕を組む。
まるで悩むように。
「あいつ」
前川さんはキッと視線を走らせる。
その先には仲のいい男子と話す桜井。
そんな桜井が前川さんの視線に気付く。
ニヤ~。
心底、性格の悪そうな意地悪な笑みを浮かべる。
この笑みだけで犯人が誰だか特定できる。
「この! 」
前川さんが桜井のもとに向かおうとする。
その1歩を踏み出す。
「…」
その前に俺が前川さんより先に出る。
黙っていられなかった。
「大江君? 」
前川さんが俺が前に出たことに気付く。
「…」
そのまま無言で桜井の前まで移動する。
「桜井、自分に都合のいい嘘を流さないでくれるかな? 」
俺は敢えて疑問形で注意する。
表情は真顔でプレッシャーを掛けるように。
「あ? お前、なんだよ? 陰キャのくせに。もしかして正義のヒーロー気取りか? 」
桜井は見下した態度を見せる。
「そんなの関係ない。告白をしたのは、お前だろ? そしてフラれたのも。告白をオッケーするまでしつこく迫ったのもな」
俺は淡々と事実を述べる。
俺は現場を見ていた。
だからこそ断言できる。
「え? それって本当なの? 」
「でも、あの前川さんが自分から告白するなんて考えにくくない? 」
「それはそうだけど」
「桜井君が、そう言ってるし」
クラスメイトたちの声が騒がしくなる。
話題は桜井が流した嘘の情報で一色に染まる。
それにしても。
こいつらも桜井の言葉だけで真実だと判断するなよ。
前川さんの話を聞いて、両方の言い分を踏まえた上で、どちらが本当のことを言ってるか考えろよな。
なんで片方の意見だけを信じて流されてるんだよ。
明らかに前川さんに不利じゃないか。
ムカつくわ。
「はっ。じゃあ、証拠を見せろよ。お前の発言だけじゃ信用できないだろ? そんな当たり前のことも分からねえのか? はっ。まあ、バカで陰キャだから仕方ねえよな」
桜井はバカにした口調でこめかみに人差し指を当てる。
トントンッと小刻みにリズムすら刻む。
完全に俺を見下している。
「ちょっと、これ見てよ。ウィッターで興味深い動画が投稿されてるよ」




