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彼女を奪われても何も言わなかった俺、イケメンがクラスで自慢した結果なぜか1軍女子に距離を置かれて孤立した  作者: 白金豪


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第12話 送り届ける

 あの後、1人で帰れそうになかった前川さんを送り届けることにした。

 前川さんの様子から俺が判断した。

 俺は緊張しながらも前川さんに送り届けることを提案した。

 前川さんも弱々しく頷いていた。


 前川さんの隣を歩きながら夜道を進む。

 俺と前川さんの間で会話がない。

 それがなにかと居心地が悪かったりする。

 しかし、前川さんの心境を推測したら仕方のないことだとも思う。

 俺が前川さんの立場だと恐怖でしゃべる気すら起きない。


「私の家、ここだから」


 しばらく住宅地を進んだところで立ち止まる前川さん。


 目の前の1つの戸建てを指差す。

 電気が付いた2階の1軒家だった。

 どうやら目的地に到着したみたいだ。


「そうなんだ。よかった。ここまで来たら大丈夫だね。それじゃあ」


 俺は踵を返す。

 そのまま家に帰ろうとする。


「待って」


 前川さんに呼び止められる。

 制服のブレザーの裾を指で優しく掴まれる。


「ど、どうしたの? 」


 俺はゆっくりと振り返る。

 突然の前川さんの行動に動揺が生じる。


「今日は本当にありがとう。感謝してもし切れないぐらい」


 前川さんは真っ直ぐ俺の目を見つめて感謝を伝える。


「いやいや。前に前川さんに助けて貰ったから。その借りを返しただけだから。気にしないで」


 俺は事実を述べる。

 謙遜なんて皆無。

 借りたものを返しただけ。

 プラマイゼロ。


「あんなの。私に関係あることだったから。それだけ。借りでもなんでもないから」


 前川さんは首を左右に振る。


「それで、1つわがまま言ってもいい? 」


 前川さんは緊張した面持ちで上目遣いに俺の顔を窺う。

 なぜか顔も赤い。


「お、俺が叶えられることなら。なんでも」


 俺はドキドキしつつも、一旦了承する。

 さて、どんなわがままなのだろうか?

 少し気になる。


「ありがとう。今日、無理やり桜井に告白のオッケーを迫られて、今後もしつこく私に嫌がらせのように付き合おうとしてくるかもしれないじゃん? だから、桜井対策として明日から私と一緒に登下校してくれないかな? 私を守って」


 前川さんは豊満な胸の前で右拳をギュッと握りながら俺に要望を伝える。


「もちろん。ただとは言わないよ。大江君のしたいこと何でもやってあげる。た、例えば、それが…え、エッチなことでも…。…全然」


「ぶふっ!? 」


 前川さんが顔を真っ赤にしてとんでもないことを言い出した。

 流石に、その要望は出せない。

 エッチなこと。

 したくないと言えば嘘になるけど。

 思春期の男子ですから。

 そこら辺は。うん。凄い盛ん。


「そ、それは遠慮しとくかな。それと、も、もし。俺でよければ登下校のお供はするよ。護衛として役立つかは分からないけど」


 俺はやんわりとエッチな提案だけを断る。

 自信はないが前川さんの要望を承諾する。


「本当に! やった!! それじゃあ、お願いしてもいい? あと、お礼は必ずするからね。必ず! そこは忘れないでね」


 前川さんは安心したような顔を浮かべる。

 そして、俺に念押しするように顔を接近させる。

 もう少しで触れそうなほどだった。


「まあ、そうなればいいね。それじゃあ俺、帰るね」

 

 俺は逃げるように前川さんから距離を取る。

 再び踵を返して帰路に就こうとする。


「あ、あと! 」


 俺が歩を進め始めたところで、前川さんに再び声を掛けられる。


 俺は首だけ振り返る。


「告白を無理やり迫られてる女の子を助ける立派な勇気があるんだからさ、もう少し自分に自信を持った方がいいよ。筋トレでもしてみたら」


 前川さんはニコッと満面の笑みを浮かべる。


「それを伝えたかっただけ。ごめんね。呼び止めちゃって。また、あした~」


 前川さんは俺に向けて大きく右手を振る。

 

「うん。またあした」


 俺も軽く手を振り返す。

 前方に視線を移す。

 そのまま前川さんの視線を背中で感じながら自宅に向かった。

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