第7話 冒険者の生き方
森で助けてくれたのは三人のパーティだ。
驚いたのは、ロッドの顔立ちは良くないのだが、連れている二人のメンバーが全員美女だったことだ。
村を歩いているだけで、男女の区別なく視線を向けられていた。
このことに興味を持った俺は、子供の図々しさを活かして接触を試みる。
夜中、家から父親の酒をくすねて、冒険者たちが泊まっている民家を訪ねる。
「こんばんは。 今日は魔物を倒してくれて、ありがとうございます。 よかったら、これ飲んでください」
なるべく明るい笑顔を子供特有の猫なで声で挨拶をする。
ロッドが俺を一瞥した後
「おぉ、坊主。 お使いか? 偉いな。そういうことなら有難くもらうかな」
装備も外していて就寝前ということもあるのだろう、感触は悪くなかった。
「はい! みなさん今日もお疲れ様でした」
用意していた三人分のコップを配っていき、お酌していく。
三人ともメンバーも子供からの労いを微笑みながら聞いてくれた。
全員が酒に口をつけて美味いと感想を言っている時に、俺はロッドの傍で冒険者に興味津々といった雰囲気をわざとらしく出していた。
立ち去らない俺に対してロッドは
「なんだ? 何か聞きたいことでもあるのか?」
笑いながら、絶好球を投げてくれた。これに素早く便乗する。
「はい! みなさんがすごく格好良くて、それに女の人もみなさん、とても綺麗で……」
照れながら、これでもかというくらい初々しい態度を振りまく。
顔を見合わせた女性たちから、ドッという笑いが起き
「かわいーー! うれしいな~」といった声が挙がった。
この人たちが綺麗なのは本当のことだ。それに、装備の上からでは充分に分からなかった身体のラインと女性らしさの象徴が近い距離にあることで、俺は釘付けになってしまいそうだった。
そんな仲間が盛り上がっている様子を見ているロッドも満足そうだ。
核心に触れたくて、話を続けてみることにした。
「どうして冒険者をやっているんですか? 魔物と戦うのは怖くないですか?」
それを聞いたロッドは、少し間を置いてから静かに口を開いた。
「そうだな。この国で自分が望んだ暮らしをするためだな。 本来であれば、見た目や生まれの良さが必要だ。それがないと絶望的だが、冒険者として名を上げれば、そこらの貴族よりも自分らしく楽しくやっていけると俺は思っている。それに、こうやって、いい女たちに囲まれるからな」
わはは、と豪快に男は笑った。
それを見ているパーティの女たちは、照れながらも嬉しそうだ。
「も~、子供になに言ってるのよ」
と言いながらも、腕を組み直しては解いてを繰り返していた。
もう少し踏み込んでみることにした。
「かっこいいです。 やっぱり……すごい冒険者になるには『加護』が必要ですか?」
この質問に対して、若干の沈黙があった。女性たちは、苦笑いしながら
「まぁ、それは……」
といった反応だった。想像していた回答とは違いがあった。
男がニヤニヤしながら、ゆっくりと口を開く。
「ちょっと、小便してくる。 坊主も付き合え」
俺は一緒に家を出ていき、少し離れたところで
「坊主は、その年で女から男に加護を与えることができるって知っているんだな?」
顔は笑っているが、目からは凄みが放たれていた。
その眼力に気圧された。
「はい……。 あの女の人たちは、ロッドさんに加護を与えたのか気になって……」
「なるほどな。 その様子だと、どうやって加護を与えるのか、やり方までは知らないようだな」
言われてみれば、やり方なんて想像もついていなかった俺は、こくりと頷く。
ロッドは顔を近づけて
「いいか。 あまり人に言うなよ。 加護をもらうのは、まぐわう時だ。 ただ、まぐわえばいい訳じゃない。 相手が本心から付与を望むことが必要になる」
俺は目を見開く。村の人間の会話や書物では知りえなかった情報だ。
ロッドは続ける。
「坊主の聞き方だとな、全員俺と寝たのかって質問に聞こえなくもないぞ」
大男は笑いながら、忠告してくれた。その途端、恥ずかしさがこみ上げる。
俺……がっつり、セクハラしていたのか……。
そんな反応を尻目にロッドは教えてくれる。
「あの二人はな、冒険をしていく中で何度も助けたんだ。 それから、そういう関係になって今に至る。 さっきの話に戻るが、腕の立つ冒険者になれたから俺の見た目でも、一緒にいられる訳だ。もちろん、片目を失うくらいの危険はあるが、それでも俺は、たった一度の加護を付与してくれた、あいつらを守り続けていく」
それを聞いた時、ロッドに対する印象が変わった。
よく物語に出てくる豪快な人物という印象から、一家の大黒柱のようにさえ見えた。元の世界の俺より、若いであろう目の前の男は、確固たる決意が滲み出ていた。
もろもろを理解した俺はロッドに礼を言って、パーティの泊る家に戻ることなく、帰路に就く。
今日は思いがけず、貴重な情報を得られた日となった。




