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第11話 すれちがい

 先日の一件があってから、村では居心地の悪い時間を過ごした。

 二~三人くらいが、露骨に俺のことを指さしながら、剣呑な雰囲気で会話をしている。


 村長とすれ違った時には、呼び止められて


 「いい加減にしてくれ。 村に何かあったらどうする」と苦言を呈された。



 シノと堂々と会うことは、これまで以上に憚られた。


 俺だけに被害があるのなら良いのだが、シノの母親や自分の両親に影響を出したくなかった。



 ある日の夜、魔物の素材や必要な資材を保管している物置小屋に、シノを呼び出した。


 情報屋から依頼を受けるようになってから建てた。二人の秘密基地みたいな場所になっていた。


 手狭で埃っぽい空間で、シノに対して、しばらく会うのは止めようと伝えた。




 深い蒼色の瞳が揺れたのを、覚えている。



 「しばらくって……どれくらい?」



 その問いに、俺はすぐに答えられなかった。

 本当のことを言えば、自分でも分からなかったからだ。




 レーヴに目をつけられた今、一緒にいることでシノを危険に晒す。

 だから距離を置くべきだとは、頭ではわかっている。




 「少なくとも、洗礼が終わるまでは」




 ようやく絞り出した言葉に、シノは俯いた。




 風が吹く。月明かりが、淡い青緑色の髪に溶けるように降り注いでいた。


 伸びた髪が彼女の表情を隠す。



 「それだけ?」


 「え?」


 「洗礼が終わったら、会えるようになるの?」



 問い詰めるような声ではなかった。

 胸の前で手を握り、不安そうにしていた。



 俺は視線を逸らした。


 会えるようになる保証なんてどこにもない。


 「……わからない」


 その時、シノの肩が小さく震えた。


 「そっか。 そう……だよね」



 それだけ言って、笑おうとしていた。

 いつもの太陽のような笑顔はそこになかった。



 こんな顔をさせたかった訳じゃないのに。


 「シノ――」


 「今日は遅いから、もう帰ろ?」


 背中は小さく、どこか遠く感じる。




 この時、何かを言えれば良かったのだろうか。


 見た目、権力、金、全てを持っていない、手ぶらの俺がかけられる言葉はなかった。

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